これは、1985年から2010年までの時代をゲームショップのオーナーとして過ごす作品。
今回はこの『ゲームショップ斜陽』のデモ版をプレイしつつ、「インターネットがなかった時代のゲームショップ」について解説していきます。
◆インターネット登場以前のゲーム批評
多くの日本人にとって、「初めてのインターネット」はWindows95到来の瞬間ではないでしょうか。
Windows95は、それまで「マニアか専門家でしか使えない代物」と言われてきたPCを「ごく普通の人でも活用できる必需品」にしました。そして、テキストや画像を世界中の人に送信でき、しかもそれは必ずしも紙に出力する必要がないという点でも大きな革新性を含んでいました。
それは同時に、「常識の転換点」でもあります。
現代のゲームソフトには、それをダウンロード販売するプラットフォームで「ユーザーレビュー」というものを受け付けています。ユーザーレビューにはごく一部の人が誹謗中傷を書いている可能性もありますが、それでも「平均的な評価」を購入予定者が閲覧できる貴重な情報です。もちろん、レビューを書いている人は専門的なライターというわけではない「ごく普通の人たち」。
ですが、インターネットというものがない時代は一定以上の母数を保ったユーザーレビューは存在せず、ゲームソフトの評価はゲーム専門誌のライターによる批評を参考にするしかありませんでした。さらに言えば、そのゲーム専門誌すらなかった時代はソフトを仕入れたショップの経営者の眼力が全てでした。
◆これは「名作」か、それとも「駄作」か?
1985年9月発売の任天堂『スーパーマリオブラザーズ』は、コンピューターゲーム史はおろか近代史にその名が刻まれる大名作として知られています。
しかし、我々が「『スーパーマリオブラザーズ』は大衆の価値観を変えたほどの大名作だ」と考えているのは、実際にソフトが売れたから。1985年の7月か8月頃、任天堂から「9月、『スーパーマリオブラザーズ』という新作が発売されるからぜひあなたのショップでも仕入れてください」と頼まれたら、皆様はどうしますか?
仮に任天堂が先行プレイイベントを開催し、全国のゲームショップのオーナーやゲーム専門誌のライターが『スーパーマリオブラザーズ』をプレイしたとします。しかし、人間というものは多様にできていて、中には「こんなゲームが売れるはずはない」と考える人もいるでしょう。現代でも、発売前のデモ版の評価が賛否両論だったということはよくあります。
『ゲームショップ斜陽』は、そうした実際の販売現場で起こっていたことをゲームにした作品です。
◆下馬評が正しいとは限らない!
ここでもう一つ、例を挙げたいと思います。1986年12月発売の『たけしの挑戦状』は、今現在は「クソゲーの元祖」と言われています。しかし、発売当時はどうだったでしょうか。80年代前半のビートたけしさんは、ニッポン放送『オールナイトニッポン』のパーソナリティを務め、それまでのラジオ番組の常識を覆しました。それまでのラジオ番組は、リスナーからの手紙やハガキを紹介することを主軸にしていましたが、たけしさんは「これは俺の番組!」と公言し、容赦なく自分自身の価値観を電波に乗せました。
そこには手前味噌の倫理で区切った規則は一切なく、一般人が口にもできない単語やトークを堂々と披露する光景がありました。
そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの有名人が監修し、さらにタイトルに自身の名を冠した作品に大きな期待がかからないはずはありません。「たけしのやることだから絶対に面白い!」と誰しもが考えるはずです。
そんな下馬評は、しかしながら「あまりに意味不明」「攻略本を読んでも攻略法が全く分からない」という評価になってしまいました。
即ち、そうした「下馬評と発売後のレビューの落差」を少しでも埋めるため、ゲームショップ経営者の眼力が必要だったということです。
◆周辺機器を取り扱う店としても
かつてのゲームショップには、このような「ゲームの良し悪しを見極める」という役割が与えられていました。それと同時に、ゲームショップにはソフトだけでなく周辺機器を販売するという使命もありました。
ファミコンやスーパーファミコンを動かすのに必須のケーブルやACアダプターは、常に断線の危機と隣り合わせ。その時は突然訪れます。このあたりは街の電器店も同じで、プレイに必要な周辺機器はゲームショップに行けばすぐ購入することができました。ゲームに凝った人であれば、ホリの連射パッドをゲームショップで買ったりもしていました。
また、地域によっては「ゲームショップ+玩具店+駄菓子屋÷3」という具合の機能の個人店舗もありました。
それは、個人経営の店舗が元気だった時代の景色でもあります。一つ一つは小さいお店でも、その集合体としての影響力は非常に大きく、コンピューターゲームの歴史にはっきりと爪痕を刻んだのでした。


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