台湾で7月26日に投開票された最大野党・国民党の立法委員(国会議員)24人に対するリコール(解職請求)は不成立に終わった。市民団体が仕掛けたリコールを支援した与党・民進党の林右昌秘書長(幹事長)は辞意を表明。

複数の専門家は「頼清徳総統の政権運営は厳しくなった。与野党の和解が必要」などの見方を示した。

リコールの背景には民進党が立法院(定数113人)の過半数に届かず、国民党が他党と組んで頼政権に対抗してきたことがある。国民党に批判的な市民団体は「反中護台」(中国に反対し台湾を守る)と主張。議会の過半数を取り戻したい民進党の思惑とも一致した。

台湾・中央通信社によると、不成立について、成功大学社会科学部政治学科教授の王宏仁氏は「反対票は野党の動員で最大限引き出された。市民団体は当初『適任でない立法委員のリコール』を訴えていたが、結果的には与野党対決になった」と指摘。「投票の対象となった選挙区のほとんどが国民党の地盤が強い地域だったため、同党が組織的動員を通じてリコール不成立に持ち込めた」と述べた。

東呉大学法学部教授の張嘉尹氏は「現代の選挙はインターネット戦略が大きなカギとなっている」と説明。「SNSは自身と似た考えを持つ人同士だけで交流する『エコーチェンバー現象』を生み、特に(短文投稿サイトの)スレッズでは(アルゴリズムによって)似た意見ばかりが目につくため、異なる言論を持つ人との関わりが生まれにくい。これも今回の結果と事前の予想が異なった原因である可能性がある」と分析した。

政治大学国際関係学部の陳文甲非常勤准教授は民進党が立法院での劣勢を覆せなかったため、国防予算や国会改革といった重要政策の推進がさらに困難になるとした上で、「与野党が協議の仕組みを改めて立ち上げる必要がある」と提言。

またリコール阻止の過程で国民党と第二野党・民衆党が戦略的に連携した点を挙げ、「この関係は今後の選挙や立法院での攻防でも続き、民進党をけん制する大きな力になる」とした。

頼政権の今後に関して東海大学社会科学部政治学科の邱師儀教授は「今回の結果は民進党にとって大きな打撃であり、社会に新たな対話が必要だ」と言及。野党に対しては「勝利を喜ぶのではなく、謙虚な姿勢を持つべきだ」と訴えた。

中国文化大学国家発展・中国大陸研究所の曲兆祥非常勤教授は「頼総統が誠意をもって野党に協議を申し出れば、中間層の有権者はそれを評価するはずだ」と語り、「(今回のリコール投票を含む)選挙のたびに社会が引き裂かれている」として、「政権側が社会の和解に取り組むべきだ」と強調した。(編集/日向

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