共働きで子育て中のFさん(41歳)は、子どもが3歳になり、それまでの短時間勤務が使えなくなることに不安を感じていました。フルタイムに戻れば、保育園の送り迎えや家事が回らなくなるのではないか。
背景にあるのは、2025年10月に施行された改正育児・介護休業法です。3歳から小学校に上がる前までの子を育てる人に対して、会社は「柔軟な働き方」のための制度を用意することが義務になりました(厚生労働省「柔軟な働き方を実現するための措置」 )。
この改正が目指すのは、子育てをしながら働き続けられる環境づくりです。これまで、子どもが小さいうちは、どちらかの親が仕事をセーブする例が多く、それが本人のキャリアにも、社会全体の働き手の数にも影響してきました。男女を問わず、無理なく両立できる仕組みをつくることが、いま強く求められています。
具体的には、会社は次の5つのうち、2つ以上を用意することになります。フレックスタイムや時差出勤などの始業時刻の変更、月10日以上利用できるテレワーク、保育施設の設置・運営やベビーシッターの手配・費用負担などの便宜供与、年10日以上取得できる養育のための休暇(養育両立支援休暇)、そして1日原則6時間の短時間勤務です。働く人は、用意された中から自分に合うものを選べます。
たとえば、これまで短時間勤務で乗り切ってきた人が、テレワークと時差出勤を組み合わせて、フルタイムに近い形で働き続けるといった選択もできるようになります。家庭の事情や子どもの成長に合わせて、働き方を無理なく調整していける。そこに、この制度の意味があります。
これまで、3歳を境に短時間勤務が使えなくなり、働き方の選択肢が一気にせまくなる家庭は少なくありませんでした。新しいルールは、その「3歳の壁」をやわらげるものです。子どもが小学校に上がるまでの数年間、働き方に幅を持たせられる意味は大きいといえます。
もう一つ大切なのが、会社からの個別の声かけ(意向確認)です。子どもが3歳になる前の適切な時期に、どんな制度があるか、どう使いたいかを、会社が一人ひとりに確認することも義務づけられました。「制度はあるけれど知らなかった」という事態を防ぐための仕組みです。
この仕組みは、母親だけのものではありません。父親も同じように使えます。夫婦のどちらが、どの制度を使うのか。家庭全体で分担を考えるきっかけにもなります。実際、男性の育児参加を後押しする改正も、近年あいついで行われてきました。
ひとつ、留意しておきたい点があります。
子育てと仕事の両立は、家庭だけで抱え込むと、どうしても無理が出ます。会社から案内が届いたら、内容にしっかり目を通す。案内がなければ、人事や上司にたずねてみる。迷ったら、まず制度の名前を会社に確認するだけでもかまいません。配偶者とも、どの選択肢が家庭に合うかを話し合っておくとよいでしょう。
制度は、知って使ってこそ意味があります。働き方の選択肢が増えたいま、それをどう生かすかは、一人ひとりにゆだねられています。
(新井 一/起業コンサルタント)
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