厳格な家で育った“お嬢様”の幼少期
――刺青が非常に強いインパクトを残しますが、一方で蓮さんは堅実なご家庭で育ったとか。蓮ひさぎ:そうですね、実家は三重県にあるのですが、普通よりは厳格な家で育ったと思います。幼い頃から、お茶、お花、乗馬などをやらせてもらって、ちょっとしたお嬢様気分で育ったかもしれません。田舎なので家が大きいんです。そんなわけで、毎年家で開催する誕生日会には、クラスの半数の子が集まってお祝いしてくれるのが常でした。
18歳で蓮の刺青を入れたワケ
蓮ひさぎ:18歳のときです。デザイナーをしている友人がいて、その子に協力したいと思って自分に彫ることにしたんです。蓮をモチーフにしたデザインを入れました。蓮を入れたのは、自分が仏教徒であることを示すためです。それと、敬愛する平沢進さんの『Lotus』(=蓮)にちなんでもいます。私はスプリットタンもしていますが、すべて基準は「可愛いかどうか」なんです。
――厳格なご家庭だと、刺青はご法度ではないですか。
蓮ひさぎ:最初はめちゃくちゃ怒られました。私は高校生になるまで本当に絵に描いたようなお嬢様で、友だちと遊ぶよりも書籍を読むようなタイプでした。家は髪を染めるのも禁止、ピアスをするのも禁止だったくらいですから。ただ、高校生になると、平沢進に目覚めてしまって。彼のライブに行くために、イメージカラーであった赤色に髪を染めました。また、彼の真似をして両耳にピアスをしたんです。当初はイヤリングでしたが、頭痛がするのでピアスは許されました。はじめのうちはライブに行くときだけの染髪も徐々にうやむやになって……という感じでしょうか。
――どのあたりでご家族は蓮さんのファッションについて諦めたのでしょうね。
蓮ひさぎ:ただ、現在でも結構刺青については怒られますよ。「一緒に温泉に行けないじゃないの」とかそんな理由ですが。
ASD、ADHDと向き合い、芸術を心の支えに
蓮ひさぎ:ものすごい独特な絵を描いていたようですね。また普通の人には見えないようなものが見えると行ったり、公園で遊んでる時にポケットからハムスターを出したり、といった奇行もあったとか。反面、動物から懐かれやすくて、登下校時に迷い犬を保護したり野良猫と学校に行ったりもしていました。わりと、分け隔てなく接するタイプだったと思います。
――成長してくれると、さまざまなことに悩んだ時期もあるようですね。
蓮ひさぎ:ASD、ADHDの診断を受けており、障害者手帳2級のため、日常に制限がつくのがつらいですね。救われたのは、やはり平沢進さんの生き方、歌詞、つむぎ出す言葉のすべてです。
整形と豊胸に投じた総額は…
――ところで、人体改造にはお金がかかりませんか。蓮ひさぎ:刺青に関していえば20万円だけで、自分の稼ぎでカバーできました。長年、母から“貧乳いじり”をされていたので、それに怒った祖母が100万円を出してくれて、豊胸手術をすることができました。あとは整形には200万くらい費やしました。弟もそうなんですが、歯科矯正も整形も、親に出してもらってしてましたね。私立大学の費用も、親持ちでした。
――実家が太いですね。
蓮ひさぎ:祖母が地主なのと、株取引に長けた人なので、ありがたいことに経済的に困窮したことはないかもしれません。
暴力の連鎖が止まる世界を夢見て
――蓮さんは非常に繊細で、直接的にご自身にかかわることではない事件でも、心を病んでしまうことがあるとか。蓮ひさぎ:そうですね、中学2年生のときに起きた相模原障害者施設殺傷事件は非常に心を痛めました。知的障害者福祉施設である津久井やまゆり園で、元職員が19人を刺殺した事件です。事件そのものにも憤りを覚えましたが、ネットのコメントで少なからず加害者に与するコメントもあり、本当につらい気持ちになりました。
――どのような社会を望みますか。
蓮ひさぎ:どんなに生きづらさを抱えている人であっても、きちんと認めて自由に生きていける社会になればいいと思っています。個人がそのまま尊重される社会であることを期待します。今、世界で人権を無視した暴力が横行していることに対しても、強く抗議したい気持ちがあります。
――蓮さんのようなインフルエンサーが戦争反対を叫ぶことは重要ですね。
蓮ひさぎ:もちろん私はまだまだ知識不足であり、大仰なことを言うべきではないのかもしれません。けれども、私もこの世界に生きるひとりだからこそ、暴力に反対であると声をあげることは無意味ではないのかなと。昔、水木しげるさんの戦争体験を読んだりして、その過酷な事実に驚き胸を痛めました。その日以来、同じ地獄が再現されないことを心から願っていました。感受性が剥き出しの状態で生きているので、誰かが傷ついた、死んだ、というニュースも心理的に負担になります。そうした悪いニュースが少ない世の中であってほしいです。
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派手さや奇抜さを蓮さんの本質と決めつけるのは、踏み込みが浅い。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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