広島のドラフト3位・岡本駿投手(23)は前半戦、12球団のルーキーで最多の26試合に登板した。育成を含む球団の大卒5人で唯一の開幕1軍入りし、1勝1敗1ホールド、防御率2・96。

甲南大初のNPB選手となった“投手歴4年”の右腕が「下克上」と言える奮闘ぶりだ。今月9日に出場選手登録を抹消され、2軍再調整となった現状、さらに今後の成長のカギに迫った。

 岡本は、若ゴイが汗を流す灼熱(しゃくねつ)の2軍本拠地・由宇にいた。抹消から1週間後の16日、ウエスタン・中日戦の2番手で6回に登板し、10球で3人を料理。再出発の一歩を踏み出した。

 10球の中で見慣れないボールが2球あった。1軍でほとんど投げたことのないスライダーだ。2死からロドリゲスに対して投じた2球とも外角に外れたが、最後は2球目の後の内角直球で見逃し三振に仕留めた。打者の目線を変える有効な球として生きた形だ。

 岡本の投球について、菊地原投手コーチは「右打者の外に対して、どうしても真っすぐ、カットが増えていた」と偏りがあった部分を指摘する。スライダーは持ち球の一つではあったが、精度の問題があった。映像を確認した菊地原投手コーチは「あれは、ちょっと面白い球。

幅が広がると思う」と伸びしろに期待した。

 投手に本格転向したのは、甲南大1年春から。新井監督が「変化が分かりづらい」と一番の魅力に挙げるのは、縦の変化が特徴のツーシーム。わずか1年前、大学4年春に覚えたばかりの球種だ。プロ入り後、直球の自己最速は2キロ更新した。当初から球団、首脳陣が“素材型”として考えていた投球経験の浅さも、今の岡本の何よりの魅力だ。

 一定の成績を残していた中での抹消は、蓄積疲労による若干の投球の精度の低下もあったという。「実際それでも抑えたりするけど、1軍ではどうしても『試合』になる。2軍だとウエートやランニング、ピッチングも多くできる。一回り大きくなって戻ってきてもらいたい」と菊地原コーチ。1軍で経験を積むことも大事。その力もあるが、今の2軍での経験も大きく前に進むための必要な一歩となる。

(畑中 祐司)

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