名護市辺野古沖で船2隻が相次いで転覆し、同志社国際高校(京都府)の女子生徒ら2人が亡くなった事故から16日で1カ月になる。
 死亡したのは「平和丸」に乗船していた2年生の武石知華さん(17)と、「不屈」を操縦していた船長の金井創さん(71)。

 武石さんの遺族が、インターネットの投稿サイト「note」に事故発生後の日々の心境をつづり、発信している。
 思いもよらぬ事故に直面した遺族の慟哭(どうこく)がひしひしと伝わってきて言葉が見つからない。あらためて哀悼の意を表したい。
 平和学習の場で、あってはならない事態が起きてしまったのは、なぜなのか。
 当日は波浪注意報が出ていた。出航判断は適切だったのか。干潮時の座礁を避けるため「外洋回り」ルートを通ったというが、その判断も問われる。
 安全管理体制に落ち度があったことは否定できない。
 2隻とも普段は市民団体のヘリ基地反対協議会が抗議行動のために運航していたものである。
 このため事故について一時、「抗議活動のために乗船していた」との誤情報が流れ、拡散されたこともあった。それは明確な誤りだ。
 2隻はこれまでも抗議行動以外に研究者や文化人、メディア関係者、大学のゼミ生らが「海上から辺野古の現実に触れる」ために利用している。
同志社国際高校の乗船も決して「抗議活動のため」ではなかった。
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 ネット上では、平和学習そのものを「偏向教育」「反日教育」と見なし、沖縄の取り組みを頭から否定するような主張も相次いでいる。
 修学旅行生を受け入れる県内の「教育民泊」を巡って、「宿泊先の思想が極端過ぎる」などと事実に基づかない批判も続いている。
 参政党の梅村みずほ参院議員は、沖縄北方特別委員会で、市民団体、民泊、美術館、その他がどういうふうに連携して活動しているのか、国が調査し平和学習を実施する学校に情報提供するよう求めた。
 思想調査をせよ、ということなのだろうか。極めて危険な発想だ。
 米軍統治下に形成された沖縄の反戦平和意識を「反日的」だとして敵視し、ネット上でバッシングを繰り返すのは分断を助長するだけで、何も生まれない。
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 辺野古の抗議行動も、沖縄における平和教育も、多くの課題を抱えているのは確かである。
 平和運動の現場から若い人たちが急速に離れている。安全保障環境が変化したことで、基地を容認する若者も増えた。
 沖縄の平和運動は、担い手の高齢化もあって影響力を失いつつある。
 今回の転覆事故を真摯(しんし)に受け止め、問題点を主体的に洗い直し、原因究明と再発防止に取り組まない限り、県民の理解は得られないだろう。

 転覆事故に正面から向き合うことなしに立て直しはできない。
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