政府は「2027年までにキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げる」と、目標を掲げています。PayPayやLINE Pay、楽天ペイ、Origami Payなどが乱立。
そんなキャッシュレス決済の現状を、冷めた目で見ている人がいます。ITジャーナリストの久原健司さんは、「『コード決済サービス利用者の約4割は、還元キャンペーン期間中しか使わない』とジャストシステムの調査でも出ているとおり、生活習慣として定着するにはさらに思い切った施策が必要でしょう」と言います。
お給料の受け取りも電子マネーになる?買い物に利用されるQRコードを活用した「スマホ決済」が広がっています。「○○Pay」といわれるキャッシュレス決済が、それ。お財布いらず、現金いらずの、カードやスマートフォンによる決済の仕組みです。 こうした電子決済が使えるようになれば、近い将来には給料日に銀行のATMにできる長い行列に並ばなくて済むかもしれません。そうです! 「○○Pay」が給料の受け取り方を変えるかもしれないのです。
「そもそも、給与の支払い方法については労働基準法で規制されており、原則は現金の直接払いです。ただし、労働者の同意があれば、銀行口座への振り込みが認められています。
一方で、厚生労働省では給与も電子マネーなどで支払えるよう、規制見直しの動きが出始めているそうです。つまり、『○○Pay』の登場によって、銀行がこれまで口座引き落としの方法で独占的に取り扱っていた状況に、メスが入りつつあるわけです」(久原氏)
その一方で、鉄道やバスなどに利用できるSuicaやPASMOなどの交通系のICカードは、すでに広く普及していますが、国土交通省では、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の活用を進めています。
近年急増している訪日外国人観光客とも、深く関係しているようです。日本はキャッシュレス決済の後進国といわれています。そのため、現金しか使えないことに不満を持つ外国人観光客は4割存在。キャッシュレスのインフラを改善しないと、2020 年に訪日インバウンド旅行者が4000万人となった場合、109億米ドル(約1.2兆円)の機会損失が発生すると試算されています(クレジットカード大手、VISA調べ)。このように、東京五輪・パラリンピックに向けて、早急な対応が必要であるため、省庁をまたがって国全体でキャッシュレス化に対応しているのが現状といえそうです。
経済産業省は、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少における国の生産性向上の施策の中で、キャッシュレス化のメリットとして、
1. 実店舗などの無人化、省力化
2. 不透明な現金資産の見える化、流動性の向上
3. 不透明な現金流通の抑止による税収の向上
の、3点をあげています。
つまり、現金を扱う場面を減らすことで、人手不足が解消され、記録の残らない現金のやり取りや貯蓄が見えるようになることで、経済の活性化にもつながると想定しているのです。
キャッシュレス社会に向けて、たとえば総務省では、「マイキープラットフォーム構想」を立ち上げ、マイナンバーカードに紐づく自治体ポイント口座を設定して、その口座に企業が付与するポイントやマイルを合算する仕組みを構築しています。
これにより、国が購入データから国民の購買傾向を把握し、医療や介護費用の増大に対しても、データが活用されることが予想されますが、「現状ではキャッシュレスの波がマイナンバーカードまで押し寄せた場合は、『マイキープラットフォーム構想』も現実的なものになっていくのではないでしょうか」と、久原さんは指摘します。
なるほど、キャッシュレスは便利そうではありますが、一方で国民の購買動向までも把握されることに抵抗感はありませんか。プライバシーを覗かれているような気がしたり、もし情報が漏れたりしたらと思うと心配です。(あわいこゆき)