便秘を解消するにはどうすればいいのか。順天堂大学の小林弘幸特任教授は「腸内環境を整えるために発酵食品をとってほしい。
ヨーグルトが定番だが、別の食品を加えることも効果的だ。便秘外来を訪れる患者には3つのアドバイスをしている」という――。
※本稿は、小林弘幸『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。
■腸内環境を整える「ヨーグルト+意外な食品」
腸内の善玉菌を優勢にする食生活のコツ。その最大のキーワードは、「発酵食品」です。なぜなら、発酵食品は、製造の過程で文字どおり「発酵」させています。発酵の主役こそ、乳酸菌だからです。
腸内に入った乳酸菌は、善玉菌のエサになったり、悪玉菌の繁殖を抑えるために働いたりしてくれます。
発酵食品といえば、まず思いつくのはヨーグルトですよね。「(細菌が)生きたまま腸に届く」などというキャッチフレーズの商品も販売されていますが、まさに腸に乳酸菌が届きやすいことをアピールしているわけです。
ただ、ヨーグルトは商品によって乳酸菌に違いがあるため、相性があります。まずは半月から1カ月程度に区切っていろいろ試してみて、自分のおなかの状態にもっとも合った商品を探すといいでしょう。

また、ヨーグルトと一緒にはちみつやオリゴ糖、大根おろし、バナナなどをとるとベターです。私は「大根おろしヨーグルト」をおすすめしています。意外でしょうが、そこにはちみつを加えると食べやすくなるので、ぜひ試してみてください。
発酵食品はほかにも、納豆やみそ、しょうゆ、ぬか漬けやキムチなどの漬け物、チーズなどがあります。どれも積極的に食べるといいでしょう。
■あなたに合う・合わない食物繊維がある
もうひとつ大切な食品は、食物繊維です。食物繊維は腸の動きを助け、排便をスムーズにすることで、腸内環境を整えるための重要な働きをします。
食物繊維には、水に溶けやすい水溶性と、溶けにくい不溶性があり、どちらも大切な役割があります。
水溶性食物繊維は、便の水分を増やし、軟らかく、排出しやすくします。善玉菌のエサにもなります。多く含まれている食材は、オクラ、里いも、なめこなどの「ネバネバ系」の食べ物や、そば、押し麦、にんじんなどです。
不溶性食物繊維は、水分を含んで膨らみ、便を大きくすることで腸の動きを活発にしてくれます。
豊富に含んでいる代表的な食材は、バナナ、ごぼう、さつまいも、豆類、玄米などです。
基本的には、両方をバランスよくとるのがいいでしょう。ただし、便秘がちの人が不溶性を食べすぎると、ガスが出すぎたり、おなかが張ったりする場合もあります。その場合は、まず水溶性からとるようにしてみてください。
■日本人の長生きのヒミツは腸内細菌にあり
個人の食生活は、食文化によっても影響を受けます。その人の好みだけでなく、国や地域、民族や宗教によってもある程度傾向があります。
日本人の食生活は、明治以降、洋食の影響が強くなり、戦後は主食である米の代わりに小麦を食べる人も増えています。ただ、それでも伝統的な食文化がまったくなくなったわけではありません。長く海外旅行に出れば、普段あまり意識していなかった和食が妙に恋しくなったりしますよね。
そんな私たち日本人に特有の腸内細菌の環境があるという、興味深い研究があります。日本は世界でもっとも平均寿命の長い国のひとつで、肥満が少ないことでも知られています。日本人の腸内細菌がどうなっているのかが詳細にわかれば、より健康な腸を作るヒントが得られるかもしれませんよね。

東京大学の服部正平(はっとりまさひら)名誉教授らの研究によると、日本と中国、アメリカ、ヨーロッパ各国など12の国で人間の腸内細菌のデータを比較したところ、同じ国の人の腸内環境はそれぞれ似ていること、そして日本人が持っている特徴があることもわかったといいます。
■日本人は90%、ほかの国では15%以下
日本人の腸内細菌には、こんな特徴があるそうです。
① ビフィズス菌やブラウチアなどが優勢で、古細菌が少ない

② 炭水化物やアミノ酸代謝の機能が豊富な一方、細胞運動性や複製・修復機能が少ない

③ ほかの国ではおもにメタン生成に消費される水素が、日本人ではおもに酢酸生成に消費される

④ 海苔やワカメを分解する酵素遺伝子を約90%の日本人が持っているのに対して、ほかの国では15%以下

これらの研究成果からわかるのは、国という集団で分けた場合、腸内細菌には明らかな特徴があること、そして、おそらく日本人が長寿であることの理由を日本人に特有のデータから求めることで、より強化することができるのではないか、という点でしょう。
日本人が食べてきたさまざまな伝統食を見直し、現代を生きる私たちがそれらを積極的に取り入れていくことも、腸内細菌を豊かにし、長生きするためのいい方法になりそうです。
■便秘は「不快」ではなく「損失」だ
アメリカの研究データによると、慢性便秘症に悩む患者は、そうではない人よりもQOL(生活の質)が相対的に低く、日常活動性の障害率や労働生産性の低下率も格段に高くなっています。
毎日不快な症状を抱えていることで自律神経も乱れてしまい、人生のパフォーマンスそのものが低下してしまっていると考えられます。
便は毎日出るのが理想ですが、2~3日に1回でも大丈夫です。ただし、3日以上出ない状況が続くなら便秘です。
私の所属している順天堂大学医学部附属順天堂医院では、日本で初めての「便秘外来」を開設しています。便秘に悩む患者さんは非常に多く、受診までには年単位でお待ちいただかなければならない状況が続いています。患者さんの中心層は、女性は20~30代、男性は50代以上です。
そこで、ここでは私たちが多くの患者さんに共通してアドバイスしている内容を3点、簡単にまとめてみました。
まずは自分に合っていそうなもの、やりやすそうなものから始めてみるといいでしょう。
■朝、スプーン1杯のオリーブオイルを
まずは、「腸もみ」です。便秘は便が腸に滞留してしまっている症状ですから、体の上から直接刺激して、腸の機能を上げてみましょう。
腸もみは1回3分、朝晩の2回だけで結構です。食事の直後を避け、腸の四隅を刺激します。
次に、併せて行ないたいのが「腸活ストレッチ」です。本来なら排泄機能が高まるはずの朝の時間帯に、ひねりを入れた運動や腰を回すといった、腸に刺激を与えるストレッチをします。
そして、最後は便を出しやすくする食品をとること。効果的なのは、オリーブオイルなどのオイル類です。
毎朝起きたあと、スプーン1杯程度をめどにとってみましょう。オイル単体でとるのが苦手な方は、サラダにかければ食物繊維も一緒にとれて一石二鳥です。
また、私のおすすめは「はちみつとオリーブオイルをかけた焼きりんご」。
りんごは水溶性食物繊維のペクチンが豊富ですし、加熱することで、りんごの皮に含まれるペクチンの量と吸収率がさらにアップします。
気になる方は、ぜひレシピを検索してみてください。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)

順天堂大学医学部特任教授

1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部特任教授 小林 弘幸)
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