ソニーグループ(以下、ソニー)が、エンタテインメントとAIを軸にした成長戦略をさらに加速させる。ソニーは8日、2026年度の経営方針および2025年度の業績に関する説明会を開催し、社長CEOの十時裕樹が、中期経営計画の最終年度に向けた重点テーマおよび今後の方向性について説明した。
アニメ事業の強化やAI活用、半導体分野での大型提携などを打ち出し、“エンタメ企業”としての色を一段と鮮明にした。

 説明会では、ソニーが掲げる長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の進捗を報告。テクノロジーを活用し、リアルとデジタルの双方で新たなエンターテインメント体験を創出しながら、IP価値を最大化していく方針を改めて示した。

 中でも成長領域として強調されたのがアニメだ。ソニーは昨年、バンダイナムコホールディングス(以下、バンダイナムコ)との戦略的業務提携を締結し、アニメ領域などにおける競争力を強化。制作からグローバル配信、ファンコミュニティ形成までをグループ横断で展開している。

 さらに、 アニプレックスとパートナー各社による『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の世界的ヒットにも言及。グローバル配給にも関わったソニーグループ傘下のアニメ配信サービス「Crunchyroll」の有料会員数が2026年3月末時点で2100万人を突破したことも明らかにした。

 さらに加速させるため、「クランチロールアニメアワード」では、Gaudiyとのパートナーシップのもと、MyAnimeListをファン投票のプラットフォームとして初導入したほか、今秋には各分野を牽引する企業が一堂に会する「クランチロール アニメ・フューチャー・フォーラム」を初開催し、アニメファンや日本のパブリッシャー・クリエイターとの関係強化を進めていく。

 AIについては、「グループの各事業にとって最重要テーマ」とし、バンダイナムコホールディングスと連携し、生成AIを含む最新技術を活用した実証的な取り組みの中で、映像制作の大幅な高速化や、一人あたりの生産性向上などの成果が確認されていると報告。一方で、十時氏は「AIはアーティストやクリエイターに取って代わるものではない。人のクリエイティビティが常に中心にあるべき」と強調した。


 今後は、同社が培ってきた技術と生成AIを融合させることで、クリエイターが感性をより自由に拡張できる制作環境を構築し、エンタテインメント領域における新たな成長機会につなげていく考えを示した。

 ゲーム事業を展開するPlayStationを率いるSIEの社長CEO西野秀明氏も登壇し、AI活用によるゲーム制作の進化を紹介。ソフトウェア開発や3Dモデリング、品質保証などでAIを導入し、クリエイターが“より豊かなゲーム体験”の創出に集中できる環境を整えていると説明した。

 また、半導体分野では、世界最大級の半導体受託製造企業である「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC)」と、次世代イメージセンサーの開発・製造に関する戦略的提携に向けて、法的拘束力を伴わない基本合意書(MOU)を締結したことも発表。ソニーが過半数の株式を保有し支配株主となる合弁会社の設立、および熊本県合志市に完成したソニーの新工場を活用した開発・生産ラインの構築に向けた検討を進めるとした。

 十時氏は最後に、AIインフラ需要や地政学リスクなど、世界的な変化が加速する中でも、「事業と人材の多様性がソニーの成長を支える」と語り、変化への適応力を今後の鍵に挙げた。

■ゲーム・音楽・映画分野について

 ゲーム&ネットワークサービス分野は、為替の影響やネットワークサービスの増収、自社制作以外のゲームソフトウェア販売増加を背景に、同分野として過去最高益を更新し、一時要因(Bungie, Inc.の無形資産等の減損)を除いたベースでは、45%の増益となった。

 音楽分野は、売上高が前年比15%増、営業利益が同25%増となり、営業利益は過去最高水準を記録した。音楽ストリーミング収入の拡大に加え、ライブ興行や物販収入の増加、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『国宝』のヒット、映像メディア事業の成長などが追い風となった。

 中でもストリーミング事業の伸長が大きく、ソニーは音楽制作分野で前年比9%増、音楽出版分野で同14%増の成長率を記録したと説明。SpotifyやApple Musicなどを中心としたサブスクリプション収益が、安定した成長エンジンになっているという。2026年度は『鬼滅の刃』ヒットの反動などで減益見通しとなるものの、ストリーミング売上の継続成長により、一時要因を除けば前年度と同等水準の利益を見込んでいる。


 映画分野は、劇場公開作品からの収入減少や、VFX・バーチャルプロダクション事業などを運営するPixomondoの資産減損および事業収束関連費用により減益となった。一方で、Crunchyrollの増収やテレビ番組制作の納入作品数増加などが下支えし、売上高はほぼ横ばいに。2026年度は、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(7月31日、日米同時公開)や『ジュマンジ:オープン・ワールド(原題)』(12月25日、全米公開)といった大型作品の公開を予定している。
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