◆第107回全国高校野球選手権静岡大会▽準決勝 聖隷クリストファー4―0藤枝明誠(26日、草薙球場)
全国高校野球選手権静岡大会の準決勝が行われ、静岡はエース左腕・吉田遥孔(はるく、3年)が決勝二塁打&3安打完封。東海大静岡翔洋に1―0と競り勝ち、4年ぶりに決勝へ進んだ。
聖隷クリストファーの上田に満足感はなかった。藤枝明誠を3安打に抑え、三塁も踏ませず5回無失点。それでも「正直、悔しい気持ちがあります。高部が登板しなくて済むように、投げ切るつもりでした」と唇をかんだ。6回から登板した高部は6者連続三振を含む4回パーフェクトで締めた。快勝の流れをつくったのは、間違いなく上田の粘投だった。
上村敏正監督(68)は「ダメだから代えられたと(上田は)思っているが、ベンチで『そんなことはない。お前は調子が良かった』と声をかけた」と明かした。さらに「決勝では(高部の)前後を任せたいと思えるほど、きょうのゲームで信頼を得られたんじゃないか」と絶賛した。
上田の帽子のツバ裏には、自戒の意味を込め「一生カス」という文字が記されている。昨秋に続き今春も、主戦投手は高部だけだと見られていたが、春の県決勝(対桐陽、3〇0)で公式戦初完封をマークして頭角を現した。ただその後、高部と同じように結果を残さなければ―という責任感が増したことで調子を崩した。だからツバ裏の文字を「氣持ち」から「一生カス」に変え「満足してはいけない」という思いを込めた。
決勝で掛川西に敗れ準優勝に終わった昨夏は、3回戦(対焼津水産、15〇5)で先発を任されるも2回4失点でKO。精神面の弱さから制球を乱し、登板はこの1試合だけだった。成長を遂げた1年間を振り返り「高部と違うからこそ、二枚看板と言われるようになった。高部が三振を取るなら、自分は打たせて取るタイプ」と言い切る。
21年秋の東海大会で準優勝しながら22年のセンバツ(東海地区2枠)で選考漏れした“悲劇”を乗り越え、春夏通じて初の甲子園が懸かる決勝。指揮官はナインに「苦しんでやるよりもいい顔、いい雰囲気でゲームをやりたい」と呼びかけた。上田も「どうしても先生を甲子園に連れて行きたいので、期待に応えたい」と誓った。周囲の期待を力に変え、大一番に臨む。
(伊藤 明日香)