子宝に恵まれなかったカナダガンのつがい、孤児のヒナに出会い最高の親鳥になる
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 カナダガンのカップルが親を亡くしたヒナたちを養子として受け入れ、我が子のように愛情をもって育てている。

 このカップルの間にも卵が産まれていたのだが、60日経っても孵化しておらず、絶望を抱えていた。

 そこへ交通事故で孤児となったヒナたちを引き合わせてみたところ、カップルは「わたしたちひ任せて!」と言わんばかりに快く受け入れてくれたのだ。

孵らない卵を抱き続けるカナダガン

 ここ6年間、カレンとリチャードという名前のカナダガンのつがいが、毎年春になるとミズーリ州西部コールズにある、とある店舗の駐車場にやってくる。

 毎年同じ駐車場の片隅に愛の巣を作り、やがてヒナたちが誕生する。近所の人たちは、彼らの子育ての様子を毎年楽しみに見守ってきたという。

 2026年の春もカップルは巣作りを始めた。人々はもうすぐ愛らしいヒナたちの姿が見られるだろうと、いつも通り期待していたのだが、カレンが卵を温めはじめて2か月が経っても、ヒナたちが生まれる気配すらなかった。

 周囲からは「どうしたんだろう?」と心配する声も出始めた。

 クリステン・エヴァンスさんも、心配しながら見守っていた一人だった。

 いてもたってもいられなくなった彼女は、地元の保護団体に連絡を取ってみることにした。

カレンが卵を抱き始めてからもう60日近く経ちました。とっくに孵っていてもおかしくない時期です。

今週に入ってからは卵を抱く時間が減り、立っている時間が増えてきました。どうやら、自分でも卵が孵らないことに気づき始めていたようでした

 こう語るのは、ミズーリ州西部で活動する水鳥専門の保護団体、ベイブズ・ダックス・ウォーターファウル・レスキュー(BDWR)[https://babesducks.org/]だ。

 クリステンさんからの連絡を受けて、BDWRのスタッフは現場に駆けつけた。残念ながら、彼女の予感は的中した。

通常、カナダガンの卵が孵るまでの期間は28日です。最後の卵が産み落とされた時期によっては、35日になることもあります。ですが55日を過ぎた場合、卵が孵化することはありません

 カレンとリチャードの間に生まれた卵は、温め始めてから既に60日が過ぎていた。今シーズン、ふたりの間にヒナが生まれる可能性はもうないのだ。

 それでもカレンは、さらに数日卵を抱き続けた。クリステンさんは、そんな姿を見て胸が張り裂ける思いだったという。

事故で親を亡くしたヒナたちを養子に迎える

 そんな中、BDWRに1本の電話が入った。

両親が車にはねられて死んでしまい、孤児となった2羽のカナダガンのヒナに関する電話でした。私たちはその子たちを引き取りに行きました。

そして、ふと思ったんです。「リチャードとカレンが、この子たちを受け入れてくれないかしら」って

 カレンはまだ、卵を抱き続けていた。

だが彼女の体力は、もう限界に近いはず。それでもカレンは、卵をあきらめようとしなかったのだ。

 そこでBDWRのスタッフは、ダメもとで賭けてみることにした。カレンとリチャードに、親を亡くしたヒナたちを引き合わせてみたのだ。

ヒナたちを紹介したところ、カレンとリチャードはすぐに自分たちの子供として受け入れてくれました

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 BDWRは賭けに勝った。ヒナたちはリチャードの後をついて歩き、いっしょに遊び始めた。まるで本当の父子のように。

 だが、カレンはまだ卵を諦める決心ができなかった。彼女は夜の間ずっと卵を温め続け、リチャードは養子となったヒナたちといっしょに過ごしていた。

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 だが翌日になって、カレンはどうやら気づいたらしい。このヒナたちが自分を母親として必要としていること、そして抱き続けてきた卵がもう孵化しないことを。

カレンはリチャードとヒナたちが、走り回りながら自分を待っている様子を、何時間も眺めていました。



午後1時頃になって、カレンは突然、ヒナたちが自分を必要としていること、そして自分の産んだ卵はもう孵らないことを悟ったのです

 そしてついにカレンは立ち上がった。卵から離れ、巣を後にした。そしてリチャードとヒナたちとともに駐車場を横切り、水辺へと旅立っていったのだ。

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日本にも生息していたカナダガン

 カナダガンは主に北米大陸に広く分布している水鳥だ。もともとは渡り鳥だったが、現在は都市部の公園やゴルフ場、学校の周辺などに定住する個体群も多い。

 芝生や水辺など、見通しのよい開けた場所を好むため、人間の生活圏にも入り込みやすい鳥である。

 現在は狩猟用としての移入や、飼育されていた個体が野生化するなどして、ヨーロッパ各地や南米大陸、ニュージーランドにも定着しているという。

 イギリスでは公園や都市部で普通に見られるほど増えており、一部地域では外来種として管理の対象になっているとのこと。

 実は日本でも一時は100羽ほどが定着していたとみられているが、2014年に特定外来生物に指定され、現在までに根絶に至った[https://www.env.go.jp/press/101789.html]。

 これは我が国で初めて、国内に定着した特定外来生物の防除に成功した例となったそうだ。

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自分以外のヒナもまとめて育てる「保育園」

 実はカナダガンは、子育てが始まると複数の家族が集まって、「クレッシュ(crèche)」と呼ばれる保育園のような集団を作ることがある。

 この集団の中では、数羽の成鳥が大勢のヒナたちの世話をする。時には40~50羽のヒナたちの面倒を、まとめて見ることもあるんだとか。

 親を失ったヒナや別の家族のヒナが加わることもあり、自分の子以外のヒナを連れ歩いているケースも珍しくない。

 今回、カレンとリチャードがすぐに2羽のヒナを受け入れたのも、こういったカナダガン特有の習性が背景にあったと言えるだろう。

 ヒナたちは生まれてから24時間以内に、歩いたり泳いだりできるようになる。そうなると親鳥はヒナを連れて巣を離れ、池や湖などの水辺へ移動する。

 時にはこれが、数kmも離れた場所への「旅」になることも。日本でもカルガモのお引っ越しが、毎年恒例の風物詩になっているのは知っての通りだ。

 カレンとリチャードも、きっとヒナたちを無事に水辺に導いたはず。カナダガンは同じ相手と添い遂げるそうなので、来年こそはふたりの子供たちが生まれるといいよね。 

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