脳科学者の中野信子先生が子どもの「感情のコントロール」について教えます。
■「高学歴親は要注意!「我慢」「忍耐」「謙虚さ」が大切なワケ」とは?
高学歴で、優等生で、成功体験のある親には共通する傾向があります。
それは、自分がたどった道を子どもにも歩ませたいと思うこと。「努力と才能でここまできた」と自負されている方はなおさら、「子どもの才能を伸ばしたい」「才能があれば、将来、成功できるに違いない」と思って(焦って?)いないでしょうか。けれど、才能だけで成功できるかというと、世の中、そう単純なものではありません。それは、親御さん自身が経験済みだと思います。
イタリアのある研究チームが発表した「才能vs.運~成功と失敗におけるランダム性の役割」という研究があります。ここでわかったことは、「最も成功した人は、“最も才能が高い人”ではなく、平均より少し上の能力を持ち、なおかつ“『運』に恵まれた人”」、ということです。才能の分布と成功の分布は一致しないのです。この研究は2022年にイグノーベル賞を受賞しました。
この研究から見えてきたのは、人生における「運」という要素の大きさです。運そのものは人間にはどうにもできませんが、「運を受け取る準備」はできます。
運を雨に例えてみましょう。雨がどこに降るかはわからないけれど、降っている場所に移動することはできます。
また、たまたま雨が降ってきたときに、手で受け止めるのか、コップやバケツを用意してあるのかで、集められる水の量は変わります。さらに、情報収集能力を高めれば、次に雨が降る場所や時期を前もって知ることが可能です。
実は、こうした行動や準備ができるかどうかは、遅延報酬の力、我慢強さや忍耐力があるか、が関係しています。目先の楽さだけを選ばずに、少し先の可能性に備える姿勢です。準備をしていない人は、せっかくのチャンス(運)が目の前にやってきても気づかないか、気づいてもつかめないでしょう。
さらに言えば、「謙虚さ」も重要なポイントです。自分が成功できたのは、いい上司に出会えたから、声をかけてくれた仲間がいたから、優秀な部下に恵まれたから。そう思える人は、きっと次もまた誰かが助けてくれます。
親としてできることは、自分の歩んできた道を示すだけでなく、「チャンスはいたるところにある」「そのときに動ける準備をしよう」「いつも感謝を忘れずに」などと伝えることです。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

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中野 信子(なかの・のぶこ)

脳科学者、医学博士、認知科学者

東京都生まれ。脳科学者、医学博士。
東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『毒親』(ポプラ社)、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)、『エレガントな毒の吐き方』(日経BP)、『脳科学で解き明かすあの人の頭のなか』(プレジデント社)など。

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(脳科学者、医学博士、認知科学者 中野 信子 構成=大島七々三 イラストレーション=深川 優)
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