※本稿は、安井佑『大切な人が亡くなる前にあなたができる10のこと』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
■医師から「治りません」と告げられたら…
医師に「治療すれば治りますよ」「日常生活に戻れます」と言われたら、あなたの大切な人は、まだ人生の最終段階には至っていないということ。その場合、患者さんは治療に専念すればいいだけです。安心して治療を続けてください。
問題は、医師から「治りません」「日常生活には戻れません」と告げられたとき。
これは、残念ながら、あなたの大切な人の人生が最終段階に入ったサインです。
残された時間の中に「いい時間」をつくりたいのであれば、今すぐあなたが動き始めるべきタイミングということになります。
そしてこのとき、あなたに確認してほしいのが、大切な人の「人生の残り時間」の目安についてです。
この点について、ぜひ医師に確認してほしいと思います。
■細かい余命は医師にもわからない
ただ、残り時間についても、細かいことはやっぱり医師にもわかりません。
ある程度病気が進行しているのであれば、月単位でおおまかな検討がつけられることもあるので、「次の桜を見るのは難しいかもしれません」くらいのことは言ってもらえると思います。でも、わかるのはその程度です。
ですから、あなたが残り時間について聞くときは、「半年先」「1年先」など、時間を短いスパンに区切って聞くと、医師は答えやすいでしょう。
そしてこのとき同時に、残り時間の「自立度」も確認してほしいと思います。
自立度とは「自分がどれだけ思いどおりに動けるかという指標」です。これがわかると、大切な人がいつまで自分の脚で歩けるのか、介護が必要になるのはいつ頃か……ということが、なんとなくわかります。
つまり、残り時間であなたが何をしてあげられるかが、おぼろげに見えてくるのです。
まとめると、残り時間の目安について医師に聞く場合は、
「半年後(あるいは1年後)、あの人はどうなっていると思いますか? その頃、生きている可能性が高いですか? それとも、亡くなっている可能性が高いでしょうか?」
「もし生きているなら、その頃の自立度はどれくらいですか? どの程度の介護が必要になっていると思いますか?」
というふうに聞いてみてください。
医師はわかる範囲で、答えてくれると思います。
■「病のロードマップ」を知っておく
もうひとつ、家族であるあなたが知っておくと役に立つのが「病の軌跡」です。
これは、患者さんの病気の発症から亡くなるまでの間、自立度がどう変化するかを表した、残り時間のロードマップのようなもの。
実は、日本人の死因の多くを占める「がん」「内臓疾患」「老衰」については、この道のりに一定のパターンがあることがわかっています。
これを知っておくことで、「大切な人の人生の終わりが、そろそろ近づいてきた」ということや、「ここから先は、一人で生活するのは難しくて、周囲の支えがいるようになるんだな」ということが、なんとなく予想できるようになります。
つまり、あなたが大切な人と最後の時間を過ごすために行動を始めるべき「あるタイミング」がわかるようになるのです。
■「動けなくなってから」では手遅れ
【がんの場合】
次のグラフは、がんの「病の軌跡」です。
このグラフを見ると、治療中のがん患者さんの自立度は、意外にも高いことがわかります。
実は、抗がん剤などの治療中であっても、患者さんは概おおむねいつもどおりに動けることが多いです。
ところが、あるタイミングにくると、急激に自立度が低下して、患者さんは自力で動くことができなくなっていきます。
このあたりで治療の継続が難しくなります。ここが大切な人の人生の「最終段階」のスタートです。
がんの場合、そのタイミングは、医師から「もうこれ以上治療をしても効果がありません」と告げられたときと思っておくとわかりやすいのですが、ただしそこからはグラフのとおり、急激に自立度が落ちていきます。
ここからわかるのは、がんの場合、医師から「もうできる治療がありません」と告げられてから何かしようと思っても、患者さんはそこからたちまち動けなくなるので難しいということ。だから、本人は治療中にやりたいことをやったほうがいいし、家族もそれを応援するなり、一緒に行動するなりしたほうがいいということです。
ちなみに、抗がん剤治療をしている患者さんには、ファーストライン(第一選択治療)で、もっとも効果が期待できる薬が使われます。
その薬が効かなくなったり、副作用が強すぎて続けられなくなると、治療は次の選択(薬)へと移ります。それがセカンドライン(第二選択治療)です。そしてさらに効かなくなれば、サードライン(第三選択治療)へと移ります。
あなたが大切な人との「いい時間」をもう少し長くとりたいと考えるのであれば、セカンドライン、サードラインの治療に入ったときが「これからの時間をどう過ごすか」を真剣に考え始めるタイミングだと言えます。
■「持病の悪化→自立度低下」を繰り返す
【内臓疾患の場合】
では、あなたの大切な人が、心臓、肺、腎臓など、内臓に持病を抱えている場合はどうでしょう?
こちらも、次のグラフを見てください。
患者さんはある日、感染や不摂生などが引き金となって、持病が悪化【=急性増悪】します。入院治療で身体機能はある程度は回復しますが、完全には元に戻らず、自立度は以前よりやや低いところで落ち着きます。
内臓疾患の患者さんの場合、この「急性増悪→自立度低下」をたびたび繰り返します。
繰り返すたびに、段階的に自立度が低下していくのが特徴です。
ここでの「あるタイミング」のヒントは入院の頻度です。
たとえば、今までと違って、1年のうちに2度も3度も入院するようになったら、残り時間は限られているかもしれない、と考えてください。
大切な人がそんな段階に差し掛かったら、「いい時間」をつくるためにあなたが動き始める、待ったなしのタイミングです。
■サインは「食事量」と「体重」に出る
【老衰の場合】
老衰や認知症は、病気の進行や亡くなるタイミングがもっとも予想しづらい病気です。
老衰の方の症状や自立度はゆっくりと長期で低下していきます。それが10年以上続くこともありますので、介護施設にお世話をお願いしているご家庭も多いと思います。
そうした場合、「いい時間」を仕込むためのタイミングをとらえるためのヒントは食事量と体重です。
いままでと比べて明らかに食べる量が減ったとか、体重が急に落ちたとかの変化があったら、終幕の「開始時間」が来たのかもしれない、と考えてください。
夏の脱水症、冬のインフルエンザなど、ちょっとしたきっかけで急変はおきますが、その前に「いい時間」を仕込むためには、基礎体力の変化に気づくことが大事です。体力は体重か筋肉量と比例していると考えて、大切な人の身体に触れてもらうのが一番いいと思います。
■残り時間を知ることが、第一歩
医師に聞いたり、病の軌跡について知ったりすることで、「大切な人と一緒に過ごせる時間は、もうそれほど残されていない」と気づくのは、怖いことだと思います。
でも、一緒に過ごせる時間のリミットを知るからこそ、「今動かなきゃ、自分は後悔する」と身をもって感じることができます。最後に一緒に過ごせる時間をつくれるのは、「残り時間」を見つめる勇気を持った人だけなのです。
今が大切な人の人生の最終幕なのか、もしそうなら、エンディングまであとどれくらい時間は残されているのか。
その点をなんとなくでも知っておくだけで、あなたの行動はきっと変わります。
勇気を持って踏み出したその一歩が、大切な人とのこれからの過ごし方を変えるための大きな契機になると思います。
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安井 佑(やすい・ゆう)
医師、医療法人社団焔理事長
高校生の時に父の死をきっかけに医師を目指し、2005年東京大学医学部を卒業。初期臨床研修後、2007年より特定非営利活動法人ジャパンハートに所属し、ミャンマーで約2年間国際医療支援に従事。その後都内大学病院などの勤務を経て、2013年4月に「やまと診療所」を開業、2021年4月には「おうちにかえろう。病院」を開設。在宅医療専門の医師として、これまでに5000人以上の患者さんの最期の時間に携わる。関連書籍に『チーム・ブルーの挑戦 命と向き合う「やまと診療所」の物語』(大月書店、中島隆著)、『大切な人が亡くなる前にあなたができる10のこと』(かんき出版)がある。
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(医師、医療法人社団焔理事長 安井 佑)

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