オオグソクムシが何年も絶食できる理由が判明。巨大な胃と代謝を抑える体の仕組みにあった
深海に生息するオオグソクムシ Image credit:Prof. LI Xinzheng

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 鳥羽水族館のダイオウグソクムシが、最後にアジを食べてから5年と43日も生き続けたという話を覚えているだろうか。

 もともと食べ物の少ない深海にすむオオグソクムシ属の仲間は、長期間何も食べなくても生きていられる。

 その答えに迫る研究結果が報告された。

 中国科学院海洋研究所の研究チームが同じオオグソクムシ属の仲間を調べたところ、体の3分の2もある巨大な胃に食べ物を大量にため込みながら、何もせずじっとしていても消費する最低限のエネルギーすらも節約し、蓄えを何年も持たせていたことが明らかとなった。

 この研究は、学術誌『Cell[https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00571-4]』に2026年6月5日付で掲載された。

絶食後5年以上生き続けた日本のダイオウグソクムシ

 鳥羽水族館で飼育されていたオオグソクムシ属のダイオウグソクムシ「No.1」は、2009年1月2日に約50gのアジを1匹食べたのを最後に、いっさい餌を口にしなくなった。

 水槽の底でじっとしたまま生き続け、2014年2月14日に死を遂げた。最後の食事から数えると、絶食した期間は5年と43日にもなる。

 死んだあとに解剖してみると、体は痩せておらず、入館時に1040gだった体重は、死亡時に1060gとむしろわずかに増えていた。

 胃の中に固形物はなく、淡い茶色の液体が満たされていたため、餓死とは考えにくい。

 なぜこれほど食べずにいられるのか、その正確な理由は長年わかっていなかった。

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オオグソクムシ属が絶食できる理由を調査

 中国科学院海洋研究所の研究チームは、長期間絶食できる理由を探るため、オオグソクムシ属の2種を調べた。

 水深900mほどにすむタイワンダイオウグソクムシ(Bathynomus jamesi)と、水深300mほどにすむオオグソクムシ(Bathynomus doederleini)で、どちらもダイオウグソクムシの近い仲間にあたる。

 遺伝子の働きから体のつくり、普段の暮らしぶりまで詳しく調べていくと、食べずに生きのびるための工夫が2つ見つかった。

 1つは食べ物を大量にストックできる大きな胃、もう1つは代謝にあった。

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体の3分の2を占める巨大な胃にため込む

オ オグソクムシの仲間の胃は、体のおよそ3分の2を占めるほど大きい。浅い海や岸辺にすむ等脚類とくらべても、体に対する割合がずっと大きかった。

 これほど大きな胃があれば、めったに来ないごちそうを一度にたっぷり詰め込める。

 深海では、沈んできたクジラの死骸のような大きな食べ物がときどき海底に届く。

 そんなチャンスが訪れたとき、オオグソクムシははちきれそうになるまで食べ、それを長持ちする蓄えに変える。

 胃の中の食べ物は、細かくすりつぶされた泥のような状態になっていた。

 そこには、クラミジア門と呼ばれる細菌の仲間が多く含まれていた。他の生き物の体内にすみつき、相手から栄養を受け取って生きる細菌で、脂肪を蓄える働きに関わっている。

 たっぷり食べたごちそうを、長持ちする脂肪の蓄えに変える手助けをしているとみられる。

代謝速度を落として蓄えを長持ちさせる

 たくさんため込んでも、ふつうに暮らせば蓄えはやがて尽きるが、オオグソクムシは、体がエネルギーを使う速さそのものを大きく落としていた。

 生き物が生きるために体の中でエネルギーを使う働きを代謝という。代謝はじっとしていても、眠っている間にも行われている。

 だがオオグソクムシは最低限の代謝まで切りつめることで、わずかな蓄えを何年も持たせていた。

 オオグソクムシは、体の中で共に暮らす細菌からND1という遺伝子をもらい受け、自分の遺伝子に組み込んでいたのだ。

 研究チームはND1を、ゼブラフィッシュや線虫、ヒトの細胞に組み込んで働きを確かめた。

 その結果、普通の温度ではエネルギーを使う速さが上がり、かえって飢えに弱くなったが、深海のように冷たい温度にすると、逆にエネルギーを使う速さが下がった。

 ゼブラフィッシュが飢えに耐える力は37%も高まった。冷たい深海で、ND1遺伝子は省エネのスイッチとして働いていた可能性がある。

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鳥羽水族館はまだ食べなくても生きられた?

 今回調査されたタイワンダイオウグソクムシとオオグソクムシは、ダイオウグソクムシと体のつくりも暮らす場所もよく似ている。

 巨大な胃にため込み、冷たい海でエネルギーを使う速さを落とすという生き方は、ダイオウグソクムシにもあてはまる可能性が高い。

 胃に固形物がなく液体だけが残っていたのも、体重が減っていなかったのも、ため込んだ蓄えを少しずつ使いながら省エネで生きていたと考えれば筋が通る。

 鳥羽水族館のダイオウグソクムシNo1の死因は判明していないが、胃に液体が残っていたのなら、もしかしたら、食べないままもうちょっと生きられた可能性もあるかもしれない。

まとめ

この研究でわかったこと

  • オオグソクムシの仲間は、体の3分の2もある巨大な胃に食べ物を大量にため込んでいた
  • 普段は代謝を最低限まで落とし、わずかな蓄えを何年も持たせていた
  • 細菌から受け取った遺伝子ND1が、冷たい深海で代謝を抑えるスイッチとして働いていた可能性がある

まだわかっていないこと

  • 今回調べたのはオオグソクムシ属の別種で、ダイオウグソクムシ自身の仕組みは未確認
  • 鳥羽水族館のNo.1が死んだ本当の理由は、今も判明していない

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References: Researchers reveal how supergiant deep-sea isopods survive years without food[https://www.eurekalert.org/news-releases/1130871] / DOI:10.1016/j.cell.2026.05.012[https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00571-4]

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