- 犬を飼っている高齢者は介護リスクが半減する
- ペットが安らぎや生きがいを与える
- 高齢者がペットを飼うメリット・デメリット
犬を飼っていると介護リスクが半減するという調査結果が出たことで、介護業界でもペットを飼うことへの効果が再度注目されています。
今回は高齢者がペットを飼うことで得られる効果について考えます。
犬を飼っている高齢者は介護リスクが半減する
ペットフード協会の「2020年(令和2年)全国犬猫飼育実態調査」によると、ペットを飼育している世帯の割合は、犬で11.85%、猫で9.6%となっています。また、2010年度の内閣府のアンケート調査では、約3分の1の家庭で何らかのペットを飼育していることが明らかになっています。
私の周囲をみてもペットがいる家庭は多いですし、介護サービスを利用する方の中にも犬や猫を飼っている人は多くいらっしゃいます。
国立環境研究所と東京都健康長寿医療センターは、日本の高齢者1万人以上を対象にした調査で、「犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護が必要になったり、亡くなったりするリスクが約半減することがわかった」と報告しました。
また、犬を飼うことと定期的な運動の相互作用で障がいリスクを減らすことも明らかにしています。
ペットが安らぎや生きがいを与える
内閣府が2019年8月に公表した動物愛護に関する世論調査によれば、「ペットを飼育することによって、飼い主または周囲の人の生活にどのような影響を与えるか」という質問に対して、次のような回答が上位を占めました。
- 生活に潤いや安らぎが生まれる:75.1%
- 慰めになる:50.4%
- 育てることが生きがいとなる:47.5%
- ペットを通じて人付き合いが深まる:43.3%
このように、ペット飼育者の多くが生活へのポジティブな影響を実感しています。
一方、「人間とペットが共生する社会の実現のために、行政がどのような取り組みに重点を置く必要があるか」という質問に対しては、次のような課題が浮き彫りになっています。
- 飼い主の迷惑行為に対する規制や指導を強める:54.4%
- ペットの愛護や正しい飼い方について、学校や社会教育の場で取り上げる:46.9%
- テレビ、新聞、インターネットなどでペットの愛護や正しい飼い方の重要性を訴える:40.7%
ペットの飼育に対する規制やルールづくりの必要性を感じている人が多いこともわかります。
高齢者がペットを飼うメリット・デメリット
メリット:ペットを通じた社会参加
ペットの世話をしたり、面倒を見たりすることで高齢者の生活にハリが出たり、日々の生活の中での役割を持つことができます。
これはリハビリテーションの視点から考えても非常に大切なことです。日常生活の中に役割を持ち、社会参加をすることは、その人自身の身体機能面をも向上させることができるからです。社会参加の手段としての「ペットの飼育」ともいえるでしょう。
また、可愛がっている動物とのスキンシップは「幸せホルモン」オキシトシンが分泌されるともされ、気持ちを穏やかにしてくれる効果が期待できます。
デメリット:迷惑行為や最後まで面倒を見きれない
世論調査の中にもありましたが、ペットを飼うことに関する迷惑行為を気にしている方が多くいるということがわかります。
また、高齢者は、施設入所や入院などでペットの寿命まで面倒を見きれず、残された動物の存在が問題となってしまうこともあります。
動物愛護管理法では、飼っている動物を寿命まで適切に飼育するよう求められています。
高齢者にとって「ペットを飼って社会的な役割を持つこと」「スキンシップの機会を持つこと」は非常に有意義だと考えられます。
動物好きな高齢者は、メリット・デメリットを検討したうえで、個々にあった方法でペットを飼ったり、動物に触れ合ってみたりしてはいかがでしょうか。
「介護✕在宅介護」記事一覧はこちら