◆JERA セ・リーグ 巨人6x―5阪神(21日・東京ドーム)
ほえる、右拳を突き上げる、手をたたく、そしてまたほえる。巨人・リチャード内野手(26)はダイヤモンドを回りながら感情を爆発させた。
ハイライトは7回だった。0―5から2点を返し、1死一、三塁。ネルソンの低め変化球を左翼席へ放り込んだ。5月18日の中日戦以来、約2か月ぶりとなる一発。「危機感というか、三振か本塁打でいいと思ったけど、長いままだったら先とかに当たって併殺が怖いなと」とバットを短く持っていたが、持ち前のパワーで押し込んだ。得点を渇望するかのようにG党がイニングの先頭からチャンステーマを鳴らした中で、5得点の猛攻を呼び込んだ。
5月に加入し、6月13日に登録抹消されたが、8日に再昇格。阿部監督はその際に「一発が宝くじくらいの確率であるから」と話していた。そしてこの日「冗談で宝くじが当たったらって言ったけど、ああやって当たったら本塁打にできる力を持っているので今日は起用してみた」と再昇格後初で、6月12日のソフトバンク戦以来のスタメン起用。
準備の一発でもあった。ベンチスタートが続いていたが、投手の球速や変化量などを再現できる映像付きの打撃練習用マシン「トラジェクトアーク」を使用し「とにかく全部当てるとか、ボール球を見逃せるように。軌道とかイメージしたり」とバットを振ってきた。ネルソンはカード初戦の日に“対戦”。「体が覚えてたのかな」とうなずく。それでも「でも分からないんで、とにかくまた練習します」と謙虚さものぞかせるのがリチャードらしい。
5点差以上の逆転は阪神戦では35年ぶりだった。吉川のサヨナラ打の際に自身も仲間から水を浴び、大仕事が認められた。「水をかけられたの初めてです。寒い」。その表情には、充実感が漂っていた。
◆リチャードに聞く
―2点を返して3点差。どんな思いで打席に。
「(ビハインド時も)空気だけは悪くしちゃいけないってさすがに僕でも分かるのでずっと明るくやっていて、3点差(0―3)のときから『3点やったらいける』って言ってたんで。言ってる分、自分がやらないといけない。責任感を持って打席にいきました」
―本塁打を放ってベンチに戻って来てからは。
「甲斐さんがたぶん見てるやろうなあと思ったんで、すぐ調子乗らないように切り替えました」
―本塁打の直前には自打球もあった。
「当たった瞬間は『あ、折れた』と思ったんですけど、サーっと痛みがなくなって。アドレナリンですね。もう全然痛くないです」
―前回降格した際はサインミスも原因だった。心がけてきたことは。
「今日も打席でサインが出るんじゃないかって、(投手に入り込みすぎず)一回切り離してサインを見てっていう作業も良かったのかな。今まではぼやっと見ていた。