地球人類にとって、宇宙は身近な場所になってきた。といっても、光の速さでもたどり着けない深宇宙の話ではない。
現在、地球の周囲を回っている人工衛星は、稼働中のものだけでも約1万2000~1万3000機素材しているという。
それらを軌道に投入するためのロケットは、毎日のように世界のどこかで打ち上げられているのだそうだ。
ロシアでは2026年から、ロケットの表面に広告を掲載できるようになった。誰もが注目する打ち上げシーンは、広告媒体として「使える」と思ったようなのだが
ロケットの表面に広告を掲載することが可能に
2026年1月1日、ロシアではロケットなど宇宙関連機器への広告掲載を認める法律が施行された。
これを受けて、宇宙開発を担う国営企業「ロスコスモス」は、自社が所有する宇宙関連設備だけでなく、連邦政府所有の宇宙物体にも広告を掲載する権限を得た。
ロスコスモス社は人工衛星やロケットの開発、打ち上げ、有人宇宙飛行、宇宙関連インフラの運用などを管轄する組織である。
ソ連時代から続く宇宙開発の流れを引き継いでおり、NASAやJAXAに近い存在だと思えばいいだろう。
そのため、広告の収益は半分が連邦予算に入り、残り半分がロスコスモス社の特別準備基金に回されるんだそうだ。
実際にロスコスモス社は、2026年に入って打ち上げたロケットに、6件の広告ステッカーを掲載したそうだ。
内訳は金融機関の「PSB」、レストランチェーンの「コフェマニア」、さらにメディアグループやオリンピック委員会とのタイアップで4件。
残る2件は、1961年4月12日にガガーリンが「ボストーク1号」で成し遂げた、「人類初の宇宙飛行65周年」を記念する公共広告だったという。
広告のターゲットは打ち上げシーンを見る「視聴者」
だが広告とはいえ、何を貼ってもいいわけではない。この法律では、広告の図柄やロゴが「宇宙機器の安全な使用に影響を与えてはならない」と定められている。
ロケットに貼った広告のせいで、肝心の打ち上げに支障が出たら、それこそ本末転倒になってしまうからだ。
もちろん、こういったロケットの側面に貼られた広告やロゴは、地上から肉眼で見えるわけじゃない。
広告主が狙っているのは、打ち上げそのものがニュースになり、写真や映像がSNSや動画サイトなど、各メディアで拡散されることで得られる効果である。
もっとも、ロシアの宇宙広告はこれが初めてではない。2000年にはプロトン-Kロケット[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%B3-K]に、ピザハットのロゴを掲載した前歴もあるのだ。
気になる広告料金はというと、ロスコスモス社が定める基本単価に、広告面積やロケット外面の使用面積、掲載期間などを組み合わせて算出するという。
なお、政府による公共広告や宇宙開発の普及を目的とする広告は、基本料がゼロになるそうだ。
ロシアの抱える問題が産んだ苦肉の策?
当初は広告掲載料で年間最大2億ルーブル(約4億4600万円)、宇宙インフラ施設への広告で最大500万ルーブル(約1115万円)の収益が見込まれていた。
この金額だけを見ると、国家規模の宇宙開発費を賄えるほどの財源としては、とうてい足りないように思う。
ウクライナとの戦争が続く中、ロシアの宇宙産業は国際協力プロジェクトや海外顧客の減少といった問題を抱え、厳しい状況に置かれている。
これだけで資金難を解決できるわけではないものの、ロスコスモス社としては宇宙開発に民間資金を呼び込み、新たな収入源を開拓したいところなのだろう。
話題性のある派手な企画に見える一方で、その背景には資金確保という、現実的な理由があったのだ。
このニュースにロシアのネット民たちは、皮肉交じりのコメントを寄せている。
- 地上から見えるわけじゃないから、みんな落ち着け。
外に出てISSを探してみろよ。サッカー場サイズなのに、見えるのは明るい点くらいだ- 個人的には、月をテラフォーミングしてロゴを表示する方が、費用対効果も永続性も高いと思う。まあ、めちゃくちゃ金はかかるだろうけど。
- えーと、質問なんだけど。いったい誰向けの広告なんだ? オリガルヒたちが年1回の宇宙旅行でそれを見て、「ふむ、これはいい物件だ、買おうかな」って思うのか? それとも、人類がアホすぎるから接触を避けてる宇宙人向けか?
- むしろ、宇宙を広告利用し始めるまでこんなに時間がかかったことに驚いてる。軌道上スクリーンも、そのうち出てくるぞ
- いや、それは物理的に無理なんだ。ISSの何千倍もある人工構造物でもない限りね。複数の衛星を連携させても、互いに剛体接続されてないなら無理だよ
- ブランドロゴを大量につけたロケットが、打ち上げ失敗で派手に爆発する映像を早く見たい
- 発射台で横倒しになって炎上したFacebook衛星の大失敗を思い出した
- こういうの、実は前からあったぞ。ソユーズMS-28には、スベル銀行のニューラルネット広告が載ってた
- 9ピザハットの広告ロケットもあったしな
- プーチンは「宇宙飛行する巨大広告看板を修理するミッション」のロシア映画が気に入ったんだな
- ロシアはもう、ほとんど軌道への打ち上げはしてない。宇宙産業はサビつきつつあり、ベテラン技術者は引退しても後継者がいない。ロスコスモスは汚職まみれだし、連邦宇宙予算も削減中(ウクライナ戦争優先だし)。唯一の有人宇宙船ソユーズも1960年代設計。
要するに、これは大した成果にはならないと思う- そもそも、うちの国は宇宙開発にほとんど金を使わず、過去の遺産が腐っていくだけだからな。だからこれは、何とか金を稼いで発展するための手段なんだろう。なので、そこまで悪いとは思わない
- 同じ理屈なら、誰にも見られない水道管に広告出しても同じじゃないか
- 広告主たちは、自分たちが金を払って出した広告が、大気圏で燃え尽きるってわかっているのかな
「イベント」から「日常」への過渡期にある宇宙ロケット
かつて、ロケットの打ち上げは、誰もが固唾を飲んで見守る一大イベントだった。しかし今やすっかり日常と化し、いちいちニュースにもならなくなった。
今、ロケットはどのくらいの頻度で打ち上げられているのか、みんなは知っているだろうか。
実は世界各地で、なんとほぼ毎日のようにロケットが打ち上げられ、宇宙へ向かっているのだそうだ。
2025年には合計で329回の打ち上げが行われ、そのうち321回が宇宙空間またはそれに近い軌道に到達した。
各国の打ち上げ回数(軌道到達 ・ほぼ到達)[https://planet4589.org/space/papers/space25.pdf]は以下の通り。
- アメリカ:181件(179件)
- 中国:92件(91件)
- ロシア:17件(17件)
- ニュージーランド:17件(17件)
- ヨーロッパ:8件(7件)
- インド:5件(4件)
- 日本:4件(4件)
- 韓国:2件(1件)
- イスラエル:1件(1件)
2026年も5月12日時点で109回の打ち上げが確認されており、もはやロケットの打ち上げは特別なイベントではなくなっている。
通信や地球観測のほか、軍事・偵察、技術実証など、現代社会を支えるインフラを宇宙へ運ぶため、ロケットは日常的に打ち上げられるものになっている。
つまり、現在の宇宙事業の中心は有人飛行や宇宙探査ではなく、地球の周りを回る人工衛星の運用に移っていると言えるだろう。
これはもう国家の威信をかけるだの、国威の発揚だのといったレベルではない。
2025年の打ち上げでは、純粋な政府主導のものが99回だったのに対し、民間企業による商用の打ち上げが215回、民間企業が政府との契約で実施した打ち上げが15回だったという。
そしてアメリカの181件のうち、イーロン・マスクのスペースXが165回を占め、現在のところ独走状態なんだとか。
ロシア当局の思惑のように、打ち上げの様子が全世界に中継され、みんながテレビの前に釘付けになる…そんな時代は終わりつつある。
7年ほど前、ロシアは人工衛星を並べて広告を表示するなんていうアイデアを実行に移そうとしていた。
結局この計画は頓挫してしまったようだが、光を空中に表示する広告なら、既にもっと手軽なドローンが実現してしまっている。
果たしてこの、ロケットの機体に広告を掲載するというアイデアは、費用対効果なども考えた場合、どこまで有用なのだろうか。
References: May 19, 2026 Russian Space Agency Displays Commercial Ads on Rockets to Boost Revenues[https://www.odditycentral.com/news/russian-space-agency-displays-commercial-ads-on-rockets-to-boost-revenues.html]











