■「自己投資=学校に通うこと」だけではない
4月も下旬になると桜も若葉に変わり、そろそろ新人研修を終えた新卒社員が現場に配属された頃だろう。同時に多くの民間企業では4月は人事異動の季節でもあり、新しい部署にもそろそろ慣れてきた人もいることだろう。
新入社員も新しい部署に異動した中堅社員もベテランも、新しい環境になじみ、組織で居場所を見つけると、次はどう成果を出していくかが大切だ。
そのとき、特に新しい環境にいる人たちには、様々な自己投資が重要になる。
今回は、会社員の自己投資について考えてみたい。
自己投資といえば、資格取得のための学校に通ったり、社会人入試で大学院に通ったりすることが挙げられる。こうした学校に行くには、学費だけでも100万円を超えるようなケースも少なくない。
もちろん、学校に通うことも自己投資だが、そんなに大きな金額をかけなくてもできる自己投資はたくさんある。
■「外付けモニター」も自己投資
例えば、会社から支給されたパソコンでリモートワークをしている人も多いと思うが、その仕事用パソコンに繋げる外付けモニターを買うことも有効な自己投資だ。
パソコンに外付けのモニターを繋いでいる人は意外に少ないので、その価値がわかりにくいかもしれないが、ノートパソコンに14インチくらいの小さなモニターを接続すると2画面が使えるようになる。
一方の画面ではプレゼン用のPowerPointを開き、もう一方の画面ではプレゼン資料に載せるExcelを開いて、両方の画面を使って作業すると、作業効率は劇的に上がる。
また作業効率が上がるだけではなく、両方の画面を見ながら作業できるため、ミスも減り、プレゼン資料の品質にも影響がある。
こうしたマルチモニターは画面サイズが大きくなればなるほど効果が大きい。
筆者の場合は、ノートパソコンに接続するQHDのモニター(普通のモニターの解像度は1920×1080ピクセルだがQHDは2560×1440ピクセルなので、文字も鮮明に見えて画面をより広く使える)を2台使っている。ノートPCではブラウザ、左画面の半分はメール、もう半分はスケジューラ、右画面の半分はslack、もう半分はファイルエクスプローラーを表示させている。
この状態では、5つのアプリケーションの情報を全て一度に見ることができる。
筆者の場合は、この環境が快適すぎて、外出先ではメールチェック程度のパソコン作業しかできなくなってしまった(実は、外出先用に300グラム程度の、ものすごく軽いモバイルモニターもカバンに入れてある)。
こうしたモニターは、24インチのFHDで安い物なら1万円ちょっとで買える。
歓送迎会で2次会まで行ったら無くなってしまう程度のコストだ。
また、オフィスで使われていたモニターは、中古で大量に出回っている。そのため、ヤフオクで24インチモニターが4台セットで送料込み1万5000円前後で売られていたりする。こうなると1枚あたり4000円くらいなので、同僚4人で軽く1回飲みにいくのと大差ない。
■「自分で買う」ことで得られるもの
こうした仕事の効率を上げるために必要な投資は、必ずしも会社が負担してくれるとは限らない。むしろ、負担してくれない場合のほうが多いかもしれない。
そして、ここが自己投資の分かれ目だ。
「モニターがあればなあ、でも会社は買ってくれないから仕方ないか」と諦めた人と、「モニターを会社は買ってくれないけど、必要だから買ってしまおう」と自己投資した人の10年後を想像してみてほしい。
イメージとしては、モニターを買わなかった人の、仕事の効率や質はあまり変わらず、あれこれとまだ会社に文句を言っているかもしれない。一方、モニターを自分で買った人は、仕事の効率や質が上がり、仕事の幅や責任が広がり、昇進して、部下がモニターを経費で買うことを認めているかもしれない。
実はこうした自己投資による効果は、投資による効果そのものに加えて、自己投資を行うというスタンスによって形成されるものの二つがある。
そして、「会社が買ってくれないから諦めよう」というスタンスは、「必要なんだから自分で買おう」というスタンスに、個々人の判断ですぐに変えることができる。なにしろそのコストは、外付けモニター程度ならせいぜい飲み会数回分に過ぎないのだから。
■リモートワークの「机とイス」は重要
必要なものは自分で買う、となれば、買うといいモノはたくさんある。
もちろんコストの問題はあるから、なんでも買えるわけではないが、少なくとも「会社はどう言うかなあ」と悩まずに自分で判断できることは、ものすごくストレスがない。
例えば、リモートワークしている人の場合は、机やイスにこだわると体への負担が全然違う。
専用の仕事デスクは落ち着くし、それなりに高いイスも、週に2日8時間座るとすれば、1年50週では400時間になるから、安いイスとの差はものすごく大きい。
そのほか仕事に関係する本や資料もそうだし、会社支給のパソコンとは別に自分のパソコンがあれば、生成系AIなども自由に使える。
最近では生成系AIを仕事でも使うことが多くなっているが、生成系AIを使えば、これまでは修得に何年もかかっていたようなプログラミングも簡単にできるようになった。
とはいっても一定の知識は必要になるが、プログラミングそのものもYouTubeや生成系AIでかなりの所まで学べるようになっている。
この時、必要なのはYouTubeの有料契約だ。無料版のYouTubeでは頻繁に広告が表示されるため勉強には全然向かない。月々1000円ちょっとの負担だが、これも自己投資だろう。
また、生成系AIについては、無料版でもかなりのことができるが、有料版を契約すると使える範囲の広さに驚く。
この1年くらいでの生成系AIの進歩はものすごいものがあって、ChatGPTだけでなく、Geminiも普通の用途なら無料版で十分な人も多いと思うが、私の場合にはClaudeの有料版を使っている。
■Excelを使いこなせることの価値
そして、スキルという面では意外に思うかもしれないが、Excelがある。
Excelくらい使えるよ、という人がほとんどだと思うが、実はExcelは奥が深く、なんとなく使えているだけで、使いこなせている人は意外に少ない。
例えば、ピボット集計やXLOOKUP関数が使える人は多くはないだろうし、AGGREGATE関数をフィルターを組み合わせて使っている人はかなり少ないだろう。
また、グラフのフォントや色を自由自在に操って綺麗に仕上げたり、追加料金なしで使えるプログラミング言語であるVBAを使える人もかなり少ないだろう。
■スクールに通ったほうが効率的
こうしたExcelのスキルを高めるには、やはりスクールに通った方が効率がいい。YouTubeでも個別のスキルは学べるが、ある程度体系的に学ぶには、自分が何が出来て、何が出来ていないのかを他人に判断してもらい、何をどの順番で学ぶべきかを整理してもらう必要があるからだ。
こうしたスキルにはExcelだけでなく、Office365に含まれていて追加料金なしで使えるAccessというデータベースソフトもある。
その操作方法は独特で、独習するには少しハードルが高いから、これもスクールに行く方が効率がいい。
語学ももちろんスキルとしての必要性は根強いものがあるが、少なくともリアルタイムの処理が不要なメールや、ある程度の翻訳機能が使えるようになったZoomなどを使った講演などを聞く分には、AIがかなりの範囲をカバーしてくれるようになっている。
最近では、翻訳機能が付いたスマートグラスも10万円程度で買えるようになっている。
■飲み会や懇親会での人脈形成
ガジェットやスキル以外にも大切なものがある。それは人脈と経験だ。
コロナ以降、会社の上司との飲み会や、部署単位での飲み会はすっかり減ったようだが、飲み会や懇親会はまだまだ根強く残っている。
飲み会はすっかり減ったとはいえ、取引先や業界関係者との飲み会にはできるだけ参加したほうがいいと思う。
ここでも、仕事の飲み会なのに会社がお金を出してくれないから行かない、という人もいるが、そうした飲み会に自費で参加している人もいるようだ。
それは、会社内の人間関係と違って、社外の人間関係は簡単には構築できないこと、構築できたとしても維持することが難しいことが背景にある。
飲み会や懇親会はそうした人脈形成にまだまだ欠かせない。
そして、すぐにその人脈が何かの役に立つということはあまりないが、数年後や十年後などに転職や、そのときの仕事で以前の人脈が意外なところで役立つことがある。
■学会参加や資格取得をする理系社員もいる
あまり一般的な話ではないので、知らない人も多いと思うが、理系職種の場合は、学会参加や資格取得が自己負担の場合もある。
メーカーなどの研究所や研究開発、製造現場では、大学時代の専門性の延長で仕事をしている場合も多く、学会に参加している会社員も結構いる。
そうした学会の会員になると毎年数万円の会費がかかり、遠方の学会に参加すると数万円の交通費、宿泊費がかかる。そうした費用を負担してくれる会社もあるが、負担してくれない会社もある。
こうした費用も自己投資の一部になる。
そして、そうした自己投資の結果として、企業から大学教員に職を変える人も結構いる。
また、学会への参加そのものも人脈形成の一部で、そうした学会での発表などをきっかけに、企業と大学の共同研究が始まることもある。
IT系の職種では、資格取得のための費用や時間も自己投資になる。IT系企業では、IPA(情報処理推進機構)の資格(プロジェクトマネジャやデータベーススペシャリストなど、様々なものがある)や、ベンダーの資格(たとえばオラクルマスターなど)の取得を奨励していることが多く、資格取得すれば一時金や手当で報いる会社も多いが、資格取得までは自己投資になる会社も多い。
資格と仕事の実力は別だ、という意見もあるが、仕事ができる人には、IPAの高度資格取得くらいはそこまで負担感を感じずに何個も持っているような人もいる。
■ジム通いも自己投資といえる
また、仕事関係だけではなく、例えば旅行に行く、美味しいものを食べるといった経験も自己投資だし、出張帰りで少し疲れている時に自費でグリーン車に乗ることや、ジムに通うといったコンディションを整えることも自己投資だ。
こうした様々な自己投資はすぐに成果が出るとは限らないし、そもそもコスパではかるようなものではないかもしれない。
しかし、今日のちょっとした自己投資が積み重なれば、時間が経てば経つほど、その差は大きくなるはずだ。
4月はもう終わろうとしているが、今年はこうした自己投資に気を留めてみてはどうだろうか。
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宗 健(そう・たけし)
麗澤大学工学部教授
博士(社会工学・筑波大学)・ITストラテジスト。1965年北九州市生まれ。九州工業大学機械工学科卒業後、リクルート入社。通信事業のエンジニア・マネジャ、ISIZE住宅情報・FoRent.jp編集長等を経て、リクルートフォレントインシュアを設立し代表取締役社長に就任。リクルート住まい研究所長、大東建託賃貸未来研究所長・AI-DXラボ所長を経て、23年4月より麗澤大学教授、AI・ビジネス研究センター長。専門分野は都市計画・組織マネジメント・システム開発。
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(麗澤大学工学部教授 宗 健)

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