■今夏も40℃以上「酷暑日」観測の見込み
2007年から日最高気温が35℃以上の日を「猛暑日」と呼ぶこととなったが、近年では最高気温40℃以上がそうめずらしくもなくなったのを踏まえ、本年4月に気象庁は最高気温40℃以上の日の名称について「酷暑日」と決定している。
今年の夏も暑さが厳しくなると予想されており、日本気象協会によると、2026年は全国の延べ7~14地点で40℃以上の「酷暑日」が観測される見込みという。昨年2025年ほどではないものの、近年の記録的な高温に次ぐレベルの暑さになる可能性があるという。
そこで、今回は、これまでの「暑さ」のデータを振り返り、気持ちの面を含め、酷暑克服への足がかりとしたい。
ひとびとが関心を持つのは、まず、日本で最も高い気温(日本最高気温)は何度であり、その温度がどこで発生したかである。
■2025年夏の記録的なグラフ
日本最高気温を記録した地域とその時の最高気温を図表1に示した。データは気象庁の歴代全国ランキング(最高気温の高いほうから)から再構成した。
図の対象年次に至るまでの日本最高気温は1933(昭和8)年7月25日に記録した山形県山形市の40.8度だった。この山形市の記録が破られたのは74年後の2007年8月16日のこと。すなわち、岐阜県多治見市で40.9度を記録したのである。
日本最高気温を記録すると暑くなりそうな日のテレビ報道ではその地域の代表地点が登場することとなる。例えば、多治見市では、夏の暑い日に多治見駅前をウロウロしていると、テレビのインタビューを受ける確率が高いと言われていた。さらに、近くの企業が「最も暑い所に本社がある東証一部上場企業」などとして有名になるケースも出てくる(多治見市に本社があるスーパーマーケットやホームセンターを運営する「バロー」が実例)。
少し前の記憶では、多治見ではなく、熊谷がこうした報道の定番取材場所となっていた。
■日本最高気温の破格的な上昇
2025年7月30日に丹波市(柏原)が41.2度の日本最高気温を叩きだしたが、すぐ後の8月5日には伊勢崎における41.8度の日本最高気温に記録を破られたので報道の集中するターゲットにはなりそこねたようだ。
丹波市には雨水を日本海側と瀬戸内海側に分ける中央分水界の中でわずか95mと本州一標高が低いエリアがあり、記録にかけて「最低のまちが最高だ!」というキャンペーンを行っていたが、同市観光協会は「せっかくの話題性でしたが、6日天下になりました」と肩を落としたそうだ(スポニチ2025.8.6)。
しかし、最近は温暖化の影響が著しいため、伊勢崎の記録も今年には破られ、新しい最頻取材地点が生じる可能性も高い。
■「夜の日本最高気温」記録1位は新潟
以上は最高気温の過去最高記録の推移についてであるが、参考に、あまり取り上げられないが、最低気温の過去最高記録、すなわち夜の日本最高気温の推移を図表2に掲げた。昼の日本最高気温と異なって日本海側が多い。現在のレコードは2023年8月10日に記録した糸魚川(新潟)の31.4度である。
図表1、2のようにグラフで推移を追うことにより、はじめて、はっきり理解できることがある。すなわち伊勢崎の日本最高気温や糸魚川の夜の日本最高気温がそれまでの推移の中では破格的に高かったことである。
■正真正銘日本一暑い地域はどこか
日本最高気温が記録されたときには、その理由として、フェーン現象の影響が決まって指摘される。フェーン現象とは、湿った空気が山を越えて反対側のふもとに吹き下りる際、乾燥した高温の風となり、気温が著しく上昇する気象現象である。従って、毎日生起するものではない。
本当に暑い地域であるかどうかは、こうした瞬間風速的なデータとは異なる定常的な観測値で判定する必要がある。
そのための有力候補は、猛暑日(最高気温が35℃以上の日)や熱帯夜(最低気温が25℃以上の日)の頻度である。
実は、昨年、猛暑日や熱帯夜の日数に関して、驚くべき記録が達成されている。すなわち、京都で猛暑日と熱帯夜の日数が両方とも60日をこえる「60-60」が新たに記録されたのである(図表3参照)。
昼にひどく暑くても夜、涼しくなればまだ耐えられる。しかし、昼も夜も暑いのでは人間、なかなか耐えられるものではない。しかも、そうした日が何日も続くとしたらなおさらである。こうした観点からは、猛暑日と熱帯夜がともに多い地域こそが、「本当に暑い地域」と言えるであろう。
■京都では昨年史上初の「60-60」
全国で記録的な暑さが続いた昨年、京都市では9月15日、年間の猛暑日と熱帯夜の日数がともに60日に到達し、日本国内で観測史上初めて暑さの「60-60」に到達した。猛暑日と熱帯夜が1年の約6分の1という「異常な猛暑」となった。大谷翔平が2024年9月にMLB史上初のシーズン「50本塁打-50盗塁(50-50)」を達成は異次元だが、これもまたそうだ。
京都市は2024年も暑さの「50-50」を全国で史上初めて記録している。わずか1年で記録をそれぞれ10日増加させたとはまことに驚くべき記録更新である。
上でふれた日本最高記録41.8℃の伊勢崎については、昨年の猛暑日は49日、熱帯夜は42日であり、定常的な暑さという点では、猛暑日も熱帯夜も60日を超えている京都とは比較にならない。
2025年で猛暑日の数が多かったのは順に、京都(60)、日田(大分・同)、京田辺(京都・59)、甲府(山梨・58)、桐生(群馬・57)、多治見(岐阜・同)、福知山(京都・56)、名古屋(愛知・51)、久留米(福岡・51)と続き、大都市圏では大阪(44)、枚方(大阪・50)、練馬(東京・47)、東京(29)……という結果だ。
■なぜ、京都は昼も夜も暑いのか
一方、熱帯夜の数が多かったのは、沖縄(102)、神戸(78)、福岡(77)、大阪(同)、名古屋(70)、佐賀(69)、豊中(66)、久留米(65)、京都(64)で、関東では、横浜(61)、東京(52)、練馬(46)、伊勢崎(42)などとなっている。
猛暑日が多くても、熱帯夜数は比較的少ない。あるいはその逆パターンが少なくない中、京都は両方の日数が多いという状況だ。
「京都地方気象台によると、盆地の京都市は本来、日中は風が弱く強い日射で気温が上昇しやすいが、夜間は放射冷却で気温が下がりやすい。しかし、近年は都市化のため夜も気温が高いままになっている」という(京都新聞2025.9.15)。
こんな記録にまで達していることはオドロキだが、盆地で空気がよどむ京都では夏がやたらと暑いことは、夏、京都を訪れた経験のある者なら誰でも知っている。
暑さを表現する言葉に「カンカン照り」があるが、京都の場合は、直射日光による暑さというより、空気が動かない暑さで、しばしば「あぶら照り」と形容されるそうだ。
そうした環境であることを踏まえ、京都の伝統的な住宅(京町家)では、蒸し暑い夏を快適に過ごすため、衣服を衣替えするように住宅の建具や敷物を夏用のものに入れ替える「建具替え」や「しつらえ替え」と呼ばれる習慣がある(例えばふすまや障子を簾戸(すど)や葦戸(よしど)に入れ替える)。
この習慣は、古くから盆地の暑さを乗り切るための先人の知恵であり、主に6月1日頃(または梅雨の晴れ間)に行われる。京都に密着したドラマなどではこの様子が京都らしい場面として印象的に描かれることが多い(たとえばネトフリなどでも見ることができる「舞妓さんちのまかないさん」)。
■涼を取り入れる京都の知恵
しかし、風鈴などを含め、こうした生活習慣上の工夫ではもはや乗り越えることができないほどの暑さとなっているのではないかと推察される。
これまでの京都人精神から推察すれば「伝統的な工夫で極力暑さを入れず、本当に必要な時だけ最新技術のクーラーに頼る」という実用と美学が調和した新しい「京都らしさ」が目指されると思われるが、そのスタイルとして実際、何が普及するかが注目される。
例えば、一人暮らしの高齢者が自宅で一日中エアコンをつけっぱなしにするのではなく、カフェや公共施設などの涼しい場所に集まる「クールシェア」が京都市でも提案されているが、屋外「クールスポット」や京都に多いお寺や大学の活用などを通じた京都的な展開が何らかのかたちで定着することになるだろうか。
■暑い地域の鳥瞰的データ:やはり京都が…
以上は、最近、もっとも暑かった地域はどこかという観点からの統計整理だった。しかし、最近の最高記録ではなく、この何十年かの「平年値」データも重要である。しかも、頂点的なデータでなく、日本全国を縦断した観測値から暑い地域はどこかを判定することも大切である。そこで、平年値(1991~2010年)で猛暑日の日数を全国都道府県所在市ごとに示したマップを図表4に掲げた。
南北の緯度差がけっこう大きい日本列島では、当然、北の北海道・東北のほうが九州よりも猛暑日日数が少ないという傾向が認められる。
ところが、一番、南に位置する沖縄では猛暑日日数が0.2日と北海道に次いで少なくなっている。これは沖縄がきわめて海洋性の高い地域であるからと考えるより他はない。陸地より海洋のほうが一日の気温差が小さい。このため、海に近い地域ほど一日の気温変動が小さくなり、猛暑にも襲われにくくなっているのである。
2025年のみの単年データでも沖縄は、猛暑日がゼロだった(図表3)。一方、同年の沖縄の熱帯夜は102日と全国トップだった。昼はしのぎやすいが、夜は、やはり暑いというのが沖縄の特徴なのである。
■30年間の平均で猛暑日最多は京都
話を平年値に戻そう。関東・甲信越地方では、埼玉や山梨が猛暑日15日以上であるのに対して、日本海側の新潟だけでなく、太平洋側の茨城、千葉、東京、神奈川、静岡という海沿いの地域では猛暑日5日未満となっている。内陸部と沿岸部との対比がきわめて明確である。
全国で最も猛暑日が多いのは京都の19.4日である。
九州でも、ど真ん中の熊本だけが猛暑日15日以上である。西日本の中でも徳島、高知、長崎、そして沖縄という海洋性の高い地域で猛暑日5日未満となっている。
暑さを避けて移住するなら、北に向かうより、海側に向かうのが合理的だろう(臨海部で夏が過ごしやすいという点は、世界的な傾向を含め2024年4月6日配信の本連載記事=「『猛暑日数が0.2日と北海道に次いで少ないまさかの県』…桜の後にやってくる猛暑を避ける超最適&意外な場所」でもふれたので、興味のある方は参照されたい)。
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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『統計で問い直す はずれ値だらけの日本人』(星海社新書)。
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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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