■資産運用保険の売り込みが活発
2025年ぐらいから金利が上がり、保険の予定利率も上がってきたこともあり、退職金を狙った保険の売り込みが活発になってきた。
主に1000万円以上のまとまった現金がある、または退職金として受け取り予定の人に、その金額を一括で10年以上預けさせ、「せっかく貯金があるのだから、金利が高い今、保険に入って老後資金を作りましょう」というセールスをする。
それはいったいどんな保険商品なのか? 変額保険や外貨建保険がその主流だが、個人年金保険、終身保険、養老保険などにも保険料の一部で投資信託を購入して高利回りを目指すものがある。「変額個人年金保険」「変額終身保険」「変額有期保険」などと呼ばれるものがそれだ。
買い手となる一般の人の多くは、その複雑な仕組みがわからない。
株式や投資信託への投資は元本が変動するので危険だが、保険は「安定利回り」を目指しているので、それほどリスクはなく着実に資産が増えると思い込み、自身で損得計算をしないまま、退職金などの大切なお金を預けてしまう人もいるようだ。
この記事では、保険による資産運用とはどんなものか、どんな問題があるのかについて説明をしたい。
■保険なのに資産が増やせる?
資産運用保険は、先ほど述べたように「変額保険」「変額個人年金保険」などの名称で販売されている。
具体的には、契約者が支払った保険料で、国債や社債などの債券や株式等の投資信託を買い、資産を増やそうとするものだ。それも大きく分けて円建ての債券や株式で運用するものと外貨建て(米ドル建てなど)の債券や株式で運用するものがある。
運用方法によってリスクやリターンが異なり、一般的に、債券で運用するものは、リスクは低いがリターンも低い。株式で運用するものはリスクが高いが、リターンも高い。
それらは債券と株式を組み合わせることも可能でその場合は組み合わせ方により、リスクもリターンも異なってくる。債券に投資しても20年、30年と運用期間が長いので、短期の債券利回りよりよくなることが多い。
資産運用という観点から見れば、債券や株式で運用する投資信託を保険という形を使って運用するものだということができる。
建値についても、外貨建ての債券や株式は為替リスクがあるが、円建ての債券・株式には為替リスクはない。ここ数年の円安傾向で、円安をヘッジするため円建て保険が人気を集めているようだ。
■「保険で資産運用」は得ではない
資産運用保険は、投資信託に直接投資をすれば得られるリターンが保険会社を通すことにより余分な経費が掛かるので、投資という観点から見れば決してよくないことになる。
保険で運用することによりかかるコストは、図表1の通りである。これは、A社の保険:定額部分(保険会社の一般勘定で運用する部分)と変額部分(保険会社の特別勘定で運用する部分)がそれぞれ半々のハイブリッド保険を例にとったものである。
保険関連コストの総額は、次に示す通り投資額に対して年1.55%となる。
(2.9+0.2)%×0.5=1.55%/年
年利回りのうち保険会社に1.55%がとられるので、契約者が受け取る利回りはそれだけ低くなる。
年1.55%と聞いて、たいしたことないなと思った人もいるかもしれない。しかし、保険料の運用は20年から30年の長期で行われる。
■保険のコストも複利で増加
仮に、年5%の保険商品の利回りが年1.55%低下すると、20年間の運用成果(元本+運用益)が25%超目減りする。
例えば、1000万円を一時金で支払い、年5%の利回りで20年間運用すると「元本プラス運用益」は2653万円(100%)になる。ところが年1.55%利回りが低下すると1970万円(74.28%)になってしまうのだ。実額にするとなんと683万円(25%超)も目減りすることになる。
えっと驚かれたかもしれない。
なぜ、年率1.55%のコストが20年で683万円にもなるか?
数式で説明すると、次のようになる。
保険コストありなしの差=1-((1+(0.05-0.0155))/(1+0.05))^20=0.2572=25.72%
年率1.55%のコスト差が20年の複利計算で25.72%にもなるのだ。
これが、複利計算の恐ろしさだ。
そして、683万円の利益は契約者のものにならず、保険会社のものになるのだ。
それに加えて、保険金を受け取る際、受取条件を一時払いから年金払いに変更すると保険会社に手数料として受取金額の0.23%を支払わなければならない。年に100万円なら2300円となる。銀行の普通預金の利息とほぼ同額である。
断っておくが、この保険の保険関連コストが特別高いわけではない。これが一般的なレベルなのである。
■相続には保険ならではのメリット
保険という体裁をとることで、20年間で25%も目減りするのなら、直接債券や株式投資信託に投資したほうがいいということがお分かりいただけたと思う。
資産運用において年率1%とか2%という端数を軽く見てはいけない。それが長期間にわたると大きな違いになってしまう。
それでは、生命保険を活用するメリットはないのだろうか?
死亡保障等の何らかの保障が欲しい場合は、考える価値がある。特に終身保険は相続税対策にもなる。
具体的には、相続人(例えば子供)を被保険者にして(親の)終身保険を掛ければ、相続人の死亡保険金で「相続税」を支払うことが可能だ。
また、現金で相続するのではなく、その現金で(親の)保険料を支払い、相続人(子)を被保険者にして終身保険に加入する。すると、生命保険金には法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があるので、相続税の節税になる。
上記のように、生命保険にはさまざまな利用方法があるが、保障に絡めず純粋に資産を増やす目的の場合は、保険を利用するメリットはないといえる。
■投資口座よりは節税できるが…
参考までに付記しておくが、生命保険で資産運用をし保険金を一時金で受け取ると、「一時所得」とみなされ税務上有利になる。
具体的には次の通りだ。
保険に加入してから5年以上経って保険金を一時金でもらった場合は、一時所得となり、保険金から50万円を控除した金額の2分の1にしか税金がかからない。(課税方式は総合課税)
運用益が50万円未満の場合は保険金に対する税金はゼロ、50万円をいくらか超えてもゼロに近いので、投資信託を証券会社の特定口座で運用した場合に比べてメリットがあった(特定口座の場合は運用益に対し20.315%の税金がかかるのだ)。
ただし、現在、NISAで投資信託を運用すれば非課税(0%)なのでNISAにはかなわない。
もし、NISA枠(合計1800万円)を使い切ってそれ以上の資産運用を目指すというのなら検討の余地はないわけでない。
■資産運用するなら何がいいか
長期にしろ、短期にしろ、資産運用をして自分のお金を増やしたいのなら、保険ではなく、NISAを使って自分で直接オルカン(全世界株式)やS&P500で運用したほうがいい。
図表2は保険による資産運用と証券会社の特定口座による運用、NISAによる運用を比較した表である。保険コストなどの数字は図表1で挙げたハイブリッド保険とB社の変額年金保険の平均値をとっている。
この3つの方法に関するお勧めランキングは
第1位 NISAによる運用
第2位 特定口座による運用
第3位 保険による運用
となる。
■保険には3つのデメリットがある
保険による運用が最下位になる理由は次の通りだ。
1)コストがかかりすぎる
投資対象の投資信託の信託報酬手数料で差がつく。
どの方法でも運用対象商品は投資信託(債券または株式)であり、それには一定の信託手数料がかかる。
その結果、信託報酬手数料が最も低い(年0.1%以下)オルカンやS&P500を選ぶことができず、中位に属する商品(平均年0.45%程度)になってしまい、そこで信託報酬手数料の差がつく。その差は20年間で6%から7%にもなる。
さらに、保険コストがかかる。
既に述べた通り、これが最も本質的な問題で、資産運用のリターンを大きく下げている。その原因は、「保険コスト(保険関係費・運用関係費)」というよくわからない名称の保険会社の経費が乗っかることだ。
この保険コストが通常、年1.5%程度はかかるため、20年で元本プラス運用益の25%が目減りする。年1.5%の差が20年間でこれだけ大きな差になるのは、すでに説明した通りだ。
2)解約コストがかかるので、必要な時に資金を取り崩しにくい
契約後約10年以内は解約手数料(解約金額の0.6~6%程度)がかかるので、解約すると余分な費用が掛かる。元本割れする場合もある。
3)年金払いに変更すると保険会社から手数料を取られる
保険金を年金払いにすると保険会社に手数料(年金支払額の0.25%)を支払う必要がある。
つまり「保険コスト」がかかる上に何かしようとすると余分なコストがとられる構造になっている。
上記のデメリットがあるので、わざわざ「保険会社」を代理店のようにして投資信託を買うことはないのだ。
■NISAでオルカン、S&P500が手堅い
そんなことをするのであれば、同じ資金を使ってNISAでオルカンやS&P500で購入・運用し、資金が必要になったら、その資金の一部を取り崩してしていくほうが、リターンはいいし、解約手数料もかからないので、投資効率ははるかに良い。
また、同じ商品をNISA枠ではなく、通常の証券会社などの特定口座で運用しても、保険コストにより20年で25%も目減りすることはない(受取時に利益の20.315%の税金は取られる)。
「投資の敵は借金、税金、手数料」というが、NISAによる投資はこのうち「税金、手数料」から逃れることができるのだ。
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浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。
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(コンサルタント 浦上 登)

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