ゴマすり&根回しがうまい人の特徴は? 飲み会・懇親会の本当の意義は?
ゴマすり、根回し、人脈づくり......ともするとくだらなく感じることもあるが、必要なスキルであることも事実。そんな社内政治を研究する経営学者・木村琢磨氏に科学的な視点から「社内政治の本質」を聞く!
【経営学で研究される社内政治】――まず気になったんですが、社内政治って学問の対象になるんですか?
木村 ゴマすり、根回し、人脈づくり、派閥......そういった社内政治は、実は経営学で世界的に研究されているテーマのひとつ。
広く読まれている組織行動の教科書には、多くの場合「権力と政治」という章が含まれていて、合理性だけでビジネスは成立しないことがわかります。今日も多くの人がビジネススクールなどで社内政治を専門領域のひとつとして学んでいますよ。
――社内政治は日本特有の文化だと思っていました!
木村 どの国でも会社とは利害が異なる人が集まる場所。海外のほうが社員の専門が分かれている組織が多いため、むしろ盛んかもしれません。
昭和女子大学教授・木村琢磨氏(撮影/尾関裕治)
――社内政治は、どのような場面で発生するもの?
木村 大きくふたつのパターンがあります。ひとつ目は、チームの利害が対立したとき。人やお金など限られた資源を、少しでも多く自分の部署に引っ張るために社内政治が行なわれます。
ふたつ目は、個人の出世がかかったとき。後ろ盾をつけたり、自分の成果を大きく見せるべく、味方を増やすために行なわれます。
――社内政治というといいイメージがないですけど、先生はどうとらえている?
木村 言うべきことを言わず、おべっかばかり言うなど、良くない印象もあるでしょうね。ただ、例えばプロジェクトにおいて上司が大きなミスをしたとします。ひとつのミスで出世コースから外れてしまう人もいるので、部下としてよけいなことは言わずに沈黙する。
これも、上司とチームの利害を考えた忖度であり、「相手のメンツを潰さずに守った人だ」と周囲に印象づけて自分の株を上げる社内政治のひとつです。自分の意見を控えることは、必ずしも悪いことだとは限りません。
――では、社内政治がうまい人ってどんな人?
木村 次の3つを満たす人は信頼されるので、うまく行なえます。ひとつ目は頼んだことに対して有能な働きができる人。大前提として、本当に仕事ができる人じゃないと政治をしても意味がありません。
その上で、ふたつ目は善人であること。私利私欲ではなく、はた目から見ても会社のために動いていることがわかる人です。
そして3つ目は、上司や同僚から味方だと信頼されている人。ふたつ目と似ているようですが、善人であっても味方をしてくれない人はいまいち信用されません。基本的には味方でいてくれて、反対の立場に回るときもひと声かけてくれるような人が、上司や同僚から支持されるでしょう。
――どうすれば味方であることを相手に示せる?
木村 仕事において共通の目標を持っているということを、うまく伝えられるといいですね。例えば「営業で商品を売る」というプロセスは同じでも、その商品を売ってどうしたいのかは人によって異なります。
会社が儲かればいいという人もいれば、お客さんにいい思いをしてほしい人もいる。そういった相手の思いに同意してあげるとよいでしょう。自分の腹の底にまったくない考えに無理して合わせる必要はありませんが、フラットに会話をする中で共感できる点を見つけ、相手の意見に自分の意見を擦り合わせていく。
そうすると自然に共通の目標ができて、信頼関係が生まれていきます。これも広い意味でのゴマすりといえるかもしれません。
【社内政治の具体的なお悩みを解決!】――ここからは読者から集まった、社内政治にまつわる相談にアドバイスをいただきます。最初は「それなりに良い企画を出しているのに、同期より通らない。不器用なので根回しの仕方がわからない」という相談です。
木村 まず、本当に根回し不足が原因かを考えたほうがいいです。アイデアは良くても、会社が求めているものからズレていたら企画は通りませんからね。
その上で、企画が誰かを脅かしている可能性を考えましょう。企画が通ることでなくなるものや減るものがあるなら、恩恵を受けている人にとっては脅威です。
だから、脅かされる立場の人にこそ、安心させる根回しが必要です。人脈がないなら、まずは近くの味方とくっつくべし。賛成してくれる人を起点に広げるのがいいでしょう。
仕事を円滑に進めるために、根回しは必須。なお、海外へnemawashiという語がそのまま輸出されている
――「保守的な上層部にAI導入をプレゼンしたい。注意点は?」
木村 まずは保守的な人を「頭が固い」とラベリングしないこと。反対には必ず理由があるし、何かを恐れているはずです。AI導入の何が心配なのかを、まず本人から聞く。
聞く姿勢を見せることで、「ちゃんと考えている人だ」という印象にもなる。若い人は一発で決めるプレゼンをしたがりますが、反対意見を聞いて対策を考える根回しにこそ意味があります。
――「部署を超えた懇親会を企画していますが、人脈不足で人が集まりません」
木村 そもそも「親交を深めましょう」と集めても、仲良くなりづらい。
やるなら、小さくても共通の目的をひとつつくることです。例えば残業時間削減でもいい。他部署が喜びそうなテーマを置いて、一緒に動くことで自然に関係ができます。
――「コミュニケーションが不得意で、飲み会も苦手です。出世に不利でしょうか?」
木村 嫌われていなければ大丈夫ですし、飲み会も無理に行く必要はありません。また、もし参加するなら、端の席で静かに上司の話を聞いておけばOK。その人が何を好きで何を嫌い、何に自信を持ち、何におびえているのかを話の中から知っておくことが、後々につながってきます。
特に、嫌いなものが共通している相手とは気が合うもの。もし上司と嫌いなものが同じなら、積極的に共感を示し、どんどん話を聞きにいきましょう。いいコミュニケーションとは、話すより、まずは聞くことが大事です。
飲み会で爪痕を残そうとする必要はない。
●木村琢磨(きむら・たくま)
昭和女子大学教授。博士(経済学、東京大学)。専門は経営学。スタートアップでの勤務や組織・人事コンサルティング実務を経て、2025年から現職。著書に『社内政治の科学 経営学の研究成果』(日経BP)がある
『社内政治の科学 経営学の研究成果』(日経BP)
取材/渡辺ありさ(かくしごと) 文/黄 孟志(かくしごと) 写真/iStock PIXTA
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