◆第107回全国高校野球選手権愛知大会▽決勝 豊橋中央6―5東邦(27日・岡崎市民)
延長11回、149球目のインコース真っすぐで最後の打者を右飛に打ち取ると豊橋中央のエース・高橋大喜地(だいきち・3年)はマウンド上で大きくガッツポーズした。「もうちょいやりたかったけど…終われた」と頂点の味をかみしめた。
春夏通して初の甲子園切符。全国最多173チーム参加の愛知大会をノーシードから制した。東邦は春2回戦で負けた相手。それでも右腕は「春のことより甲子園」とぶれなかった。
ピンチになると鬼の形相をみせる右腕だが、普段は陽気な性格が特徴的な選手。ピンチになるとアゴを下に引かせて、大好きなアントニオ猪木さんのモノマネで一度心を落ち着かせるという。「ちょうど春の東邦戦で二塁ランナーを牽制(けんせい)する時にひらめいた」と話すと、この日はベンチに赤いタオルも持参して、猪木魂全開で打者を打ち取っていった。
2点を先行した9回1死満塁では、味方の失策により同点になるも「(次の攻撃で)みんな打ってくれるだろう」と仲間を信じた。すると11回、無死満塁から女房役の松井蓮太朗(3年)が決勝の2点適時打。中学時代は同じ愛知豊橋ボーイズで共に過ごした盟友の一打に「春の大会満塁で打ってなかったから、さすがに打てよ(笑)」と冗談を交えて相方の一打をたたえた。
名前の由来は、高橋が生まれた時にこの世を去った祖父・喜三郎さんから。当初は大喜(だいき)だったが、地に足をつける願いもこめて大喜地と命名された。
この日は中学時代のチームメイト横浜・阿部葉太(3年)も甲子園出場を決めた。夏の大会期間中も連絡を取っていると明かした右腕は「(甲子園は)初戦で当たって倒したい」と言葉に力を込めた。
愛知を制し、ひとつ目のチャンピオンベルトを手にした高橋。初めての甲子園の目標は「(チャンピオンベルトを)もう1個取ってくること」と高らかに宣言した。(綾部 健真)