年々高温化する日本の夏。気になるのは電気代の高騰だ。
経済ジャーナリストの荻原博子さんは「世界的に需要が高まり、電気代は上がれども下がることはない。家計防衛としてさまざまな節電・節約方法を知っておくべきだ」という――。
■値上がりする電気代
日本気象協会によれば、今年の夏は40℃以上の「酷暑日」が全国で述べ7~14地点になるとのことで、今から警鐘を鳴らしています。家庭の電気代は、値上がりしこそすれ、安くなる目処はまったくありません。
2026年4月には、政府が1~3月に行っていた電気・ガスの補助金が終了し、一般家庭は3カ月で7000円の負担増となっています。さらに5月は、燃料費調整や再エネ賦課金の単価などが上がることで、関西電力を除く大手電力会社9社の電気代が値上がりました。加えて、6月からは、イラン戦争でホルムズ海峡が封鎖され、原油価格が大幅に上がった影響が電気料金に反映されてくるために、大和証券のエネルギー担当アナリストの試算では、昨年に比べて5%ほど高くなるとのことで、メディアでも一斉に報じています
国際情勢は依然として不透明で、円安も続いているために、このままだと2027年は9%ほど高くなるという試算もあります。しかも、イランとアメリカが早期停戦してホルムズ海峡が解放されたとしても、電気代が安くなるかは不透明なうえ、国内の発電所や送電網が老朽化しつつあるために、その維持・管理費に巨額なお金がかかることも予想されます。さらに、AI技術の急速な進展で、データセンターの電力消費が激増しているために、日本はもとより、電気代は世界的に爆上がりしていくと言われています。
高騰する電気・ガス料金については、政府も7~9月まで補助金を再開する検討に入ったようですが、すでにガソリン補助金も6月中には枯渇するのではないかという見通しも出てきているので、仮に補助金が出るにしてもどれくらいになるのかの見通しは立っていないのが現状のようです。
■電気代を安くするには
爆上がりする電気代を、何とか安くしたいと思ったら、次の4つの方法があります。

1.変化した「エアコンの常識」を知る

2.太陽光発電で自家消費する

3.ふるさと納税で電気を買う

4.マメな努力で節電
順に解説していきましょう。
■1.エアコン「消すよりつけっ放しがお得」になる境界線
「エアコンの電気はこまめに消す」がこれまでの常識でしたが、最近のエアコンは「つけっぱなしにしておいたほうがお得」になっています。
ダイキンの実証実験によると、日中9時から18時の時間帯なら、30分間であれば、こまめに電気を消すよりもつけっ放しにするほうが終日電力量は少ないという結果になっています。なぜなら、省エネが進んでいる今のエアコンでは、電気のスイッチを入れた立ち上がり時がもっとも電気代がかかり、その後のランニングコストは極めて低くなっているからです。なので、電気をこまめにつけたり消したりしていると、もっとも電気代がかかる状況が続くことになり、余計に消費電力がかかることになってしまうのです。さらに今は、こまめな温度調節よりも、「自動運転」が最強の節電方法になっています。
また、冷気は下に降りてくるので、冷たい風を自分に向けるより、風向きを水平かやや上向きにして、天井付近から冷気を下げて部屋全体を効率的に冷やしたほうが電気代が約3割も安くなると言われています。
■2.太陽光発電設置費用は13年で3割以上値下がり
電気代が上がれば上がるほど、自分の家に太陽光パネルを設置して自家発電するメリットは大きくなっていきます。しかも、東京電力エナジーパートナーによれば、容量5kwの太陽光発電を導入すると、2012年の設置費用は平均215万5000円でしたが、これが2025年には144万5000円と、13年で3割以上安くなっています。
屋根などでつくった電気を電力会社に売るときの売電価格(10kw未満)は、13年前の42円から2026年は平均14.6円(設置4年目までは24円)と大きく値下がりしてしまいましたが、電気代がうなぎ登りに上がっていきそうな現状では、自分の家で使う電気を賄うだけでもかなりのメリットがあります。しかも、太陽光発電には国だけでなく、都道府県、市区町村とかなり幅広く補助金を出しているケースが多く、要件を満たせば併用可能なので最大で100万~200万円以上の補助を受けられるケースもあります。
■3.「ふるさと納税」で電気がもらえる
太陽光や水力でつくられた自治体などで発電する電気を「ふるさと納税」の返礼品にする自治体が増えてきました。

たとえば、中部電力グループの販売会社「中部電力ミライズ」では、三重県、長野県、静岡県、岐阜県内の計16の市町村と提携し、そこでつくった「グリーンでんき」を寄付の「返礼品」としています。「グリーンでんき」とは、CO2の排出が少ない太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーでつくった環境にやさしい電気。
対象の自治体に1万円の寄付をすると、「お礼の品」として150kWhぶん、金額にすると2500円分の「グリーンでんき」が「お礼の品」でもらえます。
通常のふるさと納税は、全国どこからでも可能ですが、中部電力ミライズの電気については、愛知県、岐阜県(一部地域を除く)、三重県(一部地域を除く)、静岡県(富士川以西)および長野県に限定されるなどの条件がありますので、対象地域の方はぜひチェックしてみましょう。東京都世田谷区でも、2025年6月から「東急でんき」の売電期間の10年が終わったクリーン電力(再エネ100%の電気)を、「ふるさと納税」の返礼品にしています。具体的には、7万円の寄付で毎月5000円×4カ月ぶんの電気がもらえます
■4.こまめな節約で、酷暑を乗り切る
少しでも電気代を安くしようと思ったら、こまめな節電が意外と役に立ちます。
たとえば、猛暑の中で家に帰り着くと、そのままガンガンにエアコンをつけて部屋を冷やすという人は、意外に多い。けれど、それでは節電になりません。
まず出かける前の準備として、ジップ袋などに入れた濡れタオルを、冷蔵庫に入れて冷やしておきます。帰宅後、暑い熱のこもった部屋に入ったら、まず窓を開け放ち、熱気を外に逃がしましょう。次に、出かける前に冷蔵庫に入れておいた濡れタオルでほてった体を拭きます。
出かける前に風呂に水を張っておいて水風呂に入ったり、水を張ったバケツに足をつけるというのもいいでしょう。そのうえで、窓を閉めてエアコンをかければ、部屋をガンガンに冷やす必要はありません。
マメにエアコンの掃除をしたり、室外機を直射日光に当てないために葦簀(よしず)などを立てかけたりするなどの工夫も大切。
ゴーヤなどで窓の前にグリーンカーテンをつくるのも日除けになり、しかもゴーヤは栄養価も高くビタミン補給にもなり、一石二鳥です。ネットにはさまざまな暑さ対策法が出回っていますが、自己検証のひとつとして簡単なものから、その効果を試してみるのもいいかもしれません。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)

経済ジャーナリスト

1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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