オーストラリアと中国は経済面を見れば互いに極めて重要な存在だ。しかし2000年を過ぎると、オーストラリアは「台頭する中国」を警戒するようになった。

18年から22年にかけてはモリソン首相が対中安全問題や人権問題、香港問題などを強調したことで両国の関係は決定的に悪化した。中国は20年、オーストラリア産ワインに、反ダンピングを利用として税率200%超の関税を課した。

しかし22年5月に発足したアルバニージー政権は中国との関係改善に努めた。中国は24年3月29日、オーストラリア産ワインへの課税を撤廃した。中国メディアの環球網はこのほど、オーストラリアの関連業界では、対中輸出の回復を期待できる「笑う業者」もいるが、先行きを楽観できない「笑えない業者」も多いと紹介する記事を発表した。

豪紙ウエスト・オーストラリアンは、中国の課税によりオーストラリアワインの対中輸出では10億オーストラリアドル(約990億円)の損失が出たと紹介。

中国側の課税撤廃は「祝杯を挙げる」べき措置だが「遅すぎたかもしれない」と論評した。

オーストラリアの関連業界は、将来への期待と懸念が入り乱れた状態という。関税撤廃を働きかけていたワイン関連業界団体の「オーストラリアン・グレープ・アンド・ワイン」のマクリーン最高執行責任者(CEO)は、苦しんでいる業界として「卵がかえらないうちに、得られるニワトリの数を数える」ようなことはしたくないと述べた。

オーストラリア産ワインの20年通年の対中輸出量は9260万リットルで、輸出額は約10億オーストラリアドルだった。一方、23年は輸出量が140万リットル、輸出額は1000万オーストラリアドル(約9億9000万円)に留まった。マクリーンCEOは、中国の課税撤廃を歓迎しつつ、「いかなる単一市場や市場ポートフォリオの規模や成長も、われわれが中国で失ったものを補うことはできない」と述べた。

オーストラリアの関連業界では、ワインの対中輸出を手掛ける大手では、中国で再び足場を固めることが比較的容易だが、小規模な醸造業者にとっては苦難の道が続くとの見方が出ているという。

あるワイン生産業者は、やはり中国側の関税撤廃措置を「喜ばしい知らせ」と評価した上で、「われわれがより公平な競争環境に戻れることを意味するが、オーストラリア産ワインが自動的に(中国の)レストランやホテルに復帰することを意味するものではない」と指摘した。オーストラリア産ワインの対中輸出がほぼストップしていた時期に、フランス、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンなどのワイン生産大国が「中国市場の空白地帯」を埋めることになったからだ。そのため、オーストラリア産ワインが、中国市場でのかつての地位を取り戻すためには、多くの厳しい状況に直面することが必定という。(翻訳・編集/如月隼人)