日本人選手として初めて米国野球殿堂入り表彰式典に出席するマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(51)が26日(日本時間27日)、米ニューヨーク州クーパーズタウンの「クラーク・スポーツセンター」でメディア対応。27日(同28日)の式典を翌日に控えた心境を語った。
伝説となったイチロー氏が、初めての“夏の聖地”を満喫している。メジャー19年間の現役生活中に異例となる7度もクーパーズタウンを訪れていたが、季節はいつも秋。シーズンが終わった10月だった。今年1月に資格1年目で殿堂入りの発表に伴い、極寒の当地を訪れた。そして、今回…。人口2000人にも満たない小さな野球の街は色とりどりの花が咲き乱れ、山の緑が目に染む7月最終週を迎えている。
「必ずミュージアムの地下に行って昔の選手の道具を見せてもらっているんですが、(今回は)それを目的に来ていない。クーパーズタウンの雰囲気そのものを味わいたいという、そういう変化が明らかにあります。今回は何を感じるか、どう感じるのか、それを見たいなと思ってきました」とひと味違う通算9度目の当地訪問について語った。
なぜ、この地を足しげく訪れたのか。歴史をリスペクトすると同時に、もう1つの目的は心の浄化だったという。
「やっぱりシーズンを戦っているといろんな感情が生まれて、いい感情もありますけど、自分の心が濁っていくこともたくさんありました。それでクーパーズタウンを訪れると、それをすごくきれいにしてくれて、もう一度リセットして次のシーズンに向かえる。そんな気分でいつもいました。本来、野球選手が持っていなくちゃいけない感情を戻してくれる」
極度の重圧を背負った勝負の世界では、挫折や苦悩など負の感情と無縁ではいられない。人間関係もきれい事では済まされない。ささくれた心を癒やし、純粋な野球への愛を取り戻す場所、それがクーパーズタウンだった。
「本来持っていなければいけない感情は、野球に対する純粋な思い。うまくなりたいという。ヒットの数とか関係ないから。何だったら今でもうまくなりたいと思っている」
マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターという肩書を持つ今も、毎日走攻守の練習を行い、ユニホームを着て現役選手の指導に尽力している。
「ユニホームを着て同じフィールドに立つには、同じエネルギーを持っていないと、その資格はない。僕がそれをやめてしまったら、僕からそのエネルギーが出ないと思います。
「スピーチの準備、本当はしなきゃいけないんですけど、今日の朝も僕はフィールドに行って、ロングトスして走ってバット振って(会見に)来ましたから。まあ、そっちの方が大事なんでしょうね」。伝説となった今も、ルーチンは変わらない。