100歳を越えて長生きする人は何が違うのか。医師の玉谷実智夫さんの書籍『医学的に正しい健康長寿365日』(自由国民社)より、ホルモンと長寿の関係について紹介する――。

■寿命を延ばす効果のある「ホルモン」
近年の研究で、寿命を延ばす効果があるホルモンが注目されています。
それはアディポネクチンというホルモンです。
100歳以上の人のアディポネクチンの血中濃度は、一般の人の2倍以上あることがわかっています。
マウスを遺伝子操作してアディポネクチンを増やすと、寿命が延びるという結果も出ています。
また脂肪を燃焼させる働きもあることから、別名「やせホルモン」とも言われています。まさに、いいことずくめの超善玉ホルモンです。
ただこのアディポネクチン、なにもしないでいると年を重ねるごとに減っていきます。
長寿生活をおくるためには、量を維持したいものですね。
そのためには、内臓脂肪を増やさないことが大切です。内臓脂肪が増えてしまうとアディポネクチンの分泌量が減ってしまうためです。
適度な有酸素運動や筋トレで、内臓脂肪をエネルギーとして使うようにしましょう。
また大豆や緑黄色野菜を摂ると、アディポネクチンの分泌を増やせると言われています。
日々の生活で、定期的に摂るようにしたいもの。
どちらも、特別なことではありません。
日々の生活習慣を、そのまま長寿生活にしていきましょう。
■「100歳以上の人」は約2倍の濃度
先にもお話しした通り、100歳以上の人に共通しているのが、アディポネクチンの血中濃度が高いこと。
一般の人の約2倍の濃度があることがわかっています。
そのアディポネクチンの働きは、主に次のようなものです。
1、脂肪を燃焼させる

2、血管を拡張・修復する

3、インスリンの効きをよくする
■別名「やせホルモン」
1については、アディポネクチンは別名「やせホルモン」ともいわれる通りで、肝臓や筋肉に働き掛けて、脂肪を減らしてくれます。メタボや生活習慣病が気になる人には嬉しい効果です。
なお内臓脂肪が増えると、アディポネクチンの量が減ってしまいます。つまり肥満の人はますますやせにくくなっていき、やせていくと、アディポネクチンが分泌しやすい体質になっていくのですね。
やせる好循環と、太る悪循環。アディポネクチンで、好循環を回していきましょう。

■「血管を修復する働き」もある
超善玉ホルモンと呼ばれるアディポネクチンには、血管を拡張したり修復する働きがあります。
血管が拡張すれば高血圧が改善しますし、痛んだ血管があれば修復されます。動脈硬化などのリスクも下がります。
なお、日本人の死因の第2位は、心疾患です。心疾患とは、心臓で起こる病気のことですが、その大部分に血管が関わっています。
特に心臓の筋肉への血流が悪くなると、酸素や栄養素が不足します。こうして起こるのが狭心症や心筋梗塞といった病気です。
アディポネクチンの血管拡張や修復の働きは、こうした心臓病を未然に防ぎ、改善してくれます。
長寿にメリットが大きいホルモン、アディポネクチン。糖尿病の予防にも役立ちます。
その理由は、糖を細胞に取り込む役割をもつ「インスリン」の効きをよくするからです。インスリンはいわば鍵のようなもので、細胞の入り口を開けるきっかけになります。

その効きがよくなれば糖が細胞内にスムーズに入りますので、血液中の濃度が下がるのです。
アディポネクチンが糖尿病の予防や改善に効果があるのは、こうした理由によります。
■長寿に直接の好影響がある
また、インスリンの効きがよくなることは、長寿に直接の好影響があります。
インスリンの量が少ないほど、身体は「栄養が少ない=飢餓状態に近づいている」と判断して、細胞のリサイクルや分解の指示を多く出すようになるためです。
古い細胞や病気の原因になる細胞が分解されるので、身体がリフレッシュする効果があるのです。
ちなみにこうした働きを行っているのが、サーチュインやオートファジーです。
身体の代謝はとても複雑ですが、知れば知るほど興味深いものです。
長寿のための生活習慣の幅を広げるための、ご参考になればと思います。
■「がんは遺伝する」の中身
俗に「がんは遺伝する」といいますね。とはいえ、実際に何が遺伝するかはご存じない人も多いのではないでしょうか。
一説には、遺伝するのはアディポネクチン分泌の機能だ、といわれています。
アディポネクチンとは、エネルギーの代謝に広くかかわっているホルモン。
脂肪を燃焼させたり、血管を修復、拡張する働きも持っています。
このアディポネクチンとがんの関係は明らかで、血液中のアディポネクチンの濃度が低い人は、がんになるリスクが高いことがわかっています。
またアディポネクチンにはがん細胞を細胞死させる働きがあることもわかってきました。要するに、アディポネクチンは腫瘍の増加を抑えるのです。
遺伝するのがアディポネクチン分泌の機能なら、対処の方法も明らかです。
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるのですが、肥満の人は逆に分泌が減ってしまいます。であれば、まずはカロリーや糖質を控えて、定期的に運動することが対策になります。
また緑黄色野菜や海藻、大豆などはアディポネクチンの分泌を増やすと言われていますので、日々の食事に取り入れるのがよいでしょう。
「遺伝」という言葉に、むやみに不安がることはありません。中身を知って、生活習慣で対処していきましょう。
■ストレスが多いと早く老ける
「苦労が多いと早く老ける」
そんな話を聞いたことがありませんか?
実はその言葉には、裏付けがあります。ストレスに対抗して分泌されるホルモンが、老化を促進することがあるからです。

たとえば、コルチゾールというホルモンは活性酸素を発生させるため、過剰になると身体をサビさせてしまう面があります。また筋肉の分解を促したり、免疫力を低下させる作用もあります。
こうしたことから、コルチゾールは「老化ホルモン」という、有り難くない別名も持っています。
もちろん、コルチゾールには大切な役割があります。ストレスに対抗する以外にも炎症を抑えたり、下がった血糖値を上げる働きなどです。
とはいえ、過剰になると老化のデメリットが出てきますから、ほどほどに付き合いたいもの。
ではどうするか? ということですが、コルチゾールに頼る場面を、できるだけ減らすことです。
血糖値が下がると分泌されるのですから、補食をして糖を補給するのはよい対策です。
炎症があると分泌されますから、腸内環境を整えたり、歯科医に定期的に通って歯茎をケアするのもよいでしょう。
ストレスが多いなら、解消する趣味を持ったり、瞑想するのもよい方法。自分なりの老化対策、生活習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。
■老化ホルモンを抑えるコツ
活性酸素を出したり、筋肉や骨の分解を促進するのが「老化ホルモン」とも言われるコルチゾール。

日常で分泌される機会が多いのは、血糖値が下がったときでしょう。
血糖値が下がると、まず身体は貯めておいたグリコーゲンを使います。
それがなくなるとコルチゾールを分泌してアミノ酸や乳酸を元にブドウ糖をつくり、血糖値を上げようとするのです。
ということは、血糖値を下げ過ぎることなく、一定の範囲内でコントロールできれば、老化ホルモンを抑えることができるということです。
まずは食生活を工夫して、糖新生が起きる回数や時間を減らすことが大切。ブドウ糖を少量ずつ、補食のような形で補給するのもよいでしょう。
あるいは難易度は上がりますが、エネルギー源として糖質に頼らず脂質メインに切り換えて、ケトン体を利用するという手もあります。
なおコーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは、コルチゾールの分泌を増やしますので、飲み過ぎるのは控えたいところ。
ただ、コルチゾールはストレスに対抗したり、炎症を抑えるなどの大事な働きももっています。
過剰なのがいけないのであって、適切な分泌は必要。上手く付き合い、若々しくいたいものです。

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玉谷 実智夫(たまたに・みちお)

医師・玉谷クリニック院長

1960年、兵庫県生まれ。京都大学薬学部、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、東大阪市立病院(現 東大阪市立総合病院)で研修した後、最先端医療を学ぶためアメリカ国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後、大阪大学で循環器・糖尿病・脳梗塞・老年病の研究に従事し、博士号を取得。最高権威の「ネイチャー メディシン」はじめ、医療ジャーナルに論文が数々掲載される。2008年に玉谷クリニックを開院。「東淀川区のかかりつけ医」として、高血圧・糖尿病・脂質異常症などで苦しむ10万人以上の患者を診断してきた。健康セミナーやテレビ、YouTubeなどでの発信も行うなど、地域の健康増進に努めている。著書に、『“世界一わかりやすい”最新糖尿病対策』(時事通信社、2021年)、『血糖値がどんどん下がる1分早歩き』(自由国民社、2022年)、『糖尿病の名医が「血糖値」よりも大切にしていること』(サンマーク出版、2022年)などがある。

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(医師・玉谷クリニック院長 玉谷 実智夫)
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