政策金利「据え置き」決定…生活にどう影響?

 日銀の植田総裁は27日・28日の金融政策決定会合で、当面の政策金利について現在の0.75%で据え置くことを賛成多数で決定したと発表しました。「据え置き」の背景にあるのはイラン情勢です。

 今回の判断がどう生活に影響するのか?2012年からの5年間、政策金利決定に関わる委員を務めた経験のある木内登英氏への取材をもとに解説します。

木内登英:野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト

「景気が悪いのに物価が上がる」いまは政策金利のセオリーが通用しない!?

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 政策金利操作の役割は「景気の温度調節」。通常、以下のような動きをとります。

景気が良い・給料や物価も上昇→金利を上げて景気の過熱を冷やす(企業投資や住宅売買を抑制)
景気が冷え込んでいる→金利を下げて経済活動を刺激(企業や個人がお金を借りやすくする)

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 しかし、いまの日本ではこのセオリーが通用しません。景気の実感は決して良くはなく、実質賃金は4年連続マイナス。本来なら金利を下げて支えたいところですが、実際にはエネルギー価格の高騰などで物価だけが上がり続けています。

 景気が悪いから金利を下げるか、物価が高いから金利を上げるか…今回は「据え置き(様子見)」という選択がなされました。ただ、金融政策決定会合の委員会メンバー9人のうち「利上げ」を主張したメンバーは前回の1人から3人に増えています。

利下げ・利上げで「嬉しい人」と「つらい人」

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 金利の動きによって、「嬉しい人」「つらい人」ははっきりと分かれます。

【利下げ(低金利)が有利な人】 投資したい企業/住宅ローンを抱える人
→現役世代が多い傾向

【利上げ(高金利)が有利な人】 預貯金などすでに資産がある人
→高齢者が多い傾向(個人資産2000兆円の6割以上は60歳以上)

 次のパートでは、利上げ・利下げによる生活への影響を詳しくみていきます。

【影響①】住宅ローン返済額が数百万円単位で変わる?

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 例えば、4000万円を35年ローンで借りた場合を想定してみましょう。

【金利0.3%】(2021年ごろ)
毎月返済額:10.1万円
総返済額:4215万円

【金利1.0%】(現在の変動金利の平均)
毎月返済額:11.3万円
総返済額:4743万円

【金利1.3%】(将来?)
毎月返済額:11.9万円
総返済額:4981万円
(住宅金融支援機構HPより)

 金利が0.3%から1%に上がるだけで、総返済額が数百万円単位で跳ね上がることがわかります。住宅ローンを抱える人にとって、金利上昇は死活問題ではないでしょうか。

【影響②】日米の金利差が「円安→物価高」の悪循環を招く

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 一方で金利が低いと「為替」にも影響があり、円安の懸念が生じます。現在、日本の金利が0.75%であるのに対し、アメリカは3.75%。その差は実に3ポイントもあります。

 投資家や企業からすれば、利息が付かない円で持っているよりも、金利の高いドルで預けた方が資産は増える…そのため「円を売ってドルを買う」動きが加速し、歴史的な円安を招いているのです。

 円安になれば輸入コストが上がり、ガソリンや食品などの価格をさらに押し上げるという悪循環に。この物価高を抑えるためには、金利を上げて「円」の価値を高める必要がありますが、そうすると住宅ローン金利の上昇などを招きます。

まさに「あちらを立てればこちらが立たず」の状態なのです。

今後の鍵は「ホルムズ海峡」と「株価の動向」

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 日銀は今後どのように動くのか。注目すべき指標は「ホルムズ海峡」「日本の株価」の2つ。

【ホルムズ海峡】
 中東情勢が沈静化し、原油の輸送ルートである海峡が正常化すれば、原油価格は下がります。これが景気にとってプラスに働けば、日銀は「利上げ(1.5%程度を目指す動き)」へと舵を切りやすくなります。

【日本の株価】
 現在の株高は、円安による輸出企業の業績向上で底上げされている側面があります(27日の
日経平均株価:終値史上初の6万円超)

 木内氏は、「日経平均株価は大手企業だけの株価。

日本経済の状況をうつしているわけではない。ちょっとしたきっかけで暴落や混乱がありえる」と指摘。金融危機の状況になれば金利を下げざるを得ない可能性もあるといいます。

 金利の操作は経済を「安定」させるための手段。私たちの財布を守るためにも、日銀の判断や世界情勢の動きを、これまで以上に注視していく必要があります。

(2026年4月28日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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