ウエイトリフティング・宍戸大輔(BLACK SHIPS)
積み重ねた日々と、再起を支えたもの。
ウエイトリフティング・宍戸大輔。ウエイトリフティングは、ただ重いものを持ち上げる競技ではない。
一瞬の中に、スピード、タイミング、柔軟性、技術、判断力が求められる。
わずかなズレが成功と失敗を分ける繊細さと、全身の力を一気に爆発させるダイナミックさ。その両方を併せ持つ競技である。
試技台の上で見える強さ。
その一瞬のために自分自身と向き合う。
競技の裏側には、誰にも見えない葛藤がある。
思うように結果が出ない、数年に渡る長いスランプ。
全日本選手権を目前に控えた今、宍戸大輔の競技人生と、再起を支えた存在に迫った。
全日本選手権へ。目指すのは優勝だけではない。
今年の全日本選手権は、宍戸にとって特別な意味を持つ。目指すのは、全日本選手権5度目の優勝。だが、宍戸が見据えているものは、その先にあった。
この大会は、世界選手権への選考会も兼ねおり、その切符を手に入れるためには、優勝だけでなく基準記録を超えることも求められる。
昨年度、宍戸は全日本選手権で優勝を果たした。
しかし、その一方で世界選手権の基準記録には届かなかった。
優勝という結果は、もちろん大きな成果だ。
それでも宍戸の中には悔いが残った。
バーベルと出会い、人生が変わった。
宍戸の競技人生は、高校入学とともに始まった。中学校までは野球に取り組んでいたが、高校へ進学するタイミングで、個人競技に挑戦してみたいという思いが芽生えた。
兄がウエイトリフティングをしていたこともあり、宍戸も興味を持つようになった。
中学時代と、高校で競技を開始したばかりの宍戸
宍戸が最初に競技の面白さを感じたのは、高校1年生の6月頃だった。
競技を始めてわずか数か月で、クリーン&ジャークで100kgを挙げてしまったのだ。
もともとは、高校を終えるまでに100kgを挙げることを目標にしていたと話すが、競技を始めて間もない段階で達成したことが、宍戸にとって大きな分岐点になった。
「すごく嬉しかったのを覚えています。もっと重い重量を挙げたい、さらに上を目指したいと思いました」(宍戸)
昨日より良い動きをする。
前回より高い重量に挑む。
失敗した試技から学び、またバーを握る。
そうした積み重ねの中で、宍戸はウエイトリフティングの魅力にのめり込んでいった。
栄光の裏で続いていた、長いスランプ。
インターハイや、全日本選手権で優勝を重ねてきた宍戸。だが、その競技人生は、決して順風満帆なものではなかった。
全日本選手権は過去4度の優勝を誇る
大きな転機は、パリオリンピックの選考に挑んだ2023年に訪れる。
当時、階級設定が変更され、宍戸は本来の81kg級から89kg級へ階級を上げた。
しかし、その過程でフォームを変えたことが、長い苦しみの始まりになった。
自分が思った通りの感覚が作れない。記録も思うように伸びない。
それは、想像以上に苦しい時間だった。
2025年秋にはさらに状態が悪化し、大会で記録を残せずに終わった。
宍戸にとって初めての経験だった。
練習をしていないわけではない。
コツコツと積み上げていく中で、補強種目であるデッドリフトやスクワットの記録は確実に上がっていた。それでも、肝心の競技種目の記録が伸びない。
「筋力は上がっているのに、種目の記録は伸びない。本当につらかった。」(宍戸)
BLACK SHIPSが与えてくれた環境
長いスランプの中で宍戸を支えた一つが、BLACK SHIPSという環境だった。パリオリンピックの選考で思うような結果を残せなかった宍戸に声をかけたのが、BLACK SHIPSオーナーの佐藤氏だった。
宍戸は当時を振り返る。
「ロサンゼルス五輪まで面倒見てあげるから、そこまで頑張れと言われました。環境を与えてもらえたというのは、自分にとってかなり大きかったです」
佐藤氏が宍戸を受け入れた理由は、実績だけではない。
関係者から「有望な選手がいる」と紹介を受け、実際に会った時、佐藤氏が心を打たれたのは競技に向き合う姿勢だった。
「裏表がなく、真面目で、ひたむきに競技に向き合っている印象を受けた」と佐藤氏は言う。
選手として、あとどれくらい競技に打ち込めるのか。
キャリアの中で、やり残しがないようにしてほしい。
その思いから、佐藤氏は宍戸に声をかけた。
東京都内で、ウエイトリフティングを本格的に練習できる環境は多くない。
高重量のバーベルをドロップできる施設は限られている。
そんな中、BLACK SHIPSには、ウエイトリフティングに取り組むための環境が整っていた。
BLACK SHIPSにて日々トレーニングを積んでいる
さらに、そこに集まる人たちの存在も大きい。
会員たちは、それぞれの目標に向かって身体づくりに励んでいる。
一人で黙々と練習するだけでは得られない刺激が、そこにはあった。
「通われている会員さんも、皆さんやる気がある方々で、和気あいあいと練習に打ち込める。刺激し合えるので、本当に良い環境だと思います」(宍戸)
宍戸は、練習時間外で新規入会の手続きや施設の清掃などBLACK SHIPSの運営にも携わっている。
BLACK SHIPSは、宍戸にとって競技に集中できる拠点であり、身体づくりに向き合う人たちと時間を共有する場所でもある。
試技台での一瞬は、こうした日々の積み重ねの先にある。
日々の積み重ねの中で、レキオムとの出会い。
長いスランプの原因を探る中で、内側にも目を向けるようになった。「もしかすると気づかぬうちに蓄積疲労のようなものがあって、調子がなかなか上がってこないのかなと思い始めました」(宍戸)
そこで、様々な商品を試す中で、ウエイトリフティング仲間から紹介されたのが、沖縄発の運動サポート食品「LeQ’om(レキオム)」だった。
レキオムは、沖縄在来の琉球ヤムイモを原料とした食品で、トレーニングに取り組む人や、日々のコンディションを意識する層を中心に広がっている。
トップレベルで競技を行う選手にとって、身体に入れるものを選ぶことは慎重でなければならない。
成分や品質、安心して継続できるかどうかは、競技者にとって大切な判断基準になる。
「トレーニングに組み込んでみたところ、練習への意欲や活力が湧いてくる感覚があり、今の自分にピタッとはまりました。」(宍戸)
宍戸にとってレキオムは、日々の身体づくりやリカバリー、コンディショニングを支える習慣の一つとなった。
勝つために必要なのは、ただ追い込むことだけではない。
追い込んだ身体をどう整え、次につなげるか。
宍戸は、その一つひとつを確かめながら、もう一度、自分の感覚を取り戻そうとしている。
積み重ねてきたすべてを、試技台へ
今年の全日本選手権は、2026年5月29日(金)から愛知県名古屋市で開催される。宍戸が目指すのは、全日本選手権5度目の優勝。
そして、世界選手権の基準記録を超えること。
かつての感覚を取り戻そうと、もがいた日々。
何度も辞めようと思いながら、それでも続けてきた。
支えてくれる人たちの存在。
BLACK SHIPSという環境。
そして、自分の身体と向き合うために選んだ習慣。
そのすべてを、数本の試技に込める。
宍戸大輔の挑戦は、すでに始まっている。