山根 綺、日本武道館ワンマンを目標に掲げ1st EP『青春の...の画像はこちら >>

アイドルマスター シャイニーカラーズ」の緋田美琴役をはじめ、多数の人気アニメ/コンテンツに出演する声優の山根 綺が、自身名義では初の音楽作品となる1st EP『青春のかなしみ』を4月3日に配信リリースした。2023年にYouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」を開設してカバー動画の投稿を開始、同年11月にはカバーライブを開催するなど個人での音楽活動にも精力的に取り組んできた彼女。“青春”をテーマにした今回のEPには、自身が初めて作詞・作曲を手がけた楽曲を含む5曲のオリジナル曲を収録し、アーティスト・山根 綺として表現したいもの、届けたいメッセージが詰まった瑞々しい作品になっている。今まさに新しい“青春”をファンと共に謳歌している彼女が、この活動にかける想いとはどんなものなのか。アーティストとしての初インタビューで迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

音楽チャンネル「YAYA RECORDS」の活動がもたらした成長と気づき

――まずはについてお聞かせください。2023年から様々な楽曲のカバー動画を公開してきて約1年になりますが、当初はどんな気持ちで始めたのでしょうか。

山根 綺 実は小さい頃からアーティスト活動をやってみたい気持ちがあったので、マネージャーさんから音楽活動のお話をいただいたときは、二つ返事で「やります!」と応えました(笑)。最初はキャラクターやコンテンツの力を借りていない“山根 綺”という人間に、どれくらい興味を持ってもらえるか自信が持てなくて、いきなりオリジナル楽曲を発表するのは不安だったので、カバー動画から活動を始めて土台を作っていくことにしたんです。色んな楽曲のカバーをすることで、自分の歌のイメージも掴みやすくなると思ったので。

――カバーの選曲も、YOASOBI「アイドル」やmilet「Anytime Anywhere」といった話題のアニメ主題歌から、Vaundy「踊り子」や藤井風「花」といった近年のJ-POPの人気曲、ZONE「secret base~君がくれたもの」などの少し懐かしいナンバーまで、幅広いですよね。

山根 そうなんです! J-POP中心の選曲にしたのも、もちろん私がJ-POP好きというのもあるのですが、いわゆる「声優のアーティストデビュー」とは違った印象を持ってもらいたくて。他にも、歌ってみた動画はマイクの前で歌う画角が主流だと思うんですけど、YAYA RECORDSでは私が六畳一間のお部屋でカメラに向かって歌うシチュエーションで、カメラも自分で録画をスタートして止める演出が中心になっています。多分、今まであまりない形だと思います。

――どの動画も、山根さんが実際に自分のお部屋で歌っているような映像に仕上がっていて、距離感の近さを感じられるのがいいなと思います。

山根 ありがとうございます!でも、最初は私もお部屋で歌いながらどう動けばいいのかわからなくて、この1年、監督と色々と試行錯誤しながら作ってきました。それこそカメラ目線になる回数や長さも、現場ですごく相談しながら撮影していて。(カメラを)見過ぎるとアピールしている感が強くなってしまいますし、見なさ過ぎだと(動画を)観てくださる方を置いてけぼりにしてしまうので、正面や横、下を向くタイミングや量もバランスよく調整しながらやっています。それが親近感に繋がっていたらいいなと思います。

――同じお部屋でも楽曲によってシチュエーションや動きのバリエーションが違っていて、すごく工夫されていますよね。

山根 最初の頃はどんな動きをするかアイデアをご提案いただいて、私がその動きをやってみるパターンが多かったのですが、「ソラニン」(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の頃から私が「こういう動きはどうですか?」と提案することが増えました。「ソラニン」の間奏で私が寝ながらギターを弾いているカットや、「燈」(崎山蒼志)で最後に灯りを1つずつ消していく演出も、自分のアイデアを汲み取っていただいたもので、この1年で「もしかしたら山根にもクリエイティブな部分があるのかもしれない……!」と自信を持てるようになりました(笑)。

――ちなみに今までの動画の中で、山根さんが普段自分のお部屋で過ごしている雰囲気に一番近いのはどれだと思いますか?

山根 それはいい質問ですねー!でも、どれだろう?……あっ、「愛を伝えたいだとか」(あいみょん)だと思います。あの動画は朝っぽいシチュエーションで撮っていて……あれ?でも私、朝ご飯は食べないので違うかも。

――朝ご飯のことはとりあえず置いておきましょう(笑)。

山根 であればやっぱり「愛を伝えたいだとか」ですね。私はお部屋ではごろごろしていたり、忙しなくしていることが多いんですけど、この曲は最後に私が撮影を止めずに、服を選んでバーッと画面からはけていくんですよ。その忙しない感じが普段の私と結構似ている気がします。朝はいつも時間がなくて、家に出る時間の15分くらい前に起床する日もあるくらいで。

――起きるのが苦手なんですか?

山根 そんなこともないんですけど、寝るのが好きなので、ギリギリまで寝ていたいんです。あまりメイクもしないし……本当にすみません。

――なんで急に謝るんですか(笑)。

山根 もっとちゃんとした格好をしろっていう感じなんですけど、カチッとした格好をしていると気が張ってしまって緊張しやすくなるので、フラットでラフな服装が好きなんですよね。

――でも、そういうところが、YAYA RECORDSの自然体な雰囲気に反映されているようにも思います。

山根 うんうん、そうかもです。それとYAYA RECORDSを始めて良かったなと思うのが、アニメやコンテンツを通じて私に興味を持ってくれた方が、YouTubeで私の歌を聴いてくれるんですよ。それがきっかけで私のライブに足を運んでくださる方もいらっしゃって。今までにない反応で嬉しいですし、最近は少しずつ積み重ねてきたものが形になっていることを実感しています。

“青春の始まりと悲しみ”、そのすべてを包み込むような1枚に

――YAYA RECORDSを始めるまでの音楽遍歴についてもお伺いしたいです。動画やライブではギターを弾くこともありますが、楽器経験は元々あったのですか?

山根 小さい頃に3年くらいピアノを習っていたのですが、年1回の発表会がすごく苦手で、弾く楽曲も自由に決められなくて、クラシックの楽曲ばかりだったので、それがハマらなくて辞めてしまったんです。でも音楽や歌うことはずっと好きだったので、高校生の時に軽音楽部に入ってギターを始めて、そこでギターボーカルを3年間やっていました。男性ボーカルの曲をコピーするときはベースの男の子が歌うから楽器を交換していたので、ベースも少しだけ触っていたことがあって。この業界に入ってからも、『SHOW BY ROCK!!』という作品でルフユというドラマーのキャラクターを担当して、そこでドラムを3年ほどやっていました。

――バンド周りの楽器は一通り経験があるんですね。ちなみにその頃はどんな音楽を好きで聴いていたのでしょうか。

山根 東京事変さんが大好きでした。ただ、私が知ったのは解散寸前のタイミングだったので(※東京事変は2012年に活動を終了。その後、2020年に再始動した)、もう少し早く知っておけばライブに行けたのに!と強く思っていました。あとはRADWIMPSさん、ELLEGARDENさんみたいなゴリゴリのロックが好きで、9mm Parabellum Bulletもよく聴いていました。人生で初めてライブ参戦したのが、高校生のときに観に行った凛として時雨さんの武道館公演で、そのとき「また観に来たいな」という気持ちよりも「私もここに立ちたい」という気持ちのほうが強かったんですよ。だから私はずっと(アーティスト活動を)やりたかったんだと思います。

――それでYAYA RECORDSでは「六畳一間から武道館を目指す」というスローガンを掲げているんですね。山根さんは声優のお仕事でもキャラソンの歌唱やライブの経験が豊富ですが、それが今の音楽活動に繋がっている部分はありますか?

山根 ないです(笑)。というのも理由が明確にありまして、私は(声優の仕事で)私として歌ったことがないんですよ。例えば「アイドルマスター シャイニーカラーズ」であればシーズの緋田美琴として歌いますし、「ウマ娘 プリティーダービー」であればダイタクヘリオスとして歌うので、キャラクターを背負っていると、やっぱり1人じゃない感覚があって。隣に演じているキャラクターがいてくれているような、2人いるくらいの感覚があるので、1人で歌ったりステージに立つときも寂しさを感じないですし、私はいかにキャラクターの力を借りているのかをすごく感じるんです。それこそキャラソンでリズムやピッチが取りづらい曲があったとしても、練習では全然できなかったのに、「もっと〇〇らしく歌ってみて」と言われてキャラクターを纏うとすんなり歌えたりするんですよ。山根はできなくても、その子(キャラクター)ならできる。きっと周りの人から見たら「いや、同じ人じゃん」ってなると思うんですけど、自分の感覚は全然違います。

――ということは、声優さんがアーティスト活動を始めるときによく、自分自身の歌声がわからなくて悩むというお話がありますけど、山根さんもそういう部分で苦労されたタイプでしょうか?

山根 はい。私も「自分の歌って何だろう?」というところから始まったので。「私が私として歌ったらどんな表現になるんだろう?」というのは常に模索していて、今でも「これは私なんだろうか?」と思う瞬間がありますし、自分で練習しているときも、自分が演じているキャラクターっぽさが出ると「これは違うかも」って思ってしまうんですよ。その意味では、私はまだ本当の自分を探している最中なのかもしれません。

――そういった模索の成果が表れているのが、今回の1st EP『青春のかなしみ』なのかもしれないですね。

山根 今回は、もちろん伝えたいものはあるのですが、「こうだよね」という押しつけはしたくなかったので、結構フラットに歌いました。キャラソンではキャラクターとして歌うことが一番大切で、その子が表現したいものを余すことなく盛り込み伝えるのが求められるのですが、今回の作品は“青春”をテーマに掲げて制作したので、“青春”というのは人それぞれで想像するものが絶対に違うじゃないですか。いいものや悲しいもの、ちょっとエモい感じ、ノスタルジックな雰囲気、人によって感じ方が全然違うのが“青春”だと思うので、それを「こういうものだよね」と決めつけるようなことはしたくなくて。なのでスッと聴ける仕上がりになっていると思います。

――自分も作品を聴かせていただいて、歌声の感情がフラットで透明と言いますか、ここから色んな方向に色付けられる余地のある面白さを感じました。

山根 ありがとうございます!これもある意味の賭けで、今回みたいにあえてフラットに歌ったものだと、それが届く人と届かない人のどちらもいると思うんですよ。でも、これは自分の性格の問題もあると思うんですけど、自分から「こういうものだよね」という正解を提示したくない気持ちが強くあって。歌詞を見たときに「ここはちょっと共感できるかも」みたいに感じられる、寄り添える作品にしたかったんです。

――それは歌声のアプローチに限らず、楽曲を制作するうえでの方向性としても意識されていたことでしょうか。

山根 そうですね。今回なんで“青春”をテーマに掲げたかというと、私の人生の中で青春時代、高校生の頃は人生の転換期で、本当に色々なことがあったんです。で、私はお花が大好きなんですけど、花言葉を調べているときに、プリムラというお花の花言葉が“青春の始まりと悲しみ”ということを知ったんです。その言葉がいいなと思ったのと、プリムラは冬に咲くお花で、私は冬生まれなのでそれもちょうどいいなと思いましたし、冬に咲いて春頃に散っていくのも、自分が青春に対して思い描いている気持ちとリンクしていたので、EPのタイトルは『青春のかなしみ』、その発売記念ライブのタイトルを“青春のはじまり”にしました。それとEPがリリースされる4月は、色んな出会いと別れがある季節で、楽しいこと・嬉しいことと同じくらい、寂しいこと・悲しいことがセットになっていると思うんです。何かが始まって何かが終わる季節でもあるので、それを表現したいなと思いました。

――今回のEPには色んな方々から楽曲提供を受けていますが、皆さんにはそのテーマも伝えたうえで楽曲を制作していただいたのですか?

山根 はい。青春には出会いや別れ、悲しみ、色んなものがあるけど、その全部を優しく肯定して寄り添えるようなもの、みんなが歩いてきた道を包み込めるような一枚にしたいです、ということをお伝えしました。年齢に限らず青春しているときは、自分の気持ちが大きく動いて、これから先の未来を決める大事な決断をすることが多いと思うんですよ。私も声優の道に進むことを決めたのは青春真っ只中のときでしたし、今も別の青春をしていると感じていて。そういう青春時代の決断をそっと後押しできるような、「嬉しいことも寂しいことも全部あるよね」というのを伝えられる1枚にできればと思って楽曲制作をお願いしました。

在りのままの自分を愛せるようになった彼女が今届けたいもの

――ここからはEPの楽曲について、収録順にお話しを聞いていきます。1曲目の「のば」は梶原パセリちゃん(NaNoMoRaL)が作詞・作曲を手がけた、いい意味で肩の力の抜けたミディアムナンバーです。

山根 始めてデモを聴かせていただいたとき、梶原さんの歌声がハマりすぎていて、ご本人の人柄が伝わってくるような楽曲だと思いました。歌詞が本当に素敵で、まず「のば」って何?ってなると思うんですよ。“スーパーノバ”とかで使われる“ノバ”のことかもしれないし、歌詞を見たら色々想像できそうなものだったので、きっと各々が持っている「のば」でいいんだろうなと思って。その距離感が素敵だなって思いました。

――山根さん自身の気持ちや青春とリンクする部分はありますか?

山根 あります!2番のBメロの“逃避したいなって でも 損したくなくて笑った そんな僕を許してしまってるんだ”がすごく素敵で、その前の“教科書もないとこでチャイム鳴らすよ”のところもすごく共感できます。当時の私の中で学校はあまりポジティブなものではなくて、その学校という社会で難しさを感じたときに、学生だと他に行く場所がなかったりするし、そこしかないのは結構しんどいなと思うことが多かったんです。その頃はあまり前向きに学校に通えなくて、お世話になっている横浜のスタジオに朝から登校して体育の授業を受けていた経験があるくらい、学校で教科書を開いて机に向かう時間以外に学んだことがたくさんあって。

――まさに“教科書もないとこでチャイム鳴らすよ”ですね。

山根 その後にある“逃避したいなって”もわかるし、でも損したくない気持ちもすごくわかるんですよね。自分が逃げていることをわかっているから、私はダメなことをやっているのかな、後退しているのかなって思ってしまう。でも、この歌詞では“損したくなくて笑った”って笑ってくれているんですよ。損したくなくて落ち込んだり泣いたのではなくて「まあいっか」っていう感じで。ここが私の共感ポイントで、あのときの若さを想像できて素晴らしい歌詞だと思いました。

――続く「雨色スコープ」は、YAYA RECORDSのカバー楽曲のアレンジを担当されている、れあいさん提供の楽曲。雨降りも構わず駆けているような、爽快かつアッパーなロックチューンに仕上がっています。

山根 れあいさん節がすごく出ている楽曲です。大体の楽曲はAメロ→Bメロ→サビ→2A→2B→2C→Dメロ→3Cという流れだと思うんですけど、この曲はAメロ→Bメロ→サビのあとにDメロ→Eメロに行くんですよ!しかも最後は転調してサビに戻ってくるので、朝起きてから寝るまでの一日、たくさんのことを感じた一日を一周しているイメージが浮かびます。私の中ではこのEPをリード曲のように引っ張ってくれる楽曲だと感じていて、ライブでは皆さんコブシを上げて一緒に盛り上がってもらえると嬉しいです。

――3曲目の「わたしは知ってる」は、CIVILIAN/ナノウのコヤマヒデカズさん提供のセンチメンタルなミディアムロック。

山根 この楽曲は本当に共感オブ共感で、コヤマさんとはまだお会いしたことはないのですが、私と同じバイブスを感じました!まず「わたしは知ってる」というタイトルを見た瞬間に「これは絶対に好きな曲だ!」と感じて。だって「わたしは知ってる」ですよ?

――いや、それだけだとよくわからないです(笑)。

山根 ですよね、ごめんなさい!歌詞の最初の4行、“例えばここじゃなく知らない何処かで生まれたら”から“今の私じゃなく別の誰かになれたのかな”までを読んだときに、私と同じ気持ちを持っている方だと感じましたし、私はこのEPでこういうことを言いたかったんです。私が表現したかった“青春の始まりと悲しみ”の“悲しみ”担当がこの曲だと思います。でも、みんなの決めた道を優しく肯定したい気持ちも含まれているので、このEPの裏ボスじゃないですけど、後方彼氏ヅラをしているというか……。

――後方彼氏ヅラですか(笑)。

山根 ちょっと例えを間違えたかも(笑)。後ろでドシッと構えてこのEPを支えてくれているのがこの楽曲だと思います。すごくいい歌詞なんですよ!

――要約すると、自己肯定感が低くて自分に弱さを感じていても、その気持ちにも意味がある、ということが描かれているように感じました。

山根 そうなんです!“踏まれた花を見て自分を重ねることも無いかな”という歌詞も、私は泣いている人や枯れていく花、終わろうとしている何かに自分を重ねた瞬間が結構あるので、すごくわかる歌詞だと思いました。そんな経験をしたことがある人に共感してもらえるだけでなく、前向きにさせてくれる楽曲だと思います。

――そして4曲目は、山根さんが自ら作詞・作曲した「青春の始まりと悲しみ」。おそらく山根さんがこのEPで表現したかったものを集約したような楽曲だと思うのですが。

山根 そうですね。作詞・作曲は高校のときにもやってみたことはあったのですが、こうやって明確なテーマを持って、多くの人に届けたいと考えながら作ったのは初めてで。この曲は高校時代の自分と今の自分のどちらも表現した楽曲で、1番には高校時代にずっと感じていたことが入っています。“止まらぬこの人生は誰のものかな”という歌詞がありますけど、私は「止まればいいのに」とか「私が私じゃなかったらいいのに」と思ったことが何回もあるんです。特に1サビの歌詞は自分の本当の気持ちを明確に提示しています。本当はラスサビにするつもりだったのですが、今の自分が伝えたいことの全部を前に持ってこようと思って。

――1サビの“そうだ本当は僕を愛してみたい”や“ただありのまま咲いていたいな”といったフレーズは、新しい青春の始まりを予感させますね。2番以降はどんなイメージで書いたのですか?

山根 2番からはちょっと旅立った自分というか、俯瞰して世界を見ている自分を持ってくる構成にしました。特に2番の頭の“「自己肯定感」「自尊心」もう聞き飽きて”のところは、最近は色んなところで自己肯定感や自尊心を上げるのは良いこととされていますけど、それを上げることに必死になりすぎていると、上げられない自分はダメなんだっていう気持ちになってしまうと思うんですよ。別に自己肯定感が低くてもいいし、自尊心が低いからわかることもある。在りのままの自分を愛していけばいいじゃないか、ということをこの曲では言いたくて。そこからラスサビに繋がっていくのですが、この曲は私が初めて作る楽曲なので、自分が死ぬ最後の瞬間に、私のことを知っている人にこの曲が届いたらいいなと思って、今の等身大の私、在りのままの私を表現したという意味を込めて、最後の1行は“生きた証をここに残すよ”という言葉を選びました。

――先ほど高校時代の自分と今の自分の気持ちを表現したとおっしゃっていましたが、その両方を比べたときに、自分自身はどう変わったと感じていますか?

山根 高校生のときの自分は、あまり希望を持てなくて、誰かになりたくて、自分自身からずっと逃げたかったけど、でもどこかで私は私以外にはなれないことをわかっていて。そのうえで私は私として生きるのを辞めたかった。そういう葛藤みたいなものを1番の歌詞で表現しています。その後にある、2Aの“知らないことなんて無ければ幸せになれると思っていた 本当は違ってたな”というのが、今の目線の私の気持ちなんです。若いときは世の中のすべてのことを知りたかったけど、大人になった今は、自分らしい芯を持って楽しく生きていくためには、知らない方がいいこともたくさんあると思えるようになって。多分、自分に自信がなかったから、すべてのことを知りたかったと思うんですよ。今、私が、昔の自分に何かを伝えられるとしたら、「すべてのことを知らなくても幸せになれるよ」ということを伝えたくて、この歌詞を書きました。

――今の山根さんは、在りのままの自分を愛せていますか?

山根 はい。今、私は私のことが結構好きなんですよ。昔は本当に自分のことが好きではなくて、去年出したエッセイ(「山根綺のほんとのところ。」)でも「私は自分のことがあまり好きではありません」と書いていたくらいだったのですが、それこそYAYA RECORDSを始めてからこの1年、良いことも悪いことも含めて自分という人間にすごく向き合ってきたなかで、「私は何がしたいんだろう?」ということをファンのみんなにさらけ出したら、「どんなややちゃんでも好きだよ」と言ってくれる人がすごく多くて。それで「みんなが私のことを好きと言ってくれるのに、私が私のことを好きじゃなくてどうするんだ」と思って、そこから思考を変えるようになって、自分を好きになろうと思えるようになりました。できたこともできなかったことも全部自分の力になるし、完璧じゃなくても泥んこでもいい。そういう気持ちで生き始めてからは、すごく楽になりましたし、自分を好きになってきたので、本当にみんなの力は偉大です。

――もう1曲、「第5準備室」はヒロヒロヤさんが作曲、山根さんが作詞をされています。こちらは高校時代の青春が投影されているのかなと感じました。

山根 まさにその通りですね。その時代に仲良くしていた親友がいて、その友達との日々を思い出しながら書きました。その子は私にとって大きな存在で、今でも仲が良いんですけど、大人になって半年とか1年に一回くらいしか会えなくても、久々に会うとすぐあの頃の空気感に戻れるんですね。自分のことを理解して大切にしてくれる人は一生の宝物だと思うので、そんな友達への感謝と、みんなにもそういう風景があったのかなと思って、それを表現してみました。もしそういう思い出がなかったとしても、今からでも自分にとって大切な存在を作っていけば、10年20年先に大切な思い出になるよ、ということも伝えたかったです。その相手はもちろん私でもいいですし。

――なるほど。山根さんとファンの皆さんが今過ごしている時間も、それは青春にあたるわけですね。

山根 だと思います!学生時代に楽しい思い出があまりなかった人も、今、私と会っているから青春してるじゃん?って思っていて。年齢は関係なくて、今、青春していると思ったら青春だから、私と一緒に楽しんで生きていることが、未来の自分にとっての青春時代になってくれればいいなと思います。

――4月6日に横浜・1000CLUBで開催されるライブイベント“青春のはじまり”も、まさに山根さんとファンの皆さんの青春の始まりになるのかもしれません。

山根 その通りです!きっとこの日のライブが、私とあなたの新しい始まりになると思います。私は横浜出身で、「第5準備室」の歌詞に登場する風景も、このライブハウスに行く道にあるんですよ。毎日歩いていた場所にあるライブハウスなので、きっと色んな思いを持って歌うことができると思いますし、地元でのライブなので頑張ります!

――それ以降の活動に向けて、この先、YAYA RECORDSをどのように広げていきたいですか?それこそ「武道館を目指す」と掲げているわけですが。

山根 まずは今回初めて自分で楽曲を書いて、大変だったけどすごく楽しかったので、また自分で曲を書いて届けたいと思います。それともっとたくさんの人にYAYA RECORDSを知ってもらいたいので、六畳一間から少しずつ外に飛び出して行くときなのかなと思っていて。自分一人で武道館を埋めるという目標もそうですけど、色んなフェスにも出られるようになりたいですし、色んなところに自分の楽曲を届けられる機会を増やしていきたいです。何かの作品のタイアップも夢で、主題歌もいつかやりたいですし、いっぱいやりたいことがあるので、これからも頑張ります!

●リリース情報
山根 綺 1st EP
『青春のかなしみ』
2024年4月3日(水)配信リリース
(4月6日開催 発売記念ライブ『青春のはじまり』会場にてCD限定発売)

山根 綺、日本武道館ワンマンを目標に掲げ1st EP『青春のかなしみ』でアーティストデビュー!YouTubeの音楽チャンネル「YAYA RECORDS」、そして音楽に対する真っ直ぐな想いを語る。

各配信リンクはこちら

<収録曲>
1. のば/作詞・作曲:梶原パセリちゃん(NaNoMoRaL)
2. 雨色スコープ/作詞・作曲:れあい
3. わたしは知ってる/作詞・作曲:コヤマヒデカズ
4. 青春の始まりと悲しみ/作詞・作曲:山根 綺
5. 第5準備室/作詞:山根 綺 作曲:ヒロヒロヤ

●イベント情報
山根 綺1st EP『青春のかなしみ』発売記念ライブ
『青春のはじまり』
2024年4月6日(土)OPEN/START 17:00/17:30
会場:神奈川県 1000 CLUB

チケット一般発売中!詳しくはこちらをチェック。

関連リンク

山根 綺 事務所公式サイト
https://twitter.com/aoni_official

山根 綺 公式X
https://twitter.com/ayaMiNTgreen

YAYA RECORDS 公式X
https://twitter.com/YAYA_RECORDS

YAYA RECORDS 公式YouTube

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