■もしも我が子が避妊に失敗したら
ある日、突然、お子さんから「避妊に失敗したかもしれない」「妊娠して(させて)しまうかもしれない」と打ち明けられたら、どうでしょうか。親としては頭が真っ白になり、「うちの子に限って、そんなこと(性交渉)をするはずがない」と否定したくなったり、「なんていうことをしたんだ」と怒りたくなるかもしれません。
しかし、思春期以降の子が性に関心を持つのはごく自然な発育です。結婚するまで性交渉をしないというのも難しいでしょう。そして、親に打ち明けてくれたこと自体が、非常に勇気ある素晴らしい行動ですから、まずは話してくれたことをほめてあげてください。
日本の性教育は、「生理の機序」や「生命の誕生」といった生物学的な側面に偏りがちです。「妊娠に至る過程」については、学習指導要領の「はどめ規定」により取り扱わないことになっています。どうやって妊娠するかを教えないので、「自分も妊娠する(させる)リスクがあること」、「どうすれば妊娠を防げるか」といった予期せぬ妊娠から身を守るための実践的な教育がされていません。子どもたちは知識がないままリスクにさらされているので、予期せぬ妊娠のリスクに直面することがあるのも当然なのです。
■72時間以内なら「緊急避妊薬」を
もしもお子さんが親にも誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまった場合、どうすればいいかわからず、発見や対応が遅れてしまうことがあります。
日本では、妊娠22週以降は「人工妊娠中絶」が法律で認められていません。
ですから、もしもお子さんが相談してくれたら、叱るのではなくまず、前述のように「話してくれてありがとう」と伝えてあげることが大切なのです。
そのうえで、もしも性交渉から72時間以内であれば「緊急避妊薬によって妊娠のリスクを下げることができる」ということを教えてあげてください。それが、お子さんの心と体、そして未来を救う第一歩になります。
■どの世代でもある「予期せぬ妊娠」
さて、こうした予期せぬ妊娠は「若者だけの問題」と思われるかもしれません。ところが、意外に思われるかもしれませんが、避妊の失敗による予期せぬ妊娠は、決して10代、20代だけの問題ではなく、実は40代の女性の人工妊娠中絶の割合は10代と同じくらい多いのです。
「もう40代だからまさか妊娠しないだろうと油断していた」「生理も不順になってきたし、プレ更年期だと思っていたら妊娠だった」というケースはめずらしくありません。キャリアの中核を担っていたり、上のお子さんの教育費がかかる時期だったりと、ライフプラン上どうしても産むことができず、中絶という苦渋の決断をされる方もいます。
「緊急避妊薬は、自分には関係ない」と思われる方も少なくないかもしれません。けれども、いつだれに必要となるかはわからないのです。
■100%避妊する方法は存在しない
「コンドームを使っているから」「タイミングを計っているから」といって、100%の避妊は不可能で、避妊に失敗してしまうことはだれにでもありえます。よくある失敗のケースとして、以下のようなものがあります。
●コンドームの破損・脱落:コンドームを使っているから大丈夫だと思っていたけど、実は途中から着けていたり、サイズが合っていなかったり、爪で傷つけてしまったりして破れることがあります。
●外出し(腟外射精):中出ししなければ大丈夫だと思われていることが多く、避妊法として「腟外射精」している、というケースがありますが、射精前にも精子を含む分泌液(我慢汁)は出ており、腟外射精は医学的には避妊法ではありません。
●経口避妊薬の飲み忘れ:ピルなどの経口避妊薬による避妊は最も確実な避妊法のひとつですが、飲み忘れが多いと排卵してしまうことがあるため、妊娠してしまったというケースもあります。
●安全日:女性の排卵日は、ストレスや体調で簡単にズレます。「生理直後だから避妊しなくても安全」ということはありません。
どの世代であっても、性交渉がある以上、予期せぬ妊娠は起こり得るのです。
■緊急避妊薬は婦人科または薬局で
万が一、避妊に失敗したときに、妊娠を回避するための最終手段が「緊急避妊薬(アフターピル)」を飲むことです。緊急避妊薬は「レボノルゲストレル」という黄体ホルモン剤。この薬を飲むことで、排卵を遅らせたり、受精卵が子宮内膜に着床するのを防いだりする効果があります。
緊急避妊薬は、婦人科を受診するか、取り扱っている薬局で購入することで飲むことができます。婦人科を受診した場合も、緊急避妊薬の処方だけであれば内診は不要で、問診のみで処方されることがほとんどです。保険適用外(自由診療)となるため、費用はクリニックによって異なりますが、概ね1万円~1万5000円程度。
日曜や祝日で近くの婦人科がしまっている場合、婦人科受診に抵抗がある場合は薬局で購入することも可能です。ただし、すべての薬局で買えるわけではありません。緊急避妊薬を処方するための研修を受けた薬剤師がいること、プライバシーの確保ができることなどの取り扱い要件があるため、まだ一部の薬局に限られています。
最近は緊急避妊薬をオンライン販売しているところもありますが、海外製の「偽造薬」を安価で売っている悪質なサイトがあったり、郵送の場合は届くまでの時間がかかったりするので注意が必要です。
■妊娠阻止率は約80~85%程度
なお、緊急避妊薬は素晴らしい薬ですが、万能ではありません。緊急避妊薬は「性交渉後、72時間(3日)以内」に内服する必要があります。早ければ早いほど効果が高いため、失敗に気づいたら早めに内服するのがベストです。ただし、72時間以内に飲んだとしても妊娠阻止率は約80~85%で、100%防げるわけではありません。
そして、「緊急避妊薬を飲んだからもう中出ししても大丈夫」は大きな誤解で、むしろ危険な行為です。緊急避妊薬はあくまで「その1回の失敗」に対する救済措置。
また、緊急避妊薬は、あくまで「妊娠を防ぐための方法」であって、妊娠してしまった場合に中絶するための方法ではありません。望まない妊娠をしてしまった場合は、早めに婦人科で相談しましょう。
■知識はいざというときの「お守り」
こうした性や避妊に関する知識は、普段の生活ではなかなか話題にしづらいかもしれません。しかし、男女を問わず、人として、そして親として知っておくべき「命と人生を守るための教養」です。
特に男性のみなさんには「妊娠の問題は女性まかせにするものではなく、二人の問題である」という前提のもと、いざというときに「アフターピルをもらいに一緒に病院に行こう」と言える知識と姿勢を持っていただければと願っています。
そして、お子さんがいるなら、「もしものときは、性交渉から72時間以内に飲めば妊娠を防げる薬があること」「ただし、確実に防げるわけではないから普段から確実に避妊することが大事であること」「何かあったら、絶対に怒らないからすぐに相談してほしいこと」を、何かの折に伝えてあげてください。そういう話はしづらいと感じるかもしれませんが、それにより、いざというときに大切なお子さんが救われます。
最後に、もし不安なことや疑問があれば一人で悩まず、お近くの産婦人科医や薬局の薬剤師を頼ってください。私たちは、みなさんの人生と健康を守るためのサポーターですから。
----------
稲葉 可奈子(いなば・かなこ)
産婦人科医
産婦人科専門医・医学博士。
----------
(産婦人科医 稲葉 可奈子)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
