「僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい」ムロツヨシが明かした若い共演者たちへの想い、「自分を貫き通す」ことの価値と導く者の覚悟
「僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい」ムロツヨシが明かした若い共演者たちへの想い、「自分を貫き通す」ことの価値と導く者の覚悟

ムロツヨシが主演を務める『ドラフトキング』の続編となる連続ドラマW-30『ドラフトキング -BORDER LINE-』が、WOWOWにて5月15日からスタートする。本作は、現在も『グランドジャンプ』で連載されている同名漫画の実写化。

ムロ自身も原作の大ファンであり、「映像化するならば、そのときは参加できる役者でありたい」と考えていたという。そんな思い入れのある作品の続編にどのように挑んだのか、話を聞いた。(前後編の前編)

個人としてしっかりと伝えられる人でありたい

連続ドラマW-30『ドラフトキング -BORDER LINE-』でムロが演じるのは、毒舌ながらも並外れた“眼”を持つプロ野球球団「横浜ベイゴールズ」のスカウト・郷原眼力(ごうはら・オーラ)。2023年に放送・配信された前作では、郷原が全国に埋もれた様々な選手の人生に寄り添い、苦悩を分かち合う姿が大きな話題となった。

――原作のファンとお伺いしました。改めて『ドラフトキング』のどのようなところに魅力を感じますか。

ムロツヨシ(以下、同) 野球漫画やスポーツ漫画には数々の名作があると思います。その中でも、『ドラフトキング』は、ドラフトに視点を置いて選手、スカウトマン、元選手などの人生が描かれています。その視点は、海外を含めてもなかったのかなと。

野球でプロを志した全員がプロになれるわけではないですよね。影に見えるところにも光を当てるなど、野球の素晴らしさ、難しさ、残酷さも描いているところは、この『ドラフトキング』の魅力だと思います。

――今作でも、様々な野球人生を送る選手と、ムロさん演じる郷原との交流が描かれますね。

一度あきらめてしまったけれど再びプロを目指す人生、プロ生活にピリオドを打つ人生――前作とはまた違った選手の人生を描いています。

(視聴者の)年代によって感情や見方が変わると思いますし、お子さんがいる親御さんや夢を探している若い世代の皆さんに見ていただければ、何かのヒントになるような部分がたくさんあるドラマだと思います。

――演じる郷原の魅力は?

やはり自分の人生を野球に捧げているところですかね。もちろん自分が勤めている球団のためではあるのですが、野球界全体、そして1番には選手のことを考えている。

郷原は手段を選ばないところや口の悪さもある(笑)。それでも選手の夢や目的、目標を叶えるために、「君はこれが足りないんだよ」などとしっかり伝えられる。僕自身ができているということではなく、個人としてもそうありたいなと思います。

僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい

野球のなかでも“スカウト”をテーマにする本作では、プロの道を目指す若い世代の苦悩が描かれる。木戸大聖や佐藤寛太など、若い世代の共演者が多いことから、ムロはある思いをもって撮影に挑んだという。

――再び郷原を演じるにあたって、準備やチャレンジをしたことはありますか。

役者には余計な演技をしちゃうタイプがいるんですよ、僕みたいな人です(笑)。余計なことをすると郷原から離れてしまうので、まず「思いつきの芝居はいらないぞ」と自分に言い聞かせる1週間がありました。それ以外では、前作を通した郷原でありたいので、改めて前作を見返して準備しました。

チャレンジということでは…そうですね、今回は郷原が選手に向けて発する言葉が前作より多いんです。

労いの言葉だったり、鼓舞する言葉だったりがたくさん出てきます。その際に郷原としての説得力が出るよう準備をしました。セリフの言い回しというよりは、“思い”ですね。

実は、この作品は若い役者さんが多いですから、役者として、そして上の世代としての思いもお伝えさせていただくことが、自分のなかでの裏テーマだったんです。偉そうには聞こえるかもしれませんが、「こういう前例もあるんだぞ」というお芝居の仕方をお伝えしようと心掛けていました。

――役者としての思いを伝えたかったということですか。

そうですね。価値観や考え方、捉え方が多様化している時代ですので、若い世代の皆さんを否定するのではなく、僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい。

今は何も言わない方がいいという考え方もありますが、それでも僕は言葉を選びながらでも伝えていくことが大事だと思っています。「じゃあこうならなければいいんだ」「こういう考え方はしない方がいいな」っていう思いが生まれてくれればいい。

若い役者だけじゃなくてスタッフさんにも伝えています。様々な“ハラスメント”という存在をしっかり理解しながら、それでも自分の良かったと思えた経験などは伝えていきたいなと思っております。

老害にならないように(笑)。

――本作では選手に向けて素敵な言葉をたくさん送られていますが、ムロさんご自身に刺さったセリフはありますか。

一度プロの道をあきらめた選手に対して「這い上がって来い、そうしたら俺が光を当ててやる。階段をまた作ってやる」というセリフですね。ああいうことを言える男でありたい。やっぱり下の世代を引っ張ったり、場所を提供できるような男になりたい。大きいことを言いすぎちゃいけないですけど、それは目指していこうかなって今回改めて思いました。

あとは、プロの生活を終えてしまうかもしれないトライアウトの選手に対して、「よくやった。だから自分を貫き通せ」という言葉も刺さりました。自分もそう思うことはありますが、思うだけじゃなくて伝えていけたらいいなと。

失敗や挫折があるからこそ、成功が待っている

野球を題材にした作品ながら、プレイシーンのみならず、選手・スカウト・コーチなど野球に携わる人々の苦悩や喜びをリアルに描いた前作は、野球ファンだけでなく、普段野球に触れることのない視聴者をも魅了した。

――『ドラフトキング』シリーズは、夢や目標に向かって進むすべての人に響く作品だと感じます。

そんな人へメッセージをいただけますか。

どんなときにも失敗や挫折があります。それは確実。それらが存在するからこそ、成功があり、夢が叶う。そして残念ながら片方だけの振り子はないんですね。小さな成功には小さな挫折、大きい成功には大きい挫折が待っている。

僕の好きな言葉に、ユースケ・サンタマリアさんの「麻痺させる」っていうものがあるんです。これは嫌な感覚を麻痺させて、取り組むという考え方。

人は、それぞれのミッションを抱えて生きていくしかない。いろんな方法を試しても、ときには失敗と挫折が待っています。でも、それは大成功に向けての挫折かもしれない。そんな風に自分の意識を変化させることもできる。

だからこそ夢を持ってほしいですし、目標を持っていただきたいです。そして、このドラマはその振り子を描いている作品ですので、ぜひ観ていただきたいです。

「這い上がって来い、そうしたら俺が光を当ててやる」。劇中で郷原が放つこの言葉には、下の世代を引っ張り、場所を提供できる男でありたいというムロ自身の信念が重なっている。

野球ドラマの枠を超え、世代を超えて受け継がれるべき「思い」が詰まった本作。どの世代の視聴者にとっても、明日を生きるための大切なヒントが見つかるに違いない。

取材・文/羽田健治

撮影/廣瀬靖士

ヘアメイク・池田真希

スタイリスト・森川 雅代

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