◆第107回全国高校野球選手権千葉大会 ▽決勝 市船橋8X―7八千代松陰=延長10回タイブレーク=(27日・ZOZOマリン)

 打った瞬間、勝利を確信し叫んだ。10回、4点差を追いつき、なお2死満塁。

市船橋・川崎耕司(3年)が放った鋭い打球が中前へ抜けた。サヨナラだ。6回途中から3番手として登板したエースは「これまで助けられてきたので、今回は自分が助けるという気持ちだった」と声を弾ませた。

 粘った。八千代松陰に2度リードを許すも、5回、7回に追いついてタイブレークの延長へ。10回に4点を失ったが、誰も諦めなかった。相手投手の乱れにつけ込み、花嶋大和捕手(3年)の2点二塁打などで猛反撃。川崎のサヨナラ打で決勝のホームを踏んだ花嶋は、歓喜を爆発させた。

 扇の要の左頬は、血がにじんでいた。6回2死二、三塁。顔面に死球を受け担架で搬送された。約15分の治療を受けた後、「行かせてください」と海上(うながみ)雄大監督(43)に直訴。

血のにじむガーゼ姿で再びマスクをかぶった。10回の守備では、失点し動揺する川崎に対し「何点取られてもおまえがエースだから」と鼓舞。試合後、救急車で球場を後にした相棒を、エースは「あそこで打ってくれるのが花嶋。ここから先も頼もしいキャッチャーで」とたたえた。

 同校OBの海上監督には、大逆転の“メンタル”があった。1年だった1997年夏の甲子園では文徳(熊本)との1回戦で、8点差をひっくり返し17―10で勝利。スタンドで見守った指揮官は「逆転するチームとは、やるべきことを積み重ねられるチーム」とうなずいた。自身が指揮を執ってからも、23年夏の千葉大会4回戦で流通経大柏に0―9から大逆転したこともある。“逆転の市船”が3年ぶりの聖地へ乗り込む。(古澤 慎也)

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