原題は「Materialists」で、意味は「物質主義者」。本作を見終えて物質主義者に思いをはせたとき、バブル期の流行語「3高」を思い出した。
当時、女性は結婚相手に「高身長、高学歴、高収入」を求め、勢いはいまだに減退していない。当たり前の話だが、米国の女性も3高を求め、その情熱は日本人よりも激越で空想的のようだ。
ニューヨークの結婚相談所でマッチメーカーとして働くルーシー(ダコタ・ジョンソン)は数多くのカップルを結婚させ、上司から絶賛される。彼女は恋愛を感情だけでなく、資産価値でも判断するマテリアリスト。ただ、自分はこのまま独身を貫こうと考えていた。
そんなルーシーの前に、身長180㌢のハンサムで超リッチな投資家ハリー(ペドロ・パスカル)が現れる。ハリーはルーシーを気に入り、情熱的にアタック。その一方でルーシーは元カレのジョン(クリス・エヴァンス)と再会する。ジョンは売れない役者で、ルーシーに見捨てられた身の上だ。ルーシーはハリーを結婚相談所に入会させようと目論むが、彼のリッチぶりに惹かれていくのだった……。
片や1500万ドルの高級マンションに住む大金持ち、片やシェアハウス暮らしの貧乏男。出会いと再会を同時に迎えたとき、物質主義者のルーシーがどのような心の動きを見せるかが本作の見どころだ。
監督が陥った「不一致」への行き詰まりが主人公のルーシーに乗り移る
ルーシー役のダコタ・ジョンソンの演技が光っている。結婚相談所の女性会員たちの「夢見る夢子さん」的発言の奇矯さ、3高男ハリーの恐るべき完璧さも秀逸。セリフの一つひとつが完成されている。結婚はキツネとタヌキの化かし合いなのだと妙に納得してしまった。
メガホンを取ったのは韓国生まれのセリーヌ・ソン。実際にマッチメーカーとして働いた経験を生かして本作を撮ったと明かし、こう語っている。
「私はまるで株式トレーダーのように振る舞っていました。誰と死ぬまで連れ添うかは関係なくて、みんなどんなパートナーが欲しいか、まるで買いたい車や家の話をするように話していました。私はその不一致に行き詰まりました」
ソン監督が陥った「不一致」への行き詰まりが主人公のルーシーに乗り移り、ドラマを劇的に面白く展開させたわけだ。
物語の結末への評価は見る人の価値観によって違いが現れるだろう。ルーシーはなぜこの決断に至ったのか。スクリーンを見ながら独自の解釈をするのも楽しい。
もうひとつ。本作で語られる男性の身長の悩みはまことに興味深い。「笑える」なんて言ったら叱られるだろうが、筆者は長身の真相に笑ってしまった。もはや都市伝説だ。(TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中/配給=ハピネットファントム・スタジオ)
(文=森田健司)

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