ひと昔前にはあった「グラビア撮影と聞いて行ったら、オトナのビデオの現場だった」といった女性を騙すようなことは一切なく、現在は事前に香盤(1日のタイムスケジュール)や台本をもらえるくらいにクリーン化した。
ただ、やはりこの仕事は形のない商売。全て台本通りに“なぞる”わけがなく、身体的負担はないものの「コレをやってみてくれない?」というムチャぶりは結構多い。
アドリブが効く女優など、いわゆる「仕事ができる演者」はイレギュラーをこなしまくり、台本通りの100点満点ではなく120点、150点、それ以上を求められるのだ。
もっともキツかった“ムチャぶり体験談”
業界がクリーンになったとは言っても、全てが女優ファーストとは限らない。冒頭で「事前に台本をもらえる」と説明したが、筆者が現役のときは、事前にもらった台本はかなり簡易的で、当日現場入りしたら中身がボリュームアップしていた……なんてこともあった。現役時代に一番恐ろしかったムチャぶりは、台本があるのに“私だけ”オールアドリブを求められたことだ。解説役のようなポジションを事前に言い渡されていたのだが、当日台本を読んでも私のパートがほとんど見当たらない。不安を抱えながらヘアメイクをしてもらっていると、監督が近づいてきて衝撃の一言を放った。
「あなたのパートはほとんどアドリブでいいからね。頼んだよ、ヨロシク!」
はたから聞くと、とても信頼されているように思えるものの、出演者も多かったことから「私のぶんのセリフを書くのが面倒だったんじゃないか?」という疑念に駆られる。
「アドリブ“で”いいからね」の“で”に込められた“丸投げ感”はなかなかスゴく、おまけに解説役ポジションなので終日拘束。他の女優よりもパートが多いのにオールアドリブ要求など、プレッシャーが半端ないのである。
他のパートと被るような発言はまずNGで、ダメと判断されたらもう現場に呼ばれない……と思うと心臓がバクバクしてしまう。なんとか仕事を終え、ありがたいことに次回も呼ばれたのだが、2回目以降も似たようなムチャぶりをされたのは言うまでもない。
“些細なシーンも徹底撮影”で起きる「リアルなムチャぶり現場」
セクシービデオは、ユーザーにとっての“メインパート”以外は早送りされがちなものの、作り込みのための些細なシーンも徹底的に撮る。公園や海でキャッキャとはしゃぐイメージシーンから、OL役のオフィスで働くシーンまで。そこそこの尺がある作品なら、絶対にこれらをカットすることはないのだ。とある現場では某女優が先輩AD役を務めており、後輩ADに現場のアレやコレを教えるパートがあった。少しでも真実味を出すべく、実際にいるADのような立ち振る舞いをお願いした監督は、彼女にちょっとしたムチャぶりをする。
「ADさんって現場セットのコードをスルッと束ねるんだけどさ、それやってくれないかな?」
実はコレ、ただ束ねるだけではなく、かなりのスピーディー&正確さが求められる作業だ。ある意味専門的とも言えるスキルで、初挑戦ではほぼ100%失敗するであろう。
ムチャぶりを喰らった女優さんは「えぇ、やるんですか?」と焦り気味。カメラを回す前に2、3回練習したものの、案の定今すぐの習得は難しく、結局そのシーンは内容が差し替えられた。
「やっぱ難しいよね」と楽観的な様子で言った監督に対し、近くにいた私は「そりゃあそうだろ!」とツッコみたくなってしまった。
台本を20分で覚えないといけない“ムチャぶり地獄”も
他にも簡易的な撮影だと、当日キッチリした台本を渡されることもあれば、急な変更で「今から覚えて!」と言われて、20分後にカメラを回すなども“あるある”だ。
どれも後に笑い話になるようなムチャぶりだが、臨機応変さが求められるのは事実。お願いをされてフリーズしてしまうような人はまず務まらないため、頭の回転が良いほどこの仕事は有利と断言しても良いくらいだ。
改めて考えると、セクシー女優とはつくづく大変な商売である。ただニコニコ笑って可愛いだけではなく、常に頭をフル回転させる必要があるため、美しいルックスと頭の良さを兼ね備えていなければ到底務まらない仕事なのだ。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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