巨人・則本昂大インタビュー

【自分から積極的に声かけ】

 巨人移籍1年目の則本昂大は5月13日の広島戦で、7回99球を投げて7奪三振、無失点の好投を披露。移籍後初勝利とはならなかったが、本人も「今年一番のピッチング」と手ごたえを口にした。

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 昨オフに海外FA権を行使し、一時はメジャー挑戦を視野に入れるも、楽天から巨人へと移籍。

13年間を過ごした"杜の都"に別れを告げ、巨人の一員として、2026年シーズンを送っている。その日々について、則本はこう語った。

「キャンプから恵まれた環境で、刺激的で充実した毎日を送れているように感じます。特にバッテリーを組む捕手の皆さんと話す機会が多いですね。先日も山瀬(慎之助)が本塁打を打った試合でハイタッチをしたり、僕のほうから若い選手たちに積極的に声をかけたりして、『一日でも早くチームに馴染めるように』との思いで過ごしてきました」

 新天地での日々をそう語る則本は、春季キャンプから順調に調整を続け、3年ぶりに先発投手として開幕を迎えた。

「毎試合ベンチに入るリリーフは、常にチームのなかで野球をしている感覚がありましたけど、先発は毎週1回しか試合がありません。(チームメイトと)休みの日が違うこともありますし、まだチームと距離があるような感覚はあるかもしれませんね。

 それでも2年間リリーフを経験したことで、再び先発として調整を続ける日々に、これまでにはなかった特別な思いや、『これまで以上にチャレンジしてみよう』という強い気持ちを抱くようになりました」

 先発投手としての決意を新たにして、巨人でまっさらなマウンドに上がる則本は、5試合に先発して0勝2敗と黒星が先行しているものの、防御率は2.70、QS率(クオリティ・スタート)は60%と安定した投球でチームを支えている。

「若い頃とは身体の状態も違いますし、あまり無茶はできませんが、今季はこれまでに取り組んでいなかったメニューも積極的に取り入れるようにしていて。チームが用意してくださっている練習に、これまで自分が取り組んできたメニューをところどころ加えながら調整を続けるようにしています。必要とあらば、新たな球種を磨いたりして、今後もさらに自身を高めていけたらと思っています」

【竹丸を見て思い出す、ルーキーで開幕投手を務めた2013年】

 則本は続けて、楽天のリリーフとして自己最多の56試合に登板した、昨シーズンとの違いをこう語った。

「昨年まではリリーフとして短いイニングを投げることが多く、どうしても速球とフォークボールに頼りがちでした。ですが、阿部(慎之助)監督から『スライダーをもう少し有効に使えるように。

自信を持って投げられるようになれば、投球の幅が広がるよ』とアドバイスをいただいて。

 阿部監督は捕手としての経験が豊富で、打者としても成功された方ですし、僕と対戦経験もある阿部監督の声がけは着眼点が的確です。それで大切なことを思い出したり、自分自身ではたどり着けなかったような答えに気づかされたりすることも多く、本当にありがたいなと感じています」

【インタビュー】則本昂大が語る巨人での「刺激的で充実した毎日」 憧れの田中将大、ルーキーの"タケちゃん"らと日本一へ
インタビューに答えた則本 photo by Runa Naito

 今季の巨人は、長年にわたって4番を務めていた岡本和真がトロント・ブルージェイズに移籍。2年ぶりの王座奪還に向けて、新戦力の台頭が欠かせない状況だ。

 そんななかで迎えた今季の開幕戦には、昨年のドラフト1位ルーキー・竹丸和幸を先発に起用。新人が開幕戦をまかされるのは1962年の城之内邦雄氏以来64年ぶりだったが、竹丸は昨シーズンの覇者である阪神に対して、6回3安打1失点と好投。球団史上初の新人開幕投手勝利を飾った。

「彼はどんな場面でも淡々と投げられる投手なので、特に細かいアドバイスなどはせず、『頑張れよ』とだけ声をかけました。ルーキー時代の僕は勝てませんでしたが、"タケちゃん(竹丸の愛称)"は開幕戦で勝利投手になれていますし、あらためてそのすごさを感じましたね」

 2012年のドラフト2位で楽天に入団した則本も、ルーキーだった2013年に開幕戦のマウンドに上がり、1984年の高野光(ヤクルト)以来29年ぶりの快挙として、当時の話題を呼んだ。

「僕の場合は、ケガ人が多かった当時のチーム事情や、春先のWBCに出場した田中将大投手の疲労や調整の遅れを考慮し、たまたまチャンスが巡ってきただけです。オープン戦の延長のような感覚で、『ポジションを勝ち取った』という印象はありませんでした。

 当時は、『正直、(高野光が登板した)29年前なんて、まだ生まれてないから知らんし......』と、本来の重圧を理解せずに開幕戦に臨んだことが、かえってよかったと思っていて。

対照的に、本質を知った2年目の開幕戦では、前年とは比べものにならないくらいに緊張していたことを覚えています」

【"ここぞ"という時に頼りになる先輩】

 則本はルーキーイヤーで15勝(8敗)、防御率3.34の成績を残して新人王のタイトルを獲得。24勝0敗1セーブを挙げた田中らとともに先発を支え、楽天を創設以来初のパ・リーグ優勝と日本一に導いた。

 その楽天と日本シリーズで熱戦を繰り広げた相手が、現在は則本と田中が在籍する巨人だった。

 昨シーズンから巨人でプレーする田中は、シーズン途中の離脱はあったものの、3勝(4敗)をマーク。9月30日には日米通算200勝を達成した。今季は円熟味を増した投球で、ここまですでに3勝(1敗)をマークするなど、チームに欠かせない存在となっている。

「僕がルーキーだった頃、"無双"という言葉がピッタリ当てはまるようなすさまじい投球で投手陣を支える姿が特に印象に残っています。何度も一緒に自主トレに参加させていただきましたが、"ここぞ"という時に頼りになる先輩でもあり、『いつか追いつき、追い越せたら』と思える憧れの存在です」

 そんな則本と田中の活躍なくして、2年ぶりのリーグ優勝と、14年間遠ざかる日本一達成は成し得ないと言っても過言ではないだろう。

「今一軍で戦っているメンバーだけではなく、二軍で着々と準備を進めていたり、ケガからの復帰を目指している選手もたくさんいるので、みんなで力を合わせて、リーグ優勝やその先にある日本一を目指して頑張っていきたいですね。僕自身も、一軍でプレーできる責任感や誇り、そして感謝の思いを持って一年間戦い抜きたいと思っています。

 ファンの皆さんの後押しは、僕ら選手の持っている以上の力を引き出してくれます。長いシーズンの途中には、きっとつらい時期もあると思いますが、どんな時も前向きな声援を送っていただけたらうれしいです」

 入団会見で、「まずはしっかり1年間ローテーションを守り、2桁勝利を挙げたい。

僕自身も日本一になりたいと思っているので、日本一のために全力でやりたい」と抱負を語っていた則本。現在はリフレッシュのために出場選手登録から外れているが、進化を続ける右腕の投球が、常勝球団に実りの秋をもたらすのか。その行方に注目したい。

(本文中敬称略)

【プロフィール】

■則本昂大(のりもと・たかひろ)

1990年12月17日生まれ、滋賀県出身。178cm/89kg。右投左打。投手。八幡商、三重中京大を経て2012年ドラフト2位で楽天に入団。1年目の2013年に開幕投手に抜てきされ、シーズンでは15勝を挙げて新人王のタイトルを獲得。2023年まで先発ひと筋だったが、24年はクローザーに転向。同オフに海外FA権を行使し、楽天から巨人へと移籍。再び先発を務めている。

昨季までのNPB通算成績は、373試合(先発259試合)で120勝99敗、48セーブ、防御率3.12。

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