岡本は、「受賞してから2日たったんですが、まったく現実味が湧いていません。一生湧かないんじゃないかなと思っています」と笑顔を見せつつ、「この映画をたくさんの人に観ていただけるきっかけになればうれしい」と呼びかけた。
また、“日本人初の女優賞”について聞かれた岡本は、「監督たちのもとに戻るまで、日本人初だということを知らなかった」と明かし、「その意味やプレッシャーは、正直まだあまり実感できていません。現実味がない、ということに尽きるんですが、皆さんが、うれしいとか、誇らしいと言ってくださることに、すごく感激しております」としみじみ語った。
一方、エフィラは日本語で「日本に来ることができて、とてもうれしいです」とあいさつ。「多緒さんと一緒に賞を受賞できて本当にラッキーでした」と喜びを語り、「カンヌで賞をもらった時は、監督が一緒に舞台に上がらなかったのが変だなと思っていたんです。やはりこの映画は監督の仕事の成果でもありますから」と濱口監督への敬意を口にした。
本作における“女優”が持つ意味について質問を受けた濱口監督は、「カンヌという大きな舞台で、素晴らしい作品が集まる中、ふたりの演技が評価されたというのはわれわれ全員にとっても大きな喜び」と語った。
「ふたりは演技も素晴らしいですが、人間性そのものが素晴らしいんです。映画のモデルになったふたりの人間性も表現されているんじゃないかなと感じていて。
濱口監督は、がん闘病中の演出家を演じた岡本の演技についても言及。「死というものを扱っていく上で、シーンが進むにつれて弱くなっていかなければならないものですが、弱く発声しても、それでも芯のある多緒さんの人間性というか、声の中に人間性が宿っている。そこに新しい発見があったような気がしています」と絶賛した。
また、自身の演出論について濱口監督は、「現場で俳優同士が何かを感じ合えば、それは必ず映像に記録されると思っている。だからこそ、俳優たちが互いに注意を向け合えるよう準備をしましたし、その結果、ちゃんと映っていたように思います」と、撮影現場で生まれる“生の感情”を大切にしていることを明かしていた。
本作は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの人生をかけて交わした20通の往復書簡(著:宮野真生子・磯野真穂)が原作。
会見で松田広子プロデューサーは、「女性ふたりの交流書簡という原作に出会いまして映画化したのですが、それを演じてくださったふたりが受賞されたということで、とてもうれしく思います」と紹介。
映画では、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長であるマリー=ルー・フォンテーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)と、日本人の演出家・森崎真理が、同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流が始まり、友情を超える絆を結ぶ物語となっている。
同じくプロデューサーのダヴィド・ゴキエ氏は「ふたりの女優さんがカンヌで賞を獲得されたということをとてもうれしく思っておりますし、誇りに思っております。
その結果、本作は、フランス、日本、ドイツ、ベルギーの合作映画となった。“日本映画”という枠組みについて問われた濱口監督は、「この映画は90%がフランスで撮影し、スタッフも90%フランス人なので。そもそも映画というのはどこの国の映画かというよりも、国際流通力が高いもの。単に日本映画、単にフランス映画というよりも、国際協力だからこそできた映画だと思っております」と、本作への思いを語っていた。
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