ヨーロッパ・スーパーリーグ構想に最初から参加せず、各方面からの評価を高めたパリ・サンジェルマン。特にナセル・アル・ケライフィ会長は、欧州クラブ協会の要職に就くなど、存在感を強めている。
大旋風を巻き起こしたかと思ったら、48時間後には頓挫と、あっという間に去っていった今回のヨーロッパ・スーパーリーグ騒動だが、この一件で最大の「勝ち組」と言われているのが、パリ・サンジェルマンのナセル・アル・ケライフィ会長だ。
スーパーリーグ構想の発表と同時期に行われていたUEFAの定例会議で、彼は執行委員に再選された(任期は2024年まで)。それに続いて、欧州の主要クラブで構成される欧州クラブ協会(ECA)のチェアマンにも選出された。
チェアマンはユベントス会長のアンドレア・アニェッリ氏が務めていたが、スーパーリーグ構想発表の後、推進役だった彼はこのポストを辞任。空いた席に真っ先に推薦されたのがアル・ケライフィ氏だったが、彼は「メンバーの1人として、そしてPSG会長としての立場で、全力で協力していきたい」と一度は断っている。しかし4月21日の役員会で、担ぎ出される形で選出された。
同じく副会長には、バイエルンで法務を担当しているミヒャエル・ガーリンガー氏が選出され、今回のスーパーリーグ構想に参加しなかった欧州のビッグ2がトップに立つ、という象徴的な結果となったわけだ。
スーパーリーグ構想についてアル・ケライフィ会長は「PSGは『フットボールは万人のためのものである』と強く信じている。私自身、この信念を当初から一貫して主張してきた。フットボールクラブは家族であり、コミュニティだ。そして、ファンこそがその基盤である。
スーパーリーグ参加は難しい立場
実はPSGも、当初はスーパーリーグの話し合いに加わっていた。
レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長とアル・ケライフィ会長は、両者ともに「親しい友人」と認める間柄で、欧州サッカー界のエリートの一角となることを目標にしているカタール勢にとって、スーパーリーグ構想に名を連ねた12クラブは、まさに「加わりたいグループ」に違いなかった。
報道によれば、スーパーリーグへの参加を拒否することになった一番の要因は、『BeINスポーツ』の存在。カタールの放送局である彼らは、UEFAチャンピオンズリーグの放映権を持っている。そして、アル・ケライフィ氏は『BeINスポーツ』の社長だ。
それに、カタールは2022年にW杯開催を控えている。FIFAやUEFAに対抗する側に、このタイミングで加わることは現実的ではない。
しかし、仮にこうした諸事情がなかったとしても、アル・ケライフィ氏は、何が自分たちにとって一番賢い選択なのかを考えて、このようなセンセーショナルな計画にはいの一番には乗っかっていなかったように思う。たとえ後々加わるとしても、じっくり成り行きを観察した上でベストなタイミングを見極めていたはずだ。
フランスのために貢献し続ける
アル・ケライフィという人は、「カタールマネーでフランスの首都クラブを手に入れる」という反感の避けられない大事業のトップに37歳で指名されただけのことはある、かなりのやり手だ。
とりわけ傑出しているのは「最善な策を見極める判断力と嗅覚」そして「外交能力」の2つ。
莫大な資金力でスター選手をかき集める、というどこから見ても金満経営でありながら、それがPSGだけでなく、“フランスの”サッカーファンみんなの利益になることである、という空気を巧みに作り出すことで、人々の心象に訴えている。
この“フランスの”というところが非常に大事で、アル・ケライフィ会長は、いかに自分たちがフランスに貢献したいと思って取り組んでいるかをアピールすることを常に忘れない。
実際、PSGが活躍することでUEFA指数に貢献したり、素晴らしい育成施設を完備して優秀な若手を輩出したり、世界的にフランスサッカーの注目度を高めたり、という男子サッカーの面だけでなく、CL王者リヨンをも破った女子サッカー、ハンドボール、柔道、eスポーツといった他競技の強化、はたまた、ものすごい額の税金が国家に落とされるという実質的なプラス面など、感情的な好き嫌いは別としても、彼らのフランスへの貢献度は小さくない。
会長は目力が強く、顔は笑っていても目は笑っていないタイプだが、カリスマ性があって、選手やスタッフからも尊敬されている。テクニカルディレクターと監督の不和といった噂は上がっても、会長との不仲説などは一切耳にしたことがない。
重要な試合の後など、肝心な場面では表に出てきてくれるので、記者たちからの受けもいい。
気が利き、人当たりも良い好人物
個人的にも何度かお世話になっている。
デイビッド・ベッカムが在籍していた2013年、彼のエージェントは「個別インタビューは一切NG」と宣言していたが、会長が「僕との対談という形なら承諾してくれるだろう」とご親切にも提案してくれて、首尾よくOKとなった。
そして実際のインタビューでは、最初の5分ほど同席したら「オジサンはお邪魔だろうから失礼するよ。あとは君たちでごゆっくりどうぞ」と退出する気の利かせぶり。
ベッカムが在籍していた時には、自身との対談という体で単独インタビューを実現させてくれたという
フランス語もあっという間にマスターし、ジョークを交えた巧みな話術で他クラブの会長たちの心もすぐにつかんでしまった彼は、リーグ1の組織でも要職に就いている。
今回のスーパーリーグの件について、リヨンの辣腕オーナー、ジャン・ミシェル・オラス会長などは「ナセルと力を合わせて、スポーツ面での実力主義と感動を忘れることのないフットボールの未来を築いていく」と、わざわざ名指しでツイートしていた。
フランスプロリーグ協会のバンサン・ラブリューヌ会長も「フランスサッカーの名において、あなたの言動に感謝する」と大絶賛し、UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長も「心の底から ナセルにお礼を言いたい。あなたはフットボールの真価を尊重していることを示してくれた、実に偉大な人物だ」と賛辞を贈るなど、この数日間、アル・ケライフィ礼賛にあふれている。
今回の一件で、アル・ケライフィ氏はUEFAやサッカー界からさらに厚い信頼を得て、PSGのイメージ向上と存在力の強化にも成功した。
そして、参入10年目にして、欧州のプロクラブを取りまとめる組織のトップに立った。
サッカー界を揺るがす一件で、逆に追い風に乗った彼が、これからの欧州サッカーを牽引する重要人物の1人であることは、まず間違いない。
Photos: Getty Images

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