2026年4月14日、世界的な家電ブランドとして躍進を続けるハイセンスが、液晶テレビの次世代フラッグシップモデルをはじめとする2026年ラインアップの内覧会を都内で開催した。

 今回の発表における最大の焦点は、同社が「Origin(起源)」を自負する次世代画質技術「RGB MiniLED」の日本市場本格導入である。

グローバルでは2025年に、この技術を搭載した116インチ超大画面の製品が中国などで世界初で発売済み。日本市場に向けた製品の登場が待たれていた。かつては国内メーカーの牙城であった日本のテレビ市場において、今やシェア2位を射程圏内に捉えた同社の戦略と、液晶の限界に挑む最新技術の概要をご紹介しよう。

「RGB MiniLED」という構造的革新

 現在、液晶テレビのハイエンド市場では「MiniLEDバックライト」と「量子ドット」の組み合わせが主流となっている。しかし、ハイセンスがUXSシリーズで提示したのは、その先を行く「RGB MiniLED」という構造的革新だ。

 従来のMiniLEDは、LEDの光を量子ドットシートやカラーフィルターに通すことで三原色を作り出す。これに対し、RGB MiniLEDはバックライトそのものに赤(R)・緑(G)・青(B)の独立したMiniLEDチップを配置する。この方式の最大の利点は「究極の色彩表現」と「圧倒的な発光効率」にある。

 特筆すべきは、映画や放送業界の映像規格である「BT.2020」の色域カバー率だ。従来のハイエンドモデルが約75%程度に留まっていたのに対し、RGB UXSシリーズは100%のカバーを実現した。これは、制作側が意図した色を、現実世界の色とほぼ同等の精度で再現できることを意味する。

 また、発光効率の向上も目覚ましい。

赤・緑・青のうち、ある色の光を出す際、従来方式ではフィルターで他の色をカットするため光のロスが生じるが、RGB MiniLEDは「必要な色の光だけを直接放つ」ため、同じ消費電力であればより明るく、同じ明るさであればより省エネな駆動が可能となる。そして、この膨大なデータ量を制御するため、ハイセンスは画質処理エンジンとRGB制御エンジンを独立させた「ダブルAIエンジン」を搭載。2つのエンジンを駆動させることで、光と色の緻密な同時制御を可能にしている。

 さらに、RGB MiniLEDは目にやさしいのも特長。有害なブルーライトを、従来のソフトウェア方式と異なりハードウェアレベルで低減することができるのだ。画面が黄色っぽくなることなく鮮やかな色彩のまま快適に視聴できるわけだ。

 内覧会では、RGB UXS がMiniLEDの従来モデルや他社モデルと並べて展示されていたが、色の鮮やかさと微妙な階調表現が実に見事。見慣れた映像をこのテレビで見直してみたいと思わせてくれた。

圧倒的プレゼンスのフラッグシップ「RGB UXS」

 このRGB MiniLEDを搭載した、ハイセンスの技術の結晶である「RGB UXSシリーズ」は、100V型(市場想定税込み価格198万円)を筆頭に85V(132万円)、75V(59万4000円)、65V(48万4000円)の4サイズで展開。発売日は100Vと85Vが5月25日、75Vと65Vが6月15日だ。

 このシリーズには、RGB MiniLED以外にも、同社が2025年に世界第1位の出荷台数を記録した100インチ超の大画面市場のノウハウが、余すところなく注ぎ込まれている。パネルには低反射かつ深みのある黒を再現する「黒曜石パネル」を採用。

環境光の映り込みを抑えつつ、斜めから見ても色鮮やかな広視野角を確保している。

 そして、画質と並ぶRGB UXSの柱が、フランスのハイエンドオーディオブランド「Devialet(デビアレ)」との共同開発による音響システムだ。2007年創業のデビアレは、その精緻なエンジニアリングと独自特許で世界を驚かせてきたブランド。特に100V型と85V型には、デビアレの象徴的なスピーカー「ファントム」をリファレンスとした対向式ウーファーが搭載されている。

 対向配置されたウーファーが振動を打ち消し合うことで、テレビ筐体の揺れを抑えながら、空気を震わせるような重低音を実現。内覧会では、従来モデルとRGB 85UXSの比較試聴も行われたが、計22基ものスピーカーが織りなす6.2.2chサラウンドは、テレビとは思えないほど上質かつ重厚。もはや外部スピーカーを必要としないレベルに達していた。その品質の証として、画面右下に刻印されているのは、デビアレの中でも最高峰の品にのみ許される「Devialet Opera de Paris」のロゴだ。これは、世界的な歌劇場パリ・オペラ座が認めた極めて高いサウンドクオリティーであることを示しているという。

実力派ハイエンド「U8S」の進化

 RGB UXSと同じく5月25日に発売される「U8Sシリーズ」は、ヒットモデル「U8Rシリーズ」の正統進化版。MiniLEDのハイエンドモデルだ。サイズ展開は85V(49万5000円)/75V(36万3000円)/65V(27万5000円)/55V(23万1000円)。

 こちらはMiniLED Pro&Hi-QLED量子ドットを搭載し、輝度を従来比25%向上させるなど画質面でのスペックを強化。なかでも大きな武器は、国内最先端となる165Hzのリフレッシュレートである。動きの激しいスポーツ観戦や最新のゲーミング環境において、残像感のない滑らかな映像体験を提供する。

 また、U8Sシリーズもデビアレによる音響チューニング(TUNED BY DEVIALET)が施されており、2.1.2chの立体音響がリビングを包み込む。フラッグシップの技術を適正な価格で享受できる、極めて競争力の高いラインアップといえる。

生成AIが変える「テレビとの対話」

 両モデルの機能面での大きな進化は、独自OS「VIDAA(ヴィダー)」への生成AI搭載だ。これまでのスマートテレビは、単に動画アプリを選んだり、キーワードで検索したりする「道具」に過ぎなかった。しかし、新しいハイセンスのテレビは「会話ができるパートナー」へと変貌を遂げている。

 視聴中の映画について「この物語の背景を教えて」と問いかければ、AIエージェントがストーリーの解説や関連情報を提示してくれる。また、ユーザーの好みを深く理解し、膨大なコンテンツの中から「今、見るべき作品」を提案する。

 さらに、使っていない時のテレビの価値を高める「AIアートギャラリー」も興味深い。ルーブル美術館の所蔵品やゴッホ、モネの名画、さらには現代アートまで1000点以上の高品質な作品を表示可能なのだ。

大画面がリビングの壁面を彩る巨大なキャンバスとなり、空間の質を一変させる。

日本市場2位を見据えるハイセンスの躍進

 内覧会の冒頭、ハイセンスジャパンの山本一人副社長は、同社が国内シェア5%未満だった時代から現在までの躍進を振り返った。2025年には業界3位に食い込み、グループ会社であるレグザと合わせれば国内シェアの約半分を占めるまでに成長。そして2026年、単独でのシェア2位確保を明確な目標に掲げている。

 これまでフラッグシップ価格帯は国内メーカーの独壇場であり、海外ブランドが割って入ることは困難とされてきた。しかし山本氏は、「今回のRGB MiniLEDモデルについては、多くの主要店舗での展開が決まっている。店頭で実際にその画質を確認してもらえれば、必ず良さが伝わるはずだ」と自信をのぞかせた。

 アンバサダーには引き続き俳優の横浜流星さんを起用し、FIFAワールドカップ2026の公式スポンサーとしてスポーツマーケティングも強化する。技術的な「Origin」を武器に、ブランドイメージの向上と実利の両面で攻勢をかける構えだ。

 2026年の液晶テレビシーンは、間違いなくこの「RGB MiniLED」を中心に回ることになるだろう。液晶の可能性をさらに高めたハイセンスの挑戦は、私たちのリビングにどのような感動をもたらすのか。その答えは、間もなく店頭に並ぶ実機が証明してくれるはずだ。

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