各担当記者が推す選手を紹介する「推しえて」第10回は、ロッテ・高野脩汰投手(26)。力強く、独特な投球フォームから繰り出す直球、落差の大きなフォークに磨きをかけて臨んだ3年目は救援として登板数、投球回、勝ち星などでキャリアハイを更新している。

同じ左腕で、故郷・島根の先輩でもある前ソフトバンク・和田毅氏(44)からの教えなど、飛躍の要因を明かした。(取材・構成=阿見 俊輔)

 試合の終盤にかけて、本拠のZOZOマリンで高野の救援登板がアナウンスされると、歓声が沸き起こる。入団3年目の左腕はチームに欠かせないロングリリーフ要員として活躍し、主要な項目ですでに自己記録を塗り替えている。

 「今年は自分が投げる球への手応えも一番いいです。基本的には複数回を投げることが多いのですが、登板前から『複数イニングいくよ』と言われたことは一度もなくて。だから複数回を投げると考えずに、一人ひとりを抑えるという感じでやっています」

 右足を高く上げて真上から投げ下ろすと、左足が空に向かってはね上がる豪快な投球フォーム。リリースの後、胸を倒すことから“チェス”というニックネームにもつながった。出雲商1年の時、テレビ観戦した夏の甲子園で他校の投手を見て「この投げ方、格好いいな」とまねを始めてから改良を重ねて、完成度を高めてきた。

 捕手の構えるミットから目を切る“あっち向いてホイ投法”でもあるが「とにかく思い切って腕を振らないといけない、と投げているうちに、おのずとミットが見えなくなっていった感じです。打球への反応はちょっと他の人よりも劣りますが…」と、理想を追い求めるためには仕方がないと割り切っている。

 豪快な投法は魅力的でファンを引きつけるが、体を目いっぱい使って投げるため、わずかな狂いが投球に影響を及ぼす。入団1年目の23年は7登板も、昨季はシーズンを通してフォームのバランスが悪く、6登板にとどまった。

危機感を覚えた昨年12月、ドジャース・大谷らが利用する世界最先端の科学トレーニングラボ「ドライブライン」のスタッフが来日した際に、投球フォームなどの分析を依頼。指摘された力のロスなどを修正した結果、昨季140キロ台中盤だった直球の球速が、今季は150キロ台に迫ることが多くなり、自信を持って打者に勝負を挑めるようになった。

 成長を手助けしてくれたのが同郷・島根の先輩で前ソフトバンクの和田毅氏だ。2度目の参加となった今年の自主トレの“和田塾”では、日米通算165勝を挙げて43歳で現役を引退したレジェンド左腕から貴重なアドバイスをもらった。

 「腹圧を高めて投げるのが一番大事と思ったポイントです。和田さんから『投球する際に右足を上げて、捕手の方に並進する時にブレがちなところがある。それをなくすために、腹圧を高めよう』と言われました。それからは練習でも意識しています。一緒に食事した時には、ピンチでの心の持ち方なども尋ねました。和田さんのような飛び抜けた投手であっても、不安に思うこともあると知って、自分と近い、ちょっと弱い部分もあるというのが分かって、それもまた勉強になりました」

 入団以来、しっかりと成長曲線を描いているプロ生活。ドジャース・山本、西武・今井、阪神・村上ら同世代の好投手からも刺激を受ける中で、今後の青写真とは。

 「先発をしたいという強いこだわりはないです。

1軍での登板数を一番に考えています。もちろん先発はプロに入るまで長くやってきたので、自分の中でやりやすいみたいな部分もありますが、ロングリリーフも魅力がある。これからも、自分の良さを最も出せるところで、監督に使っていただきたいという思いです。どんな立場でも1軍で、この世界でやっていけるように頑張ります」

 ◆高野 脩汰(たかの・しゅうた)1998年8月13日、島根県生まれ。26歳。出雲商では甲子園出場はなし。関大では関西学生野球リーグを代表する投手として活躍し、3年時には明治神宮大会で47年ぶりの決勝進出に貢献。日本通運から2022年ドラフト4位でロッテに入団。184センチ、88キロ。左投左打。今季推定年俸1250万円。

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