東京電力の家庭向け電気料金の値上げにおいて、電気料金を算定する際の「原価」の見直しが迫られたが、その見直しの柱の一つが「人件費」だ。
 では、実際に東京電力の平均年収はどのくらいなのだろうか。


 2011年3月期の有価証券報告書によれば、東電社員の年収は約761万円(残業代など基準外賃金と賞与を含む)と記載されている。実は東京電力は全国10電力会社の中では最下位となっている。で、1位の東北電力(837万円)、2位の中部電力(834万円)と大きな差がある。
 東京電力は国内の電力会社の中ではダントツの存在であり、売上高は二番手の関西電力のほぼ2倍だった。どうして、電力業界の中で東電の年収が低いのだろうか? 様々なケースの理不尽な給料格差を指摘する『理不尽な給料』(山口俊一/著、ぱる出版/刊)によれば、明らかなカラクリがあるという。

 実はこの761万円という数字には、『監督若しくは管理の地位にある者は含まない』という注釈がついている。つまり、管理職を除いた平均額ということなのだ。2011年3月期からは、管理職を含めた場合には約809万円になるという旨の表現が加えられているが、それまでは公表されてこなかった。
 山口氏は、かつての銀行を例にあげながら、管理職を除いた平均年収を公表することで少しでも見かけの賃金を抑え、世間から高給批判を受けないようにしてきた狙いがあると指摘する。しかし、809万円という数字でも、東北電力や中部電力に劣る数字。まだまだ裏があるのでは、と勘ぐってしまいたくもなる。

 業種別平均年収が高い「電力・ガス会社」や、個別企業の年収が高い「テレビ局」は、自由競争とは対極にあり、地域や電波を寡占状態にして、確実に利益が上がる状態を維持してきた。
そのため、常に国際競争にさらされてきた製造業などに比べても、企業の実力以上の賃金水準を維持することが可能であった。
 しかし、3・11の原発事故の影響により電力会社はこれまでの規制された超安定企業であり続けることは困難になった。これから先、どのように業界が再編されていくのか。「給料」という視点から企業を捉えていくと、新たな側面が見えてくるだろう。
(新刊JP編集部)
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