例えば先日、PCのトラブルで大いに助けられた。ノートPCに、ちっちゃいトラックボールというのがいつものスタイル。どこへ行くにもこのセットだ。
例えば、カメラの水準器の出し方。撮影時に傾いちゃう癖があるので、水平を見る機能は私にとって必須。しかし、普段使わないメーカーの新製品をレビューしたりするときには、水準器を出すだけでもメニュー画面と格闘だ。気を失いそうになる。そんな時でも、カメラの機種名に「水準器の出し方を教えて」と付け加えるだけでOK。ほぼ正しい操作法をすぐさま回答してくれる。うろ覚えで微妙に機種名が間違っていても、結構な確率で正しい機種名としたうえで教えてくれる。マニュアルいらずだ。
マニュアルにない裏技も教えてくれる。使っているカメラのシャッター交換キャンペーンをやっていると知った。半額だという。結構古いカメラなので、交換するかどうか迷った。このカメラはシャッター回数20万回に耐える仕様。かなり使い込んでいるので、ずいぶんシャッターは切っている。とはいえ、無茶な連写をするような使い方はしていない。多分まだ余裕はあるはず。ただ、どのくらいシャッターを切ったか、一応知っておきたい。大抵の場合、何らかの方法で知ることができる。しかし、どこを見ればいいのか……。
他にもある。普段画像閲覧や簡単な画像加工にIrfanViewというソフトを使っている。とても多機能で速い。もう20年以上お世話になっている。非商用利用なら無料で使える。
最近ではGoogle Chromeで「ググる」と、最上部に「AI による概要」が出てくるようになった。Google自体が「調べ物は検索からAIに」と考え方を変えたようだ。更に質問を重ねたりするには下にある「質問する」のテキストボックスに書き込めばいい。もうこれはGeminiそのものと言っていいだろう。ただ、AIは常に正しい答えを返してくるとは限らない。創作や憶測が混ざってしまうこともある。単なる検索とは付き合い方を変えたほうがいい。イメージとしては、近所の物知りあんちゃんに色々尋ねるような感覚だ。ものすごく賢くて博識なんだけど、時々間抜けな答えを返してきたり、思い違いから平気で嘘をついたりする。AIをマニュアルとして使う場合、こうした弱点は、あまり気にならなくなる。仮に回答に誤りがあっても、被害の及ぶ範囲は限定的。確かめればすぐに正しいか誤りかを確認できる。実際、かなりの確率でマニュアルか、それ以上の存在として十分活用できている。
番外編として海外旅行の道案内の例もご紹介しよう。つい先日、取材で台北に行った。地下鉄の駅からホテルまで行く際、どこから出ればいいか毎回迷う。Google Mapや百度地図に、出口の表示が出る場合もあるが、出ない場合もある。駅にも案内があるが、意外にわかりにくい。1番から出ると楽な最短ルートのような場合、2番から出ると大きな通りを横断しなければならなかったりする。ひどいときは、一旦駅に戻って、改めて1番から出ないとたどり着けないような所だってある。総計約30kgもある重い荷物を携えて、この仕打ちは堪える。
ここでもAIが大活躍だ。地下鉄車内で調べておけば、降りてからの行動もスムース。AIに、予約したホテル名を告げ最寄り駅と出口を訊くと「忠孝復興」駅の「5番出口」ということが分かった。ホテルまで最短で行ける出口だ。ホテルのWebに最寄り出口が書かれている場合もあるし、そうでないこともある。中国語、英語、日本語を問わずぐるっと探索して、最適な出口を一瞬で見つけてくれるのは、AIだからこそ。ところがこの出口、全部階段。途中で休憩しなければ荷物を持って上がれない地獄の出口だった。翌日確認したところ、すぐ近くにある「4番出口」はエスカレーター設置の天国出口だったことが判明。試しに「桃園空港から台北〇〇飯店までの地下鉄での行き方。出口にエスカレーターがあるところを優先して」と訊くと、ちゃんと4番出口を案内してくれた。
AIはもっと賢くなる。過去のAIチャットの履歴、検索履歴、行動履歴、メールのやり取りなどから「どうやらこいつは台北に出張で何泊もするらしい。撮影機材もあることだし、いつものように大荷物だろう」と推測する。そして、特に指示を出さなくても、AIが先回りしてエスカレーター付きの4番出口をお勧めする……。便利さの代償として、日常情報の大半をAIに「食わせる」。自分しか知らない、いわゆる「コンテキスト」を充実させれば、AIは自分専用の秘書に昇格する。AIにプライバシーをさらけ出し丸裸になって出力の精度を高めるか。プライバシーを守って、服を着ることを優先しそこそこの精度で我慢するか。そういう二択を迫られる時代になった。ただ今回は「こいつ、いつも『答が間違っている』とか言って俺をいじめやがって。癪に障るから階段だけの出口を教えたれ」という「考え」のもと、わざと地獄の出口を出力したのかもしれないが……。(BCN・道越一郎)
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