オリックス・東松快征投手(20)が27日のソフトバンク戦(みずほペイペイ)でプロ初先発することが26日、決まった。高卒1年目だった昨年はウエスタンの7試合で3敗、防御率15・43。

悔しさを糧にした今季はリリーフとして初の開幕1軍入りし、19日のロッテ戦(ZOZO)でデビューも果たした。曽谷龍平投手(24)のコンディション不良で回ってきたビッグチャンス。今季初の4連敗となったチームを救い、同じ高卒2年目で13勝を挙げたエース・宮城大弥投手(23)のような出世街道を歩めるか―。

 オリックス・東松は懸命に笑顔をつくってみせた。「やばいです。本当にやばいです。本心は緊張100なんですけど…。楽しみ100、緊張0の感覚でいきたいと思います」。27日のソフトバンク戦で先発予定だった曽谷が、コンディション不良で登板を回避。この日の練習前に急きょ、大役に指名された。

 高卒ルーキーだった昨年はウエスタンで防御率15・43の成績。プロの壁は分厚かった。

2月の宮崎キャンプは1軍相当のA組。新たに就任した岸田監督から、最年少で抜てきされた。先輩左腕の宮城や曽谷らと汗を流し、学びがあった。「上で活躍する選手は、出力を抑えながらコースを狙って投げている」。将来の夢は先発完投ができる投手になること。自らの投球と比較し、課題を見つけた。

 意識するようになったのは「脱力」だった。大阪・舞洲のブルペン。思わず力任せに投げてしまうと、杉本ブルペン捕手から「宮城を見ろ。勢いだけで投げてないやろ? それでは1軍に行けないぞ!」との厳しく、温かい声が飛んだ。

 これまでの考え方はいかに力を入れ、スピードボールで空振りを取るか。最速152キロの直球を軸に「全部真ん中に投げて、全部三振を取ってやろう」と個人競技のような投球に走っていたという。

「ちょっと厳しいところに投げるだけで、打者は詰まってくれる」。アウトを取るため、1軍で勝つために「8割の力でコースを突く投球」の習得を心に決めた。

 開幕1軍入りを果たしたが、出番なく4月5日に登録抹消。5月9日のくふうハヤテ戦(静岡)では、一塁ベースカバー時に左足を負傷した。「とにかく1軍で野球がしたい」と完治させ、7月19日に再登録。同日のロッテ戦(ZOZO)でデビューし、リリーフで2回を2失点だった。

 同じサウスポーで憧れの宮城先輩からはある日、ネックレスが贈られた。ドジャース・山本や先輩の山下らも愛用する高級ブランド。「やばい、めちゃくちゃ高いらしくて、お返しできない…」。恐縮しながらも「今欲しいのは三振ではなく、1軍での1勝です」と決意を新たにした。

 この日はブルペンで17球の前日調整。「死にものぐるいで1アウトずつ積み重ねていきたい」と言葉に力を込めた。

チームは大敗で今季初の4連敗を喫したが、岸田監督も「行けるところまで行ってもらいますよ。思い切って勝負してくれるところを見たい。楽しみです」と20歳らしい投球に期待。ビッグホープの挑戦は始まったばかりだ。(南部 俊太)

 ◆東松 快征(とうまつ・かいせい)2005年4月29日、愛知・東海市生まれ。20歳。加木屋小1年時に加木屋クラブで野球を始め、加木屋中では東海中央ボーイズでプレー。享栄(愛知)では1年秋にベンチに入り、2年夏から背番号1。最速152キロの直球を武器に「愛知の江夏」と称されるも、甲子園出場はなし。23年ドラフト3位でオリックスに入団。特技はウェートトレーニング。将来の目標は「サイ・ヤング賞」。

179センチ、86キロ。左投左打。推定年俸600万円。

 〇…曽谷は試合前の練習に参加し、キャッチボールなどで調整した。27日のソフトバンク戦はコンディション不良で回避するが、現時点で軽症のもよう。出場選手登録は抹消されず、8月1日からの日本ハム3連戦(京セラD)での先発を目指す予定だ。プロ3年目の今季はチーム最多の8勝(4敗)を記録し、先発の柱に成長。「次の登板に向けて、しっかりと練習していきたいと思います」と前を向いた。

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