井上尚弥と中谷潤人の東京ドーム決戦は、32戦全勝同士の無敗対決となる。デビュー以来無傷の32連勝は、日本人歴代最多記録。

勝者が単独最多に躍り出る。うち世界戦の戦績は、尚弥が27戦全勝(23KO)、中谷は10戦全勝(9KO)。2人の世界戦全ラウンドのデータを分析し、戦力を比較した。(勝田 成紀)

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 【1】尚弥、中谷ともに世界戦8割超のラウンドを支配

 世界戦でのKOラウンドを除いた採点対象ラウンドは、尚弥が153回。約82%にあたる125回でジャッジ3者の支持を集めている。ジャッジ2者以上に支持された“優勢”ラウンドは約9割(89%)の136回。さらに世界戦27試合の過半数となる15試合が、1ポイントも奪われていない完勝(1回KO勝利も含む)だ。一方、中谷は採点対象58回の約83%にあたる48回が「3―0」、約91%の53回が「3―0または2―1」と、尚弥をわずかに上回る。「0―3」のラウンドは3回のみだ。両者ともに世界戦でも相手を圧倒して白星を積み重ねており、データ上はほぼ互角と言える。

 【2】尚弥のダウン奪取は1試合あたり約1・67回

 尚弥が世界戦27試合で奪ったダウンは45回。1試合あたりのダウン奪取は約1・67回となる。

14年12月には世界戦28勝を誇るレジェンド、ナルバエス(アルゼンチン)を4度倒して2回KO勝ち。17年12月のボワイヨ(フランス)戦でも4度倒している。判定勝利でダウンを一度も奪えなかったのは、25年9月のアフマダリエフ(ウズベキスタン)戦と同12月のピカソ(メキシコ)戦の直近2試合のみ。中谷が世界戦10試合で奪ったダウンは14回で、1試合あたり1・4回。唯一判定決着だった23年9月のコルテス(メキシコ)戦でもボディーで3度のダウンを奪っている。

 【3】世界戦で中谷は一度もダウン経験なし

 尚弥は世界戦で2度のダウンを喫している。24年5月、東京ドームのルイス・ネリ(メキシコ)戦で初回に左フックを浴び、キャリア初のダウンを奪われた。25年5月、米ラスベガスでのラモン・カルデナス(米国)戦でも2回に左フックで尻餅をついた。ただ2試合ともダウンを喫したラウンド以外は相手に1ポイントも許さずTKO勝利を収めている。中谷のプロでのダウンは、6回戦時代の17年5月の工藤優雅(マナベ)戦でバランスを崩してグラブがキャンバスにタッチした一度のみ。世界戦ではダウンの経験はない。

 【記者の目】両者の世界戦全試合を分析してみて、意外な発見があった。

尚弥は2度のダウンシーン以外は、ほぼ危なげなく勝利を重ねてきた。超速の出入りで最善のポジションを選択し、攻防で相手を圧倒する。データもイメージ通りだった。しかし中谷は、世界戦のラウンド“支配率”において尚弥をわずかに上回った。ジャッジ3者が相手を支持したのは10試合でわずか3ラウンドのみ。想定以上の、驚異の数字だった。

 もちろん、対戦相手の実績は尚弥が圧倒的に上回る。データだけを比べればほぼ互角でも、尚弥の優位は揺るがないと言わざるを得ない。ただ尚弥は過去にパヤノ、ネリ、アフマダリエフとサウスポーの難敵を撃破してきたが、173センチの長身サウスポーとの対戦はデータにはない。ボクシング史上最高傑作のモンスターと、いまだ底を見せていないビッグバン。リング上で「引き出し」の最適解を選択できるかが、勝負のカギとなりそうだ。(ボクシング担当・勝田 成紀)

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