オンラインによる要介護認定が実現!?

コロナ禍で進められたオンラインでの認定審査会

介護保険制度による公的な介護サービスを受けるために必要なのが要介護認定です。その審査は、各自治体に設置されている認定審査会が担っています。

認定審査会は、地域にいる介護の専門家などによって構成されており、個別のケースを審議して認定を出しています。

しかし、新型コロナの感染拡大によって、審査会を開催することが困難になったため、政府は一時的にオンライン会議などで審査会を開催することを認めていました。

厚労省では、こうしたオンラインによる認定審査会を、今後も継続していくべきではないかという議論が行われています。

オンラインの認定審査会を恒久化する背景

オンラインでの認定審査会を認める背景には、要介護認定者数の大幅な増加があります。

厚労省の資料によれば、2021年4月末時点での認定者数は684.2万人。介護保険制度が創設された2000年には218.2万人だったので、約466万人も増加したことになります。

要介護度の"認定審査会"がオンライン化!?メリットは多いが、...の画像はこちら >>
出典:『第101回社会保障審議会介護保険部会 資料』(厚生労働省)を基に作成 2022年12月20日更新

自治体によってはオンライン化などによって認定審査会を簡素化しないと、対応が間に合わないケースが頻発しているのです。

オンライン認定審査会のメリット

認定までにかかる日数を少なくする

要介護認定は原則的に30日以内に行うことになっていますが、実際には認定者数の増加によって、審査には平均36.2日もかかっています。

要介護度の"認定審査会"がオンライン化!?メリットは多いが、関係者からは慎重論も
申請から認定にかかる平均日数
出典:『第101回社会保障審議会介護保険部会 資料』(厚生労働省)を基に作成 2022年12月20日更新

対面で認定審査会を開催するのは時間やコストもかかります。一方、オンラインで開催すれば移動の時間などを節約できるため、より効率的な審査を行うことができます。

認定までに時間がかかるということは、それだけ要介護者がサービスを受けられるまでに時間を要することになります。こうした弊害を少しでも軽減できるようになるのです。

要介護認定審査会の簡素化

これまでも認定審査会を簡素化する議論は行われてきました。理由としては、原則30日以内での審査はほとんどできていなかったからです。

要介護認定は次のような流れで行われています。

  • 利用希望者からの申請
  • 医師による意見書・自宅訪問による判定調査
  • コンピューターによる一次判定
  • 介護認定審査会による二次判定
  • 要介護認定の結果
  • そのうち、最も時間を要するのが②の段階です。

    医師の意見書は平均15.8日、調査依頼から実施までの期間は平均9.4日かかっています。しかし、この段階を省略するのは、公平性・医学的妥当性を保つためにも現実的ではありません。

    それは専門家による二次判定でも同じことが言えます。しかし、オンラインで可能になれば、専門家たちの事務負担なども軽減できるうえ、スケジュール調整も簡素化できます。

    そのため、政府では2018年より介護認定審査会における審査の簡素化を認める制度を設けていました。

    しかし、2021年現在でこの制度を活用している自治体は44.5%にとどまっています。

    要介護度の"認定審査会"がオンライン化!?メリットは多いが、関係者からは慎重論も
    認定審査会の簡素化を行っている自治体の割合
    出典:『第101回社会保障審議会介護保険部会 資料』(厚生労働省)を基に作成 2022年12月20日更新

    オンライン化を成功に導くカギとは

    愛知県瀬戸市ではすでにオンライン化を実施

    愛知県瀬戸市では、介護認定審査会のオンライン化を2021年から実施しています。この事業ではさまざまなメリットが実証されています。

    一つには紙で配布していた資料の簡素化です。これまで一人の審査員に対して50~200枚にも及ぶ資料を印刷してレターパックで送付していましたが、PDFファイルで配布することで、送付のコストなどを軽減することに成功しています。

    また、オンラインにすることで会議時間そのものも15~30分ほど短縮できているそうです。

    地域の医師会と連携したシステムの構築も進めており、審査の精度を落とすことのない効率化を図っています。

    ほかの自治体からは慎重論もある

    メリットの大きい認定審査会のオンライン化ですが、各自治体からは慎重論もあります。

    その理由の一つに挙げられるのが、自治体のICT化の遅れです。いまだPCがきちんと整備されていない自治体も少なくありません。仮にオンライン化が進んだ場合、自治体による審査日数の格差などが生じかねません。

    こうした問題を解決するためには、すべての自治体に対して交付金を給付するなどの施策が必要になります。

    財源とのバランスもありますが、マイナンバーカードの普及などで医療や介護分野でもICT化が進んでおり、自治体のICT化は必要になることでしょう。

    瀬戸市の先進事例などを重ねて、自治体の負担を考慮したバランス良い整備を進めるためには、政府の舵取りがカギを握っています。

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