1991年から1992年にかけて全13話のOVAシリーズを展開した「機動戦士ガンダム0083」。「機動武闘伝Gガンダム」が誕生する以前のまだ宇宙世紀シリーズしかなかった時代において、職人レベルの手描きメカ作画と、「戦争」の悲惨さをシリアスに描いた作品として、当時のガンダムファンが望んだものすべてが詰まったところが人気でした。
また登場するガンダムも、「ガンダムvsガンダム」を本格的に楽しませてくれた“悪役ガンダム”こと「RX-78 GP02A ガンダム試作2号機(サイサリス)」が登場し、ガンダム同士の激しいバトルを展開。
主役機の「RX-78 GP01 ガンダム試作1号機(ゼフィランサス)」も宇宙仕様のフルバーニアンにパワーアップしたり、超ド級の巨大兵器と一体化した拠点防衛型「RX-78 GP03 ガンダム試作3号機(デンドロビウム)」が話題になったりするなど、その点でも満足度の高い作品でした。
プラモデルでデンドロビウムがリリースされた際は、家電のダンボール箱かと思うほど巨大なパッケージに驚かされましたね。全13話と短いシリーズながら、中身がギュギュッと詰まっていて、初心者にもオススメしやすいのがポイントでもあります。
※アムロとシャアは登場しません。
ゲームの世界においても試作ガンダム3機は欠かせませんし、試作2号機のアトミックバズーカを愛用している『ガンダムブレイカー4』プレイヤーも少なくないはず。
しかしあらゆる点で大好評ながら、ただ1点、今なおネタにされ続けているキャラクターがいます。メインヒロインのニナ・パープルトンです。そう、“メインヒロイン”なのです!
主人公のパイロットであるコウ・ウラキと、敵対する勢力のエースパイロットであるアナベル・ガトーとの間で揺れた彼女は、その驚くべき行動によって多くのファンを困惑させました。しかも彼女の評価は1回の行動で決まったわけではなく、何回もの積み重ねによって印象付けられたもの。
それではいったい、どの段階で踏みとどまればよかったのか?
そこで本稿では劇中に登場する「阻止限界点」というワードを拝借し、ニナの好感度の暴落を防ぐための阻止限界点を探っていきたいと思います。
あなたはどこまでならニナの行動に納得しましたか?
◆阻止限界点は9段階!
「機動戦士ガンダム0083」は、「機動戦士ガンダム」とその続編「機動戦士Zガンダム」の中間に位置する物語です。
「機動戦士ガンダム」で勃発した戦争に勝利した連邦軍は、月にあるアナハイム・エレクトロニクス社との共同開発で「次なるガンダム」の開発に着手。その重力圏内でのテストを実施するため、オーストラリアのトリントン基地に立ち寄りました。
テストをするのは試作1号機と試作2号機の2機。アナハイムからはシステムエンジニアのニナ・パープルトンが同行し、何事もなく性能テストが実施される予定でした。
そこへ突如として介入し、試作2号機を奪ったのがニナの元恋人アナベル・ガトーです。彼はジオン軍の敗残兵として身を潜めながら、ジオン残党で結成したテロ集団「デラーズ・フリート」の一員として前線に立っていたのです。
主人公のコウ・ウラキは新人のテストパイロットでまだまだ“ヒヨッ子”でしたが、ガトーを追うため試作1号機に搭乗。それをきっかけにガンダムのパイロットに任命され、実戦の中でパイロットとして成長しつつ、ニナとも心の距離を縮めていったのでした。
ニナにとってガトーはすでに忘れた存在ながら、実際に目の前に現れると未練がフツフツと湧き上がってきたようす。
もともとニナは手塩にかけて開発した試作1号機と試作2号機を溺愛しており、2号機が奪われた際には「わたしのガンダムが!」と叫ぶほどおかし……いや個性を発揮しました。その後もコウに冷たく当たりつつ、コウのことを意識するようになると、「意外とかわいいとこがあるな」と思わせてくれたものです。個性強めではありましたが、そこがまた魅力だったのが初期のニナでした。
しかし第10話ではガトーを心配しつつ、その想いを振り切るようにしてコウにキスしました。今考えると、あのキスは本心だったのか? そもそもガトーへの想いから逃げるためのものではなかったのか? 疑ってしまいます。
それでも昔の恋人が忘れられないのはしかたのないこと。阻止限界点としてはまだまだ序の口。昔の恋人の影がチラついただけでは、さすがに9段階のうちのレベル1でしょう。問題は第13話でした。この話数でシリーズの最終回を迎えるのですが、ニナもクライマックスへ向けてとんでもない行動に出ることになります。
まずレベル2。彼女はガトーの居場所を知ると、小型戦闘機のコアファイターに乗って無断出撃をします。この段階も問題ありません。これからとんでもないことをしようとするガトーを止めに向っただけですから責められません。ただ、この時に踏みとどまっていれば、転げ落ちるように好感度を下げることもなかったか?とも思われ、大きな分岐点のようにも感じられます。
そして物語はコロニーに舞台を移し、ニナ、ガトー、コウがついに一堂に会します。コロニーを操作して作戦の仕上げをしようとするガトーに対し、その行為を止めようとするニナ。そこへコウが現れ、有無を言わさずガトーの脇腹に発砲しました。この段階がレベル3。思わずガトーへ駆け寄るニナに対し、コウは状況が分からず混乱します。この状況も、ニナは仲裁を考えているだけなので責められません。たぶん……。
レベル4では、そんなニナの行動が信じられず、コウが「俺への気持ちは嘘だったのか!?」と問いただします。それに無言どころか明らかに「答えられない」と意思表示するニナ。もうこの辺から雲行きが怪しいです。人類の危機が迫っているにも関わらず、色恋で揉め始めるのも状況としてはややこしいと言えるでしょう。
レベル5では、再びガトーを撃とうとするコウにニナが銃口を向けました。明らかに彼女はガトー側です。もうコウとの関係修復は無理かも……。そう思っている間にもニナはガトーをかばうあまり、コウに向けた銃の引き金を引いてしまいました。これがレベル6です。もう「いやいや、おかしいでしょ!」とツッコミが止まりません。たとえ威嚇であっても引き金を引いてしまっては後戻りなどできないでしょう。とんだ泥沼です。
さらにレベル7では、必死にニナを引きとめようとするコウの想いを振り払い、ガトーを連れて去ってしまいます。この時点で多くのファンは「もう関係修復は無理だ」と確信したはず。しかしそうさせないのがニナでした。
すべての決着がついた後、物語のエピローグでニナは、なんとコウの前に再び現れたではありませんか! あんなに酷いフリ方をしておいて予想外すぎる展開です。これがレベル8。これも……ギリギリ……わかります……。きっとこの後、コウに「ごめんね」を言ってお互い抱きしめあったりするのでしょう。そしてその辛い胸の内を告白し、優しいコウは慰めの言葉をかけるはず……。
しかし実際はそうなりませんでした。これが最後のレベル9。コウがニナの姿を見つけ、信じられないといった表情を浮かべたのに対し、ニナは一瞬の躊躇の後に極上の笑顔を見せました。
「いやいやいや、そうはならんやろ……。なぜそんな笑顔が作れる?」
誰もが思ったはず。昔愛したガトーが忘れられないのもしかたがないし、その人を選んだのもしかたがない。そして行き場を失ってコウの元に戻って来るのもギリギリ理解できます。しかし最後の笑顔だけはツッコミを入れざるを得ませんでした。
というのも、きっとニナの中では色々なもののカタがつき、心の整理ができてコウの元へ戻ってきたものと推測できます。しかしそれは彼女の心の中だけの話であり、傷つけられたコウに対しては何の償いもおこなわれていません。コウを振り回しておきながら、すべて自己解決しただけです。
もちろんこの先、コウに謝って幸せになる未来があるかもしれません。ただし現段階において困惑するファンが多いのも事実。それではどうしたら良かったのか?
個人的にはコウとニナが幸せに暮らしている新作映像が見たいところ。ニナに振られた瞬間の無念そうなコウの表情が忘れられませんし、ニナもずっとコウとガトーの間で揺らいでおり、ひたすら辛そうな表情をしていました。
コウは栄養剤を投与しまくって消耗戦に耐え、どうにかデラーズ・フリートの計画を阻止しようとふんばりました。作戦行動中は多くの仲間を失いましたし悲劇も味わいました。しかしその結果、彼は軍法会議にかけられて失意のドン底に叩き落されます。その先でニナという何物にも代えがたい存在と再び会えたのは喜ぶべきことではありますが、ニナがどう変わったのか分からない限りは、はたして彼女と一緒にいることがコウにとって幸せなのだろうか?と疑念が頭をもたげて来ます。
1分でも結構ですし、なんなら1枚のイラストでもあれば救われるのではないか? やはり見たいのは、幸せになった2人の姿です。「機動戦士ガンダム0083」を見返すたび、そう思えてなりません。
あなたのニナに対する阻止限界点はどこですか?


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