※本稿は、金間大介、酒井崇匡『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■増殖するマイルドワーク路線希望者たち
タイパ志向の若者たちが理想とする職場とはどういったものか。
図表1は、その問いにストレートに答えてくれる。株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「新入社員意識調査2025」の結果だ。
このデータの興味深い点は、10年前と比較しているところだ。2015年と2025年の若者に対して全く同じ質問をしているため、この10年間でどのように若者の気質が変化してきたかがわかる。
結果を一言で評すると、マイルドワーク路線が人気を博する一方、ハードワーク路線は衰退の一途を辿(たど)っている。例えば、1年前に比べ「お互いに助けあう」「お互いに個性を尊重する」という項目を選択した若者の割合は、1ポイント以上も上昇している。
他方、「アットホーム」「活気がある」は10ポイント以上の下落だ。「お互いに鍛えあう」も下がっており、このことから、切磋琢磨する熱い職場は今の若者に求められていないことが推測できる。
■「個性の尊重」とは「全員優勝」のこと
特にこの10年間で12ポイント以上も上昇した「個性の尊重」について、ぜひとも注目してほしい。
実際、先輩世代にあたる読者の皆さんも「個性を活かした仕事がしたい」と若者たちが言っていると聞いたことがあるだろう。新卒採用担当の人事部職員にとっては、耳タコなのではないかというレベルだ。
先輩世代の多くはこの言葉を、こう解釈するかもしれない。
「なるほど、今の若者はお互いの個を尊重することで、しっかりと自分を差別化したいんだな」「個を尊重することで、唯一無二の存在になりたいってことか」いいえ、残念ながら違います。それは痛い誤解です。
もちろんそのように考える若者だってたくさんいる。それは間違いない。ただし、それは少数派だ。大方の若者にとっての「個性の尊重」とは、「一切否定も批判もしない」ということだ。彼らなりの言葉を使うとこんな感じになる。
「いつだってありのままの自分でOK」
「今日も自分なりにがんばってる」
「みんなみんな、偉い、尊い」
おわかりだろうか。まさに「全員優勝」世代の発想が集約されている。
今の多くの若者にとって「個性の尊重」とは、「違いを意識して自分を伸ばす」のではなく、とにかくみんな勝ち、ということなのだ。
■「活気がある職場」は求めない
もう一つ、注目すべき点が「活気がある」の大幅下落だ。これは驚いた人も多いだろう。活気こそ若者の特徴とも言えるだろうに、1ポイント近くも下がるとは何事か。
その理解のヒントをくれるのが、「理想の上司像」の調査結果だ。多くの調査機関が類似の調査を実施しているが、ここではそのうち3つを取り上げよう。
1つ目は、先にも示した株式会社リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2025」だ(図表2)。図表1と同じように、1年前からの変化が実に興味深い。
さっそく結果を見てみると、上司に期待することとして、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が人気急上昇となっている。この「丁寧に教えてくれる上司が一番」という路線は、今後もたくさん出てくるので、ご覚悟を。
逆に、「仕事に情熱を持って取り組むこと」「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は大きく下落している。このうち、特に「仕事に情熱を持って取り組むこと」は、先の「活気がある職場」に通ずるところがある。
若者たちから見れば、「情熱を持った上司がいる職場」=「活気がある職場」ということになる。「情熱」も「活気」も、まとめてしまえば同じ「がんばる族」に分類されるというわけだ。
そしてその「がんばる」こと自体が、若者たちには忌避される傾向にあるのだ。だからこそ、図表2にある通り、「厳しい指導」はもちろんのこと、「周囲を引っ張るリーダーシップ」すら人気下落の対象となる。
■ありのままを受け入れて偉いと褒めてほしい
一旦、ここまでをまとめてみよう。
今の若者の大半は、上司に情熱やリーダーシップなど求めていないのだ。むしろ、そんなものがあったら、自分も仕事をがんばることを求められてしまう。
そんなことよりも、若者の個性を尊重し、つまりはありのままを受け入れて、偉いと褒めてくれる職場と上司が理想なのだ。
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金間 大介(かなま・だいすけ)
金沢大学融合研究域融合科学系教授、北海道医療大学客員教授
北海道生まれ。横浜国立大学大学院物理情報工学専攻(博士〈工学〉)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、東京農業大学准教授等を経て、2021年より現職。専門はイノベーション論、マーケティング論、モチベーション論等。若手人材や価値づくり人材の育成研究に精力を注ぐ。
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酒井 崇匡(さかい・たかまさ)
博報堂生活総合研究所 主席研究員
2005年、博報堂入社。マーケティングプランナーを経て、2012年より現職。ビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を開拓。長期時系列調査や定性調査などあらゆる生活者データを駆使した発見と洞察を行う。著書に『Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係』(光文社新書)、『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(宣伝会議)、『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。
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(金沢大学融合研究域融合科学系教授、北海道医療大学客員教授 金間 大介、博報堂生活総合研究所 主席研究員 酒井 崇匡)

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