◆JERA セ・リーグ 広島1―5巨人(26日・マツダスタジアム)

 一振りで大きな追加点をもぎ取った。坂本のバットがチームに勇気を与えた。

7回、リチャードの適時二塁打で勝ち越し、なお2死二塁、9番・石川の代打で登場。1ボールから低めの変化球を捉えると白球は左中間を破った。「一振りで仕留めることができた。追加点を取ることができて良かったです」。1点差と2点差では大違い。貴重な適時二塁打に、盛り上がる三塁ベンチに向けて塁上で笑顔でガッツポーズした。

 この日の広島は最高気温34度。試合前練習では炎天下の中、短パンで大粒の汗を流しながらフリー打撃を行った。酷暑でも集中力を高めて左中間を中心にライナー性の打球を連発。好調のリチャードが三塁スタメンで、自身は4試合連続ベンチスタートとなる中、どんな投手にも対応できるよう左足の上げ方を細かく変えながら打ち、勝負どころでの1打席に備えていた。「代打でね、ああいうところで結果が出たのが良かったですね」。クイック気味に投げる中崎をすり足打法で攻略して仕事を果たした。

 指揮官の熱い言葉にも応えた。後半戦初戦。試合前ミーティングで阿部監督が選手の前で訓示した。「タイガースが独走しているけど、何とか一泡ふかすために一戦一戦頑張っていこう」。08年、プロ2年目の坂本は、当時の阿部捕手とともに、最大13差を逆転してリーグ優勝した「メークレジェンド」を経験している。10差で追う首位・阪神に食らいつく。その思いをバットに込めた。

 前半戦はチームの得点圏打率が2割2分1厘。好機であと一本が出ない得点力不足に苦しんだ。仕切り直しのこの日、坂本の適時二塁打も含め巨人打線は得点圏で11打数5安打(4割5分5厘)。気持ち新たに打線がつながった。

 今季の打率2割6厘は思うような数字ではないが、残り53試合、ここからの逆襲に期待がかかる。

「こういう試合を一試合一試合やるだけだと思うんで。頑張ります」。増田陸、リチャード、泉口ら躍動する若手に惜しみなく助言も送る坂本の存在は巻き返しに欠かせない。敵地・マツダでベテランの勝負強さが光った。(片岡 優帆)

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