4月17日にリリースされた「独白」は、そんなとうめい天国の変化がありありと表出した1曲。「独白」の出発点となった喪失に対する考えについて、とうめい天国の核について、バンド初となるロングインタビューで存分に語ってもらった。
とうめい天国は、生きづらいと思っている人に向けて歌を歌えるバンド
―とうめい天国は、森口さんの甘い声質によって、生きていくことのどうにもならなさを歌った歌詞が包んでいくようなバンドだと感じています。皆さんは、とうめい天国をどのような音楽を鳴らしているバンドだと考えていらっしゃいますか。
森口楽絃(Vo, Gt):生きづらいと思っている人に向けて歌を歌えるバンドでありたいと思っています。どんな立場にいても、どんな人であっても、マイノリティになっちゃったり、生きることの難しさを感じたりすることがあるはずだから、そういう人たちのために曲を作っていきたいんです。
―いつごろから生きづらさがテーマになっていったのでしょう。
森口:結成当時は自覚的じゃなかったんですけど、色んな曲を書く中で自分にとって一番しっくりくるのがそういうテーマだったんですよね。……みんなはどう思う?
奏汰(Gt):楽絃からバンドに誘われた時には、もう既に「逃げても良いんだよってことを歌いたい」と言われていて。なので、割と早い段階からバンドの目指す場所は決まっていた気がしますね。
えだはるか(Dr):確かに、森口の中ではどういう人に向けた音楽なのかが最初から明確に定まっていたと思います。
―そのタイミングというのは?
えだ:はっきりとしたきっかけがあるわけじゃないんですが、よしちゃんが加入してから
じゃないのかな。
よし(Ba):そうですね。私はもともと2人(森口とえだ)が作る音楽が好きだったこともあって、バンドに加入してからも尊敬の念が消えないというか、一歩引いてしまっている状態だったんですよ。でも、一緒にいる時間が増えていくうちに、サポートメンバーとしてではなく、自分も肩を並べたいと考えるようになった。その結果、とうめい天国としての共通認識が自然と生まれていったんだと思います。
―なるほど。よしさんの加入がキーポイントだったという話も出たので、バンドの時系列を整理させてください。2023年6月の結成を経て、よしさんが加入したのはいつ頃?
よし:2024年にサポートベースとしてバンドに加わってから、すぐにメンバーとしてやっていくことになりましたね。
えだ:サポートをお願いした段階から、メンバーになってほしいと思っていたんですよ。ベーシストとしての表現力だけじゃなくて、マインド的なバランスの良さを感じていたというか。
森口:音楽だけじゃなくて、それこそ食事に行っても僕らはなかなか店員さんを呼べないタイプで。でも、よしちゃんがいると、真っ先に「すいません!」って声をかけてくれるんですよね。そういう頼りがいのある部分が決定打でしたし、現状を変えてくれそうな力を感じました。僕たちはよしちゃんをメンバーに誘う時も、なかなか話を切り出せなかったくらいですし(苦笑)。
―よしさんの加入で外へと作品を届けていくためのピースがハマり、バンドとしての方向性が定まっていったと。皆さんが動画インタビューにて「とうめい天国らしい曲ができたと思っています」とお話されていた「愛ゆえに」は、そうしたバンドのテーマを具現化した1曲で。この曲のどういった部分に、とうめい天国らしさが宿っているとお考えですか。
森口:誰が聴いても「良い」と感じてもらえるメロディを大切にできたところですかね。そもそも僕はメロディから曲を作るんですけど、この曲は歌詞と旋律を良いバランスで押し出すことができた気がするんです。
えだ:とうめい天国は人肌の温かさを感じてもらえるバンドだと思っているんですが、「愛ゆえに」はそれが存分にサウンドへ表れている1曲で。
―人の温かみを音像へ反映していくやり方は、冒頭でお話いただいた逃げ場としての歌を作っていくための手法でもありますよね。
よし:そう思います。もちろん色んなジャンルの曲があるけれど、根底にはどれも人を包み込む優しさがある。だからこそ、その柔らかさを表現するために、どんなタッチをしていくべきなのか、どんな弾き方をしていくべきなのかを考えていますね。
奏汰:ギターに関して言うと、色を付けるようなイメージで演奏することが多くて。ある時を思い出して浮かんできた風景や記憶って、言語化できないちょっとしたニュアンスの違いがあるじゃないですか。それをギターだったら表現できると思っているんですよ。だからこそ、風景を形にしていくというか、必要な温かさや冷たさ、鋭さを探しています。
自戒と喪失に対する思考を詰め込んだニューシングル「独白」
―そんな「愛ゆえに」から「宣声、今一切に告ぐ/ALLGREEN」「DANCER IN THE HIGH」の連続リリースを経て、4月17日に「独白」が発表されました。自分をいかに肯定していくのか、ままならない世界で何を歌うべきなのかといった問題と相対していく作品だと感じています。改めてこのシングルを振り返って、どのような1曲になったと感じていらっしゃいますか。
森口:……この曲は「何かを失わないための方法を知るには遅すぎるな」と思ったところから始まっていて。どうあがいても失っていくものがあるんだったら、失った事実を見つめて、残っている何かを愛していく方法を探すべきだという思いを書いたんです。あとは、自身に対する戒めもこの歌には込められていて。やらなきゃいけないことがあるのに手につかなかったり、自堕落な生活を送ってしまった結果、何かを失っていく。そういう自分をどうやって清算して、過去といかに向き合っていくのかを考えた1曲ですね。
―喪失から逃れられないことに気づいたキッカケは何だったんでしょう。
森口:「ALLGREEN」で歌ったこととも重なるんですけど、人に優しくしようとするあまりにつまらない自分になっていく感覚があったんですよ。周囲に合わせるばかりで何がしたいのかも分からなくなってしまったし、友人と疎遠になったりもした。何かを失わないための方法が優しさだったのに、優しさで自分自身を失ってしまった。そういう出来事があった結果、プラスだけの事象はないんだと思うようになったっていう。
―良かれと思っていた振る舞いに苦しめられてしまった経験が、歌になっていったと。
森口:そう。
―よく分かりました。先ほど「自身への戒めを書いた」というお話もありましたけれど、このタイミングで赤裸々な歌詞を綴ろうと思えた理由は?
森口:かっこいい自分を取り繕いながら歌ったとしても、それは会話じゃないと思えたからかなと。正直なところ、半年くらい前まではライブのスタンスも定まってなくて、分かりやすく盛り上げようとしていた側面もあったんですけど、それは僕らしくない気がしたんです。アーティストとお客さんである以前に人と人だから、まずは自分を曝け出さなきゃいけない。そう分かったからこそ、最近はライブも楽曲も自然体なんだと思います。
えだ:楽絃が言ってくれたことは、他のメンバーにも当てはまることで。これまでは私たちも「ここはこうした方が格好良く見えるだろう」「普通だったらこうするだろう」とお決まりやスタンダードを考えていたんですけど、ここ最近は色んな性格の自分たちをそのまま表現することでバンドの伝えたいことに最も近づけると思えている。だからこそ、最近の楽曲はサウンド面でもマインド的にもものすごく解放されているんですよね。
―逆に言うと、取り繕った状態のままだったなら「独白」は生まれてこなかった。
えだ:うん。
―とうめい天国全体が解放的なムードになっていった背景は、どこにあるんですかね。
えだ:去年の11月に開催した初めてのワンマンライブがキッカケだったかな。
森口・よし・奏汰:(無言で深く頷く)
奏汰:あとは、初めて遠征に行ったことも大きかったと思います。スタジオの数時間で喋ることだけじゃなくて、何日も一緒に過ごすことでふと喋れた話が沢山あった。一つひとつを覚えているわけではない会話でも、お互いのことを知れる時間が長くあって。そうやってメンバーのことを理解することで、「こっちの方が良いんじゃないの」「それは違うんじゃない?」っていう会話が一層交わせるようになりました。
えだ:そうだね。メンバー同士でもかっこつけすぎないようになったからこそ、サウンドにも自然とその柔らかさが反映されていったんだと思います。
どれだけテクノロジーが発展しても、人が奏でる音楽を人は好きになると信じてる(えだ)
―1stワンマンライブをターニングポイントにバンドが変化してきたとのことですけれど、4月18日には2ndワンマンライブ『幸せのゆくえ vol.2』も開催されました。2度目の単独公演を終えた手応えを聞かせてください。
森口:今回のワンマンは自己の解放というか、本当の姿を見せることを大切にしていたんですが、ようやくしっくりくるスタイルを見つけられた気がしています。MCも曲間に伝えた思いも自然と出てきたものばかりだったし、その言葉がきちんとお客さんに届いた。「今日はこの人に挨拶するぞ!」と意気込んで伝えた「おはよう」と、自然と出てきた「おはよう」だと温度感が違うじゃないですか。それと同じで、やっぱりライブは会話であるべきだと確かめることができました。
えだ:「独白」をはじめ、いくつものレコーディングを通じて向き合ったベストのサウンドが前提としてあった上で、それを表現する方法を模索するライブになりましたね。音源が100点だとしたら、ライブでそのまま100点を出すことはきっと不可能で。出せるとしたら、80点か120点、それ以上しかないと思うんですよ。だからこそ、100点以上のものを見せる前のめりな姿勢で臨めた気がしていますし、生の人間でしか表現できないものを持って帰ってもらえたんじゃないかなと。
―今日の話を伺って、等身大で舞台に立つ佇まいや音源以上のステージを完成させるスタイルが出来上がってきていると感じましたし、とうめい天国として進みたい方角へ着々と歩んでいるように思いました。8月22日には3度目のワンマンライブ『とうめい天国pre. 幸せのゆくえ ワンマンライブvol.3』も控えていますが、この先どのようなバンドになっていきたいですか。
よし:どんな人にでも、どこにいる人にでも届くようなバンドになりたいです。だからこそ、最近はそれを実現するための手法を模索したいと強く思っていて。SNSを頑張ったり、動画を企画したりしながら、もっともっと多くの方に届くためのツールと出会えたらと考えていますね。
森口:SNSにしても、ライブにしても、それをやること自体がゴールじゃなくて、届けることが目標なんですよね。その一歩として、お客さんが参加できるライブを繰り広げられるようになりたいなと。一緒に歌うとか、手拍子をするとか、決められたものだけではなく、お互いに作用し合えるような時間を作り出せる。そういうバンドになりたいです。
―お二人はいかがですか。
奏汰:ギターは音作りだったり、音の止め方だったりでその時の感情や性格を表現できる楽器だと考えているので、その時々の感情を形にしていけたらと思っています。それこそ、来てくれるお客さんの中には良いことがあった人も、不幸な出来事に見舞われたかたもいるかもしれない。同じ感情の人は1人としていないから、その日だけの会話を、取り繕わずにできたら良いなって。
えだ:私たちの楽曲は色んな種類がある分、老若男女を問わず、幅広い世代の方に届くものだと思うんです。なので、とうめい天国の音楽がどれか1つでも、記憶や体験と結びついて、大切な1曲になったら嬉しいと思っています。あと、何回も話したことですけれど、やっぱり人が奏でるものの温もりをずっと忘れずに持っていたい。どれだけテクノロジーが発展しても、人が奏でる音楽を人は好きになると信じてるんで。そういう温かさを大事にし続けて、愛されるバンドになりたいです。
「独白」
とうめい天国
ALL ACCESS RECORDS
配信中
https://orcd.co/toumeitengoku_dokuhaku
とうめい天国 × Adam's miss 合同企画
6月17日(水)渋谷eggman
出演:Adam's miss / とうめい天国 / Seskimo / Broken my toybox
OPEN / START:18:00 / 18:30
とうめい天国 pre. 幸せのゆくえ ワンマンライブ vol.3
2026年8月22日(土)渋谷eggman
出演:とうめい天国
OPEN / START:18:00 / 19:00


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