健康を保つお酒の嗜み方は何か。医師の牧田善二さんは「アルコールが健康に与える影響については多様な意見があるが、まだ腎臓を悪くしていない人なら、ほどほどに嗜んだほうがいい。
ドイツの研究で痩せる効果があることが報告された酒石酸という成分を含むアルコールを私は食事中に飲んでいる」という――。
※本稿は、牧田善二『腎臓 人工透析にさせない最強の医療・食べ方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■夕食は遅くなるほど損する
一日3回の食事バランスは「朝食3:昼食5:夕食2」が理想的だといわれています。本当は、夕食はあまりたくさん食べないほうがいいのです。
とくに、炭水化物を控えめにしましょう。夕食後は基本的に寝るだけですから、そこで摂ったエネルギーが使いきれず、脂肪細胞に中性脂肪が溜め込まれ、肥満につながってしまいます。
また、遅い時間に食べないことも大事です。
糖尿病の患者さんを対象に行なわれた研究で、夕食を18時に食べたときと比較して、21時に食べると血糖値が上がりやすく、インスリンも多く出ていることがわかっています。
こうしたことから、遅い時間に食べると、寝ている間にもAGEが量産されていると想像できます。
22~23時くらいに就寝する人なら、理想の夕食時間は18時ごろと考えていいでしょう。とはいえ、勤め人ならば、なかなかそれは難しいかもしれません。それでも、夕食から寝るまで3時間は空けるようにしましょう。

避けたいのは、夜遅くに空腹状態で帰ってきてドカ食いし、すぐに寝るというパターンです。
これをやっていると、寝ている間の夜間血糖値が高く推移し、糖尿病に罹りやすくなります。もちろん、AGEもたくさんつくられるので腎臓に大きなダメージを与えます。
また、朝は胃もたれがしているから朝食を抜くことにつながります。朝食を抜けば、昼食にドカ食いする、という負の連鎖が起きます。次の日を快適な一日にするためには、夕食を早めに軽くすませることがとても重要になってきます。
■いい脂質を摂らないと体はボロボロになる
私たちの体は、約37兆個もの細胞からなっているといわれています。これら細胞は、日々新しく入れ替わっています。
その細胞の膜の原料となるのが脂質です。そのため、脂質をしっかり摂らないと、体はボロボロになってしまいます。
ところが、「脂質はカロリーが高いから太る」と考えている人が多く、脂質を避けている分、糖質の過剰摂取に陥っています。これは、まったく間違った考えなのです。

私たちを太らせるのは、脂質ではなく糖質です。
炭水化物(糖質)は、消化されブドウ糖に分解されます。そのブドウ糖が小腸から血液中に吸収されると、血糖値が上がっていきます。このとき、血糖値が上がりすぎないようにインスリンというホルモンが分泌され、ブドウ糖を処理してくれます。
どのように処理するかというと、最初はグリコーゲンに変換して肝臓や筋肉などに蓄えます。それでも余ってしまったブドウ糖は、中性脂肪に換えられ脂肪細胞に貯蔵されます。これが太るメカニズムです。
つまり、糖質を摂らなければ、私たちは太ったりしないのです。
だから、安心して、もっと脂質を摂りましょう。
■老化を押し進める脂質、くい止める脂質
とはいえ、脂質の「質」は重要です。なにしろ、脂質は細胞の膜の原料になるほど重要な働きをするのですから。
脂質について、単純に「固形の油脂ではなく、液体の油脂がいい」と考えている人がいます。
たとえば、「ラードやバターより、サラダ油がいい」と思い込んでいるのです。
しかし、サラダ油は、人工的につくられたもので「トランス脂肪酸」という悪性の物質をたくさん含んでいます。トランス脂肪酸は非常に体に悪く、欧米では厳しく規制されています。
一方で、バターは牛乳から抽出した乳脂肪を攪拌(かくはん)凝縮してつくられた自然の動物性油脂で、多少のトランス脂肪酸を含むものの、サラダ油よりはるかに体にいいのです。
なお、マーガリンやショートニングは、見た目はバターに似た固形ですが、コーン油などの植物性油脂に添加物を入れて固めた不自然な加工食品で、大量のトランス脂肪酸を含んでいます。さらに、今は、アマニ油、エゴマ油など健康にいいといわれる油脂がいろいろ出回っています。
■患者にも推奨できる油脂の種類
こうしたことを考えると、油脂選びはなかなか難しいのですが、私自身が日々摂っており、自分の患者さんたちにも推奨できる油脂といえば、「エキストラバージンオリーブオイル」となります。
現在の段階で、オリーブオイルは確実に健康にいいことが学術的に証明されているからです。
ただし、油脂は空気に触れると酸化し、毒性を強めます。
そこで、家に置く植物油はエキストラバージンオリーブオイルだけと決め、それをどんどん使うようにするのが、最も賢い方法だと私は考えています。どんどん使っていくために、お徳用の大瓶ではなく、できるだけ小瓶を買うようにするのもいいでしょう。
■ほとんどのアルコールは血糖値を上げない
アルコールが健康に与える影響については多様な意見がありますが、まだ腎臓を悪くしていない人なら、ほどほどに嗜(たしな)んだほうがいいと私は考えています。

私の場合もそうですが、お酒があると、夕食はおかずをつまみながら食べるようになり、白米など炭水化物の摂取量が減ります。
実際に、お酒を出す店のメニューの多くは血糖値を上げにくいものが多いのです。
居酒屋の焼き鳥、刺身、冷ややっこ、枝豆など、どれもあまり血糖値を上げません。
洋風の店でも、肉や魚、野菜を使った料理を選び、ピザやパスタを食べないようにしていれば血糖値は上がりません。
それになにより、ほとんどのアルコールは血糖値を上げません。
私自身、夕食時にはたいていワインを飲んでいますが、翌朝の自己測定血糖値は、飲んだときのほうが低いことがわかっています。
■痩せる効果のある成分を含む飲み物
ただし、アルコールの種類によっては、血糖値が上がるので注意が必要です。
アルコールには、大きく分けて蒸留酒(じょうりゅうしゅ)と醸造酒(じょうぞうしゅ)があります。
このうち、ウイスキー、ジン、ウォッカ、ラム、焼酎(しょうちゅう)などの蒸留酒は血糖値を上げません。ウイスキーの水割りやハイボール、甘味の入っていない酎ハイなどを飲んでいれば、血糖値は上がりません。
醸造酒のうち、ビールは糖質が多いので血糖値が上がりやすいのですが、「糖質ゼロ」タイプなら上がりません。日本酒はやや上げる程度で、ワインはほとんど上がりません。

なかでもワインは、血糖値の上昇がほとんどないだけでなく、いろいろな健康効果が期待できます。
赤ワインは、抗酸化作用があるポリフェノールが非常に豊富です。
また、辛口の白ワインに多く含まれる酒石酸(しゅせきさん)という成分に、痩せる効果があることがドイツの研究で報告されています。
こうしたことから私は、食事中にはたいていワインをいただき、そのあと、ウイスキーの水割りを楽しむこともあります。
とはいえ、多量に飲むわけではありません。多量のアルコール摂取は血圧を上げます。高血圧が腎臓に悪影響をもたらすのは明らかなので、あくまで自分の適量を踏まえることが大切です。
■たっぷり頼むチェイサーが腎臓を守る
なお、アルコールの種類を問わず、水も一緒に飲んでください。
水を飲むことで血中アルコール濃度が高くなりすぎず、悪酔いするのを防ぐことができます。また、日本酒のような糖質が含まれる醸造酒の場合、水を飲めば血中ブドウ糖濃度も低く抑えられ、血糖値が上がるのを防ぐことができます。
私は、自宅でもレストランでも、お酒を飲むときは一緒に水をたくさん飲みます。レストランの場合、最初からピッチャーで水を用意してもらうほどです。
そのくらい水を飲んでいいのです。
そして、基本的にお酒は、一人ではなく気の合う仲間と楽しみましょう。
大切な一日の終わりに愉快な時間を過ごすことは、ストレスを解消し、あなたの健康に大きく寄与してくれるはずです。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)

AGE牧田クリニック院長

1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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