ロボット掃除機「ルンバ」を生み出した、コリン・アングル氏が、白くてふわふわした四足歩行のAIロボット「ファミリア」を発表した。
この不思議な温かみのあるクリーチャーは、床のゴミを拾うわけではない。
言葉は話さないが、かわいらしい仕草や鳴き声が雄弁にその感情を示す。
帰宅すると出迎え、作業中はそばについてくる。常に人間に寄り添う、新しいタイプのペットなのだ。
ファミリアはこれまでのペットロボットと何が違う?
ロボットペットの歴史は意外と長い。
ソニー(Sony)が1999年に発売した犬型ロボット「アイボ(Aibo)」は、家庭向けロボットペットの先駆けとして大きな話題を呼んだ。
近年はChatGPTを搭載した会話型ロボットや、人の顔を覚えて懐くタイプなど、AI技術を活かした製品が次々と登場し、市場は活気を帯びている。
しかし四足歩行で自律的に歩き回り、抱きしめられるほどの大きさを持ち、全身がやわらかな毛で覆われたタイプとなると、家庭向け製品はほとんど存在しなかった。
そこへ登場したのが「ファミリア(Familiar)[https://www.familiarmachines.com/]」だ。
ファミリアは、お掃除ロボット「ルンバ」を生み出したiRobotの共同創業者、コリン・アングル氏が2024年に設立した新会社「ファミリア・マシンズ&マジック(Familiar Machines & Magic)」が開発した四足歩行のペットロボットである。
アングル氏はかねてから人間と感情的に関わり合えるロボットを作ることが夢だった。
世界5000万台以上に普及したルンバでさえ、本来の夢への「寄り道」だったと明かしている。
生活空間を共にする存在として設計されたファミリアは、その35年越しの夢がかたちになった製品だ。
ファミリアには感情の状態を読み取るAIモデルと、個性を形成するための小型マルチモーダルモデル(複数の情報を同時に処理できるAI)が搭載されており、飼い主の表情、声のトーン、行動パターンを継続的に学習する。
時間をかけて家庭のリズムを覚え、帰宅すると出迎えに来て、料理中はキッチンについてくる。
45分以上スマホを見続けていると、体を動かすよう促してくることもある。
アングル氏が「半年前の技術ではこれは作れなかった」と語るほど、生成AIの急速な進歩がこのロボットを可能にした。
中型犬サイズの人懐っこいロボットペット、一緒に散歩も
ファミリアは大きめの柴犬か小ぶりなゴールデンレトリバーほどの中型犬サイズの四足歩行ロボットだ。
子鹿のようなつぶらな瞳、子熊を思わせる丸い耳と肉球を持ち、全身は触覚センサーを内蔵した毛皮のような素材で覆われている。
なでれば反応し、抱きしめれば体を預けてくる。
その造形は犬でも猫でもない。どの動物にも似ているようでどこか違う。
アングル氏はこれを「抽象的なクマ」と表現するが、実際には何とも言えないやわらかいクリーチャーで、どこか懐かしい感じすらある。
「犬にも猫にも似せたくなかった。人々はすでに犬や猫に対して強い先入観を持っているから」とアングル氏は言う。
既存の動物に似せると「本物と同じように動くべきだ」という期待が生まれてしまう。
あえてどの動物でもないデザインを選ぶことで、そうした固定概念から自由になれる。
「階段を登れるのか?と聞かれたら、わからないと答えればいい」とアングル氏は笑う。
内部にはNvidiaのJetson Orinプロセッサが搭載され、23の関節部位を持つ体が流れるように動く。
ステレオビジョン、距離センサー、アレイマイクロフォンを備え、しっぽを振り、耳を動かし、眉で喜怒哀楽を表現する。
屋外の散歩にもついてこられるほどの運動性能を持つ。
音声や映像の処理はすべて本体内で完結し、データは外部のクラウドサーバーには送られない。
ロボットがペットになるために言葉はいらない
これだけ高度なAIを積みながら、ファミリアは言葉を話さない。
質問に答えることも、タスクをこなすこともしない。
コミュニケーションの手段は、動きと動物的な鳴き声だけだ。これは技術的な限界ではなく、意図的な判断だ。
「AIが人間と安全かつ責任ある形で会話できる技術は、まだ存在しないと考えている。ロボットが3歳の子どもに交際アドバイスをするような事態は絶対に避けたい」とアングル氏は言う。
しっぽ、耳、まばたき、眉の動きだけで、喜び、悲しみ、怒り、不満を表現できるよう丁寧に設計されている。
「どれほど多くのことを伝えられるか、驚くはずだ」とアングル氏は言う。
本物のペットとまったく同じやり方で、言葉なしに心を通わせる。
プライバシーへの配慮も徹底している。
デフォルトではいかなるデータもクラウドに送信されない。
ログのアップロードはユーザーが明示的に許可した場合のみで、いつでも削除できる。
「何のためにデータを使うのかを透明に示し、いつでも撤回できるようにする」とアングル氏は言う。
孤独が社会問題になった時代に生まれた新しい家族
ファミリアの開発には、ロボット工学界を代表する顔ぶれが顧問として名を連ねている。
犬型ロボット「スポット(Spot)」で知られるボストン・ダイナミクスの創業者マーク・ライバート氏、感情表現ロボットの先駆者シンシア・ブリジール氏、そして25年前に「社会的支援ロボット工学」という研究分野を切り開いた南カリフォルニア大学のマヤ・マタリッチ教授だ。
マタリッチ教授はプロトタイプを初めて目にした瞬間、床に座り込んでファミリアを抱きしめずにはいられなかったという。
「かわいくて、個性があって、守ってあげたくなる存在こそが、ロボットとして最も愛される」と教授は言い、介護施設や精神的サポートへの応用可能性も指摘する。
生成AI以前はロボットが人の言葉を理解することはほとんどできなかったが、技術の急速な進歩がそれを変えつつある。
アングル氏が特に意識するターゲット層は高齢者だ。
「年を取るにつれてペットが嫌いになるわけではない。世話への不安と義務感から、新しくペットを迎えることをためらうようになるだけだ」と言う。
ファミリアなら、その不安を取り除ける。
製品名「ファミリア」は古い英語に由来し、魔女の使い魔や魔法使いの相棒を指す言葉だ。
孤独が社会的問題として認識されるようになった時代に、ようやく真に寄り添ってくれるAIもふもふロボットが誕生したようだ。
価格や料金体系の詳細は未公表だが、アングル氏は「犬を飼うコストと同程度」を目安にしたいと語っており、2027年の出荷を目指している。
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References: Familiarmachines[https://www.familiarmachines.com/] / iRobot Founder Wants to Put a Robotic Familiar Into Your Home[https://spectrum.ieee.org/familiar-machines-and-magic] / New pet robot uses local multimodal AI to learn and adapt to human behavior[https://interestingengineering.com/ai-robotics/familiar-robot-consumer-physical-ai-reveal]











